退院
「おはよう、奈々。」
「あ・・おはよう」
いつも目を開けると白い天井、白いベット、隣には窓、そして母がいた。
この病院に来る前の事は一切覚えていない。
そう、私、高咲奈々は記憶を失ってしまっていた。
もう1週間くらいたっただろうか。
母にこの病院に来る前の事を聞いても一切口を開かない。口を開いたと思えば、話をそらしてばっかり。なので今はあまり気にしないようにしている。
今日は待ちに待った退院。そして、明日からは学校。友達はいるのか、校内の道も、先生の名前も分からない。
この病院にいる時は、突然倒れた事もあって母も心配していたが、早くいろんな事を覚えなくてはならないので、明日から学校に行くことにした。
まぁ、一番私を心配しているのは私自身だ。
「奈々、明日から学校ね。」
母が心配そうに話しかけて来た。
「うん・・」
「まだ、そんなに焦らなくてもいいのよ?」
「大丈夫、早く慣れていきたいし、自分で決めた事だから。」
「そう、何かあったらすぐに言ってね。」
「分かった。」
でも、母にはあまり心配されたくない。母のことを分からない私に、もしかしたら、だましていたというのもありえるし、悪い方向に考えれば母が犯罪者という事も考えられる。本物の母だと良いけど・・。
「奈々、調子はどう?」
姉の桜。現在高校1年生と言っていた。ちなみに私は中学1年生。
「うん、大丈夫だよ。」
「無理しないでね。」
「ありがとう、おねえちゃん。」
そう、姉も本物かどうかは分からない。
でも、頭は良いし、けっこうモテる。しっかりしていてたよりになる姉だ。
さてと、退院の準備はオッケー
時間余っちゃったな。 病院の散歩ってのもなんだけど・・・暇だし、あいさつでもしてこよう。
いやー。今日で最後か。
あ、あのおばあちゃん。腰が悪いんだっけ。お世話になったしあいさつしとこ。
「おばあちゃん。腰、大丈夫?」
「あら、奈々ちゃん。心配してくれてありがとう。大丈夫だよ。」
「ううん、良かった。」
「奈々ちゃんは、今日で退院だっけ?」
「うん。おばあちゃんも、元気で退院できるといいね。」
「そうだねぇ。」
「うん。じゃあバイバイ。」
「はいよ、さようなら。」