Eclipse-2014's Valentine's-Day 2
「来ないね?」
「あ?」
「ルナちゃん、来ないね」
ディナータイムが始まる五分前、つかの間の休息時に、このクソ寒いのに薄っぺらいシャツ姿のシンが、呑気にオレンジジュースをちびちび飲みながら呟く。奴がいるおかげで、煙草は御法度だ。
「雪で転んで怪我してないといいけど」
「そこまで鈍くさくねえだろ」
「悪かったな、鈍くさくて」
今朝がた思いっきり外ですっ転んだおっさんに懲りた様子はない。あれだけしたたか頭を打ってたんこぶで済んだのは、頭の中に脳味噌の代わりに鉄球でも入っているからかもしれない。
「行ってやりゃあいいじゃんか。そのまんま帰ってこなくていいぞ」
「連絡ないってことは、なんともないだろうけど」
「無視かこの野郎」
「でも、返事ないんでしょ?晃斗、なんかしたんじゃないの」
「なんもしてねえよ」
「本当?」
「たぶん」
尋問にうんざりしつつ、携帯を確認する。連絡は来ていない。
「というかこれ、どうするの」
シンが指さした先を見て、さらに追い討ちがかかる。
派手にラッピングされた箱やら袋やらが積まれちょっとした山になっている。中身を想像しただけで、溜息が漏れる。
「まあ、受け取っちまったモン無駄にするわけにゃあいかねえよな」
「頑張るんだよ、晃斗」
「はっ、モテる男は違うねえ」
人の気も知らずいけしゃあしゃあと宣われ、気分は最悪だった。
もう一度携帯を開き、閉店までに来れなさそうだったら部屋まで行く とメールを送った。
店が開いてしばらくしても、返事は来なかった。




