どちらが先に、思いを
#どちらが先に、思いを
大学まで徒歩2分、最寄り駅のロータリーで、時計を見上げながら明さんを待つ。
今日は火曜日、デート当日。
平日の昼過ぎということもあってか人は少なく、これならすぐ見つけられそうだ。
ワクワクしすぎて30分も早くついてしまったのはお察しの通りである。
日曜に凛にみっちり切り札を仕込まれたんだから、大丈夫、大丈夫。
「あ、明さんっ…!!」
改札をくぐってきた明さんを発見し、咄嗟に声をかける。
「…?…!あ、雅っ…!お待たせ、ごめんなー…待った?」
「いえ、早く着きすぎちゃったんで…!」
「そっか、ごめんな!…うん、かわいい」
「…へ?」
「うん、いやな。カフェの制服も可愛かったけど、私服、ほんと可愛い。髪も整えてある?似合ってるよ」
「あっ…え、あ…ありがとう、ございます」
「あ、照れた。はは、いいな、可愛い」
「だ、だって…!ほら、カラオケ行きましょ!明さんが行きたいって言ったんでしょ!」
「はいはい。手、つなぐ?」
「!?ま、まだこれ、お試しなんですよね!?」
「ははは、そういうと思った」
最初から、飛ばしすぎです明さん…。
心の中で、凛GJ、サンクス、と親指を立てる。
私服、褒めてもらえた…!
* *
結論から言おう。入室一分で惚れました。
俺のあたまはショートしてしまった、もうだめだ…
上に着ていたワイシャツを脱ぐ時のしぐさ、Vネックから見えた鎖骨。
歌もうまくて、『ロックオン』の歌詞にあわせて指で打ち抜くポーズをされた時に、俺の心も打ち抜かれてしまった。
でも、まだ。まだ告白するには早い、耐えろ。
ちょうど精神統一が終わった時に曲も終わり、わーと拍手しながら次曲を待つ。
次は自分の番。無難にバラード系にしておいたので地雷はない…はず。
* *
小一時間ほどたったところで、休憩兼トークタイムになった。
早速、凛からもらった切り札を使ってみることにする。うわ、緊張する…。
「あ、明さんっ!」
「なに、改まって?」
「実はこのパーカー、凛にもらったんですけど…猫耳、ついてるんですよ」
ひょい、とフードをかぶる。
「えー!ちょうかーわいいー!何それあざとい!!」
「えへへ…に、にゃー、なーん、て…はは」
「…っああああもう可愛いなあ!!!?何!?雅それ天然でやってんの?!可愛い!!」
わははははは、あー可愛い、と笑う明さんをみながら、息を吸って、一瞬止めて。
明さん、聞いてください。
「天然じゃないですよ。元はすっごい根暗なんです、おれ。
でも、でも明さんに、好いてもらえるように、恥ずかしいけど、やって、みたんですよ」
「…え、それ、って」
「明さん、好きです…!本気で、好きになっちゃいました…!
お、俺と、付き合ってください!」
言えた。言えたよ。
「…まさか、先越されるとは思ってなかったな。」
「へ」
「俺も好きだよ、雅。俺と付き合ってください。」
「…う」
「!?雅っ、ちょ、どうした!?な、泣かないでくれよ…」
「ご、ごべんなざい…、俺、も、う…うえぇ…」
感極まって、泣き崩れてしまった。
隣に座ってくれて、ふわふわと頭を撫でられる。
心地よくて、あったかくて。
そのまま寝てしまいたい気分だった。
あ…ほんとに寝そ…
「…雅」
「ふぁいっ!?」
びくっと意識を覚醒すると、目の前に真面目な顔の明さんがいた。
「ね、雅。キス、してもい?」
「…、!き、きす、って、そ、の…キスですよね」
「うん。いい?」
「…はい」
目を瞑ると、くす、と微笑む声が聞こえ、軽く唇が触れた。
とおもったら、いきなり深いキスをされ、心拍数が跳ね上がる。
「…、ん、ぅ、あ」
「っ、は…はは、ごめん、がっついちゃった」
たは、とてれ笑う明さんが、たまらなく愛しくて。
「ん、ごめん、嫌だった?」
「い、いえっ…!ぎ、ぎゃくです…」
「…そか。あー、えと…雅さ、俺らこれから付き合うわけじゃん。自分勝手、なんだけどさ。タメで話してくれねえかな」
「ため、で、いいの?」
「うん。名前もよビス手にしてくれて構わないから」
「わ、わかった、慣れるまで時間かかるかも、だけど」
ありがとう、と笑う明さんは、一瞬だけ泣きそうに見えた。
うん この二人展開早い。5話くらいで終わりそう。
はやい!もうくっついたよ!やったねたえちゃん!
決して、作者は焦ってません。二人が両方共盛んな時期なので盛ってるだけなんです。
では、次話もお楽しみに。