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一歩近づいた、連絡先

#一つ身近な、連絡先


俺は、あれから一週間と少し、バイトを休んだ。

マスターに電話を入れた時には、「きちんと気持ちを入れ替えて、また元気に出勤しておいで。」と何も聞かずに承諾してくれた。

大学へは一応行った。その時一度、資料庫で楓さんにばったりあった。何か言いかけていたようだが、逃げるようにその場を去った。

俺には、無理だから。絶対、また好きになってしまう。ひどい言葉を吐いてしまう。好きなのに、幸せになって欲しいのに。嫉妬深い自分が嫌いで、毎晩涙を流した。

やっと吹っ切れたのは昨晩のこと。某巨大掲示板にスレを立てて、スレ民に罵倒されながらも笑い話にした。

着いてしまった、このカフェに。今日は土曜日なので、凛もいるはずだ。開店時間には少し早いが、遅刻の時間だ。

大丈夫、大丈夫だと言い聞かせ、施錠されていないことを確認し正面の入口から入る。

「おはようございます」

「!雅くん、おはよう。来れたんだね。よかった、今日は少し忙しくなりそうなんだ。ささ、着替えておいで。」

入るなり、カップを磨いていたマスターが優しく声をかけてくれた。マスターは、本当に優しくて、年の離れた兄のような存在だ。

「ありがとうございます、もう大丈夫です」

後ろに目をやると、凛がピースしながらにしし、と笑っていた。後でお礼言わなきゃな。

スタッフルームに入ると、凌さんがいた。普段なら、軽いあいさつが来るのだが、向こうも少しは罪悪感があったようで、チラチラと様子を伺ってくる。

でも俺は言いたいことがあるから、言わせてもらいます。

「凌さん」

「っ!…なんだい、雅くん」

「俺、もう吹っ切れましたから。楓さん、最後まで愛してくださいね」

ドヤ顔でいう。俺はもう、楓さんは諦めたんだ、と。

「!…ふ、言われなくても、そのつもりだよ」

よかった。いつもどおりの上から目線で、俺のかなわない凌さんだ。


    *  *


今日は予約がいくつも入っていて、午前中から客の入りもよく、全員忙しく動いていた。

午後になり入りが落ち着いたころ、ドアのベルがなり、新しい客が入ってきた。

どうやら男性二人組のようだ。あまり見ない組み合わせだな、と思いながら凌さんが案内しに向かったのを眺めていた。すると

「凌さんっ!こんにちは~♪えへへ、きちゃいましたっ」

「楓!?あれ、今日来るって言ったなかったよね…?」

なんてタイミング。楓さんが来ていた。それにしても、いつもは来る日打ち合わせてるのかよこのバカップル…チクショウリア充め。

いつものカウンターに、楓さんを挟み、右に連れの男性、左に凌さんが座る。

「そちらは?」

「あ、紹介しますね。僕の友達で大学の同級生の神田明です。えと、僕たちが付き合ってるとこは、知ってるんで、大丈夫です」

「どーもー。凌さんっすか。へ~…なーるほどぉ。凌さーん、失礼ですけど男経験ないっすよね?」

「は!?ちょ、なにいって…!」

「へえ、よくわかったねえ?俺は男と付き合うのは楓が初めてだよ。明くん、でいいかな?」

「いいっすよ。じゃー俺は凌って「明?」…凌さん、って呼びマスネ」

神田さん、か。かっこいいなあ…。

身長が高くて、座った時に組んだ足がきれいだ。顔も整ってる。

レジスペースにある椅子に座り、足をプラプラさせながら眺めていると、凛がキッチンスペースから顔を出し、楓さんに駆け寄った。

「楓さーん!!!きてたんですねっ!!!あ、もしかしてお隣は例のご友人ですか!?」

「わー!!りんちゃーん!!この前はほんとありがとねー!!!そうだよー!」

きゃっきゃとはしゃぐ二人と、温かい目で見守る両サイド(+マスター)。

こうしてみると、楓さんはほんとに女の子みたいだ。


二組の会計を済ませ、一息ついてもう一度椅子に座る。

ふと、まだ話を弾ませている楓さんたちの方に目をやると、神田さんがこちらを見ていた。

すると、いたずらな笑顔を浮かべ、ちょいちょい、と手招きをされた。

「いかがなさいましたか」

「君かな~?楓に告って玉砕したのは~。」

「…そうですけど」

「あっはははは!!そうかそうか~、君が雅くんかぁ~。君、今いくつ?」

「19、です。そろそろ20ですけど」

「うわ~、ラスト10代で振られるとか悲しすぎるな!」

ははははは、と、大笑いしてはそっか~と言ってくる。なんだこの人スゲえムカつく。

「まー、振られるのも人生経験だ。俺なんかなー、高校の頃からず~っと毎月3人以上に振られてるからな~。コイツになんか10回以上告って全部振られたんだぜ?悲しくね?」と、楓さんを指差していう。

「明が何度断ってもつきまとってきたからだろうが…」

神田さんも、楓さんに…

「羨ましいなあ」

「ん?羨ましい?なにが?」

「あ、ごめんなさい…何度振られても、何回もぶつかっていけるのが、羨ましいな、って」

「っはは、そりゃ雅さ、俺は何も辛くないわけじゃないんだぜ?毎回傷ついて、何度も立ち上がって。幸せつかむために、必死になってるだけなんだよ。」

ま、掴んだ幸せも一瞬だけどな、と笑う神田さんに、不覚にもドキッとしてしまった。

「神田さん、あの」

「あれ、名前おしえたっけ?まーいいや、明でいいよ?」

「じゃあ…明さん。連絡先、交換していただけませんか。」

「んー、いいけどなんで?雅、さっきからいかにも俺にムカついてる感じだったけど。

文句は受け付けんよ?」

「いえ、そうではなくて、その…俺、男性を好きになったの、楓さんが初めてで。先輩として、いろいろ、教えて、いただきたくて…」

目線を下にやり、エプロンの裾をいじりながら小声で言う。

初対面の人に、連絡先をせがんだことなんて今までなかった。でも、今日は、神田さんは、逃しちゃいけない人だと、思った。

引かれるかな、とびくつきながら顔を上げると、ご満悦な明さんの顔があった。

「ふっふー、そういうことなら、俺のプライベートアカウント教えちゃおうかなー」

そういうと、反対側のポケットからもう一台スマホを取り出し、QRコードを表示させた。

「これが、俺の所謂プライベートアカウント。登録してるのはゲイ友だったり、セフレだったり、楓みたいに俺の本性知ってる奴だったり。雅でやっと15人目だな。んでこっちが普通の友達用。高校、大学の同級生、親戚、兄弟とか。両方教えとくから、内容によって使い分けてくれると助かる」

ピロン、ピロンと二人追加する。やった、やった!

「ありがとうございます。今夜にでも連絡させてもらいますね」

「おー、待ってるぜ。お、時間…じゃ、雅、凌サン、これからバイトなんで帰りますわ。また邪魔しにくるぜー。凛ちゃん、またな~!」

はーい、またねと各々声をかけられ、小走りで店をあとにする明さんを、最後まで見送る。

「夜、なんて言おうかな」

凛が後ろでにやにやしていたのは、独り言が聞こえたわけじゃないと、信じたい。



お久しぶりです!緋乃です。

このカフェが舞台の創作BLシリーズを、ずっとなんて呼ぼうかなー何がいいかなーと試行錯誤した結果、章タイトルに苦い、甘い、を無理やり(w)配置することにより、苦甘シリーズと名付けることに成功しました。もしもどなたかにお話する機会があるときは、『苦甘』(にがかん)とおっしゃってくださると嬉しいです。


そんなわけで苦甘シリーズ第二章、雅と明編です。

恋愛経験0の雅と、体関係だけは経験豊富な明が、経験値の差に苦しみ、すれ違って、少しずつ歩み寄る…予定。

私のあとがきは全く当てにならないです。

相変わらず読み返さずにノリと深夜テンションで投稿してるので誤字脱字オンパレードで読みづらいとは思いますが、見つけたらご指摘いただけると大変助かります。

誤植の指摘やアドバイス、ご感想などお待ちしております!お気軽にコメントして頂ければと思います。

では、また次の更新でお会いしましょう。ばいばいっ

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