表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eclipse~SS  作者: 楪美
7/14

Eclipse-2014's Valentine's-Day 3


普段あてにならない天気予報は、今日に限って大当たりだった。



ビル風が重なって打ち付けるように吹雪いてくる中では、案の定傘なんて役に立たなかった。ファーつきのフードを深く被って髪の毛を無理やりしまいこみ、靴下を重ねた上のレインブーツが雪に埋まらないように、ほとんど前の見えない通りを街灯を頼りに進んだ。




あれから、随分時間が経ってしまっていた。お菓子作りに焦りは禁物なのに、急げば急ぐほど余計にうまくいかず、完成したのは夕食の時間もとっくに過ぎてからだった。そこからラッピングやら着替えやらを済ませて準備が完了したのがついさっきの十一時前。おまけに、放置していた携帯には晃斗さんから何時間も前にメールが入っていた。



ルーチェの店先にたどり着いた頃には、ブーツに雪がしみた爪先も荷物を抱えていた指先も、感覚がなくなっていた。お店の閉店時間は過ぎていたけれど、雪と結露で白くなった窓のすきまから オレンジ色の灯りがともっていた。まだ、お客さんがいるのかもしれない。



これでもかというくらい着ぶくれて、髪は風と雪でぼろぼろ、メイクすらまともにしていないけれど、もう立ち止まっている時間はない。一年に一度の、特別な日が終わってしまう。



声を出さずに意を決して、濡れた木のドアを身体で押した。



カランカラン と、いつものベルの音が鳴った。



聞こえたのは、それだけだった。



見えたのは、たくさんのお菓子の箱や袋と、その中の一つを開いて口を動かす晃斗さんの、明らかに戸惑った視線だった。




開けっぱなしのドアのせいで、背中が冷たかった。



晃斗さんの隣にいたシンちゃんが、何かを言っている。



私も、自分でわからないまま何かを言った。



そのまま、白く煙る、寒い道をもと来た方へ戻った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ