明さん攻略会議(3.5話)
このお話は3話の没話を番外編仕立てにしたものです。読んでいただかずとも、充分に本編でお楽しみいただけます。裏話としてお楽しみくださいませ。
#明さん攻略会議
日曜日、凛は午後うちに駆け込んで来て、俺のタンスを漁りいくつか服を引っ張り出すと(しかも下着まで選んでいった)、自分の家に俺を引きずり込んだ。
「何!?え、何!?」
「何って、作戦会議!雅の家じゃロクに道具もないし、持ち込むの面倒だからうちにこさせようと思って」
「いやいやいや、それならもうちょっとやり方ってもんが…」
「幸せ、欲しくないn「ほしい」よろしい。」
そんなこんなで、羞恥との戦い、開幕である。
まず凛の選んだ服に着替えさせられたのだがそこから既に羞恥心との戦いだった。普通の無地のカットソーに細身のジーンズ。そこまでは良かったのだが、なんと凛が紙袋から取り出したのは猫耳付きフードの黒いパーカーだった。
「待って!?無理無理無理無理絶対無理!羞恥心で爆死する!!」
逃亡を図る俺を後ろから羽交い締めにし、凛が必死の形相で叫ぶ。
「ずっとフードかぶってろとは言わない!頼むから一回聞いて!!?」
とりあえず向き合って正座し、このパーカーについての説明を受けた。
まず、どこで入手したのか。答えは古着屋だった。
『雅は女性用Mでもギリ着れるから、フリーサイズなら絶対可愛いと思って。』だそうだ。
次にどのタイミングでフードをかぶるか、だが。
『ふとした時に、「そうそう、明さん、これかわいくないですか?」といってふわっとかぶって、「にゃー♪なーんてっ」。これで絶対落ちるから』。
凛が試しにやって見せてくれたんだが、あまりのあざとさに吐き気を催した。
「こんなの凛じゃない…かわいすぎ…これを俺にやれと…?」
「もちろん。後で練習するからね!じゃ、それは汚れないようにたたんどいてね。次、髪!」
毛先のくせっ毛は生かして、ふわふわしてはいるがきちんとまとまった髪にセットしてくれた。
こればっかりは自分でも息を飲んでしまった。コンプレックスだった毛先ハネが生かされる髪型があるなんて。
「凛、ありがとう…!これ、すごい気に入った…!」
「ふふーん、楽しいよほんと。あとでやり方教えたげるから火曜は自分でやってね。簡単なのにしたから」
そういうと、そのまま目瞑って、といい、鏡の前を離れ後ろの棚をゴソゴソと漁り始めた。
そして背後に戻ってきて、首元にシュッとスプレーをかけられた。
「ひぅあっ!?」
「あ~やっぱ雅はこれだわ。匂い嗅いでごらん、ちょっとした香水みたいなもんだよ」
ふわ、と漂ってきたのは、ローズのような香り。控えめだが、魅力的な香りだ。
「これ、結構男子が好きな匂いなんだよ。無意識でも香るとその人に惹かれやすくなるんだって」
「へぇ…」
「これ、試供品だしあげるよ。うなじと手首にひと吹きしていってね」
「凛、ありがとう。火曜日、頑張ってくるよ」
「よし、そのいきだ!がんばれ~!おねえちゃんは応援してるぞ!」
りんちゃんとみやびくんは、こういう関係だったらかわいいな、って。