Eclipse-2014's Valentine's-Day
昼も夜も色とりどりなはずのこの街が、真っ白に染まったのを初めて見た。
夜にかけてさらに積もるという雪は、今は風がないおかげで静かに舞い降りている。夕方前にもかかわらず人も車も、音すらも少ない道を、足跡をつけながらゆっくり歩く。
朝、今日はお店を開けるのかと送ってみたら、おじさんの気分しだいだと返ってきた。来るのか と聞かれたので、行けたら行くね と曖昧な返事にしておいた。
大雪でも、歩いて三分のところに行けない理由になんてならないことぐらい、わかるよね。
そんな慢心が仇になるなんて、プレゼントがうまく準備できて浮かれていたおめでたい頭にはよぎるはずもなかった。
いつもなら躊躇いなく入っていくルーチェの入口のドアが、ものすごく遠くに思えた。普段は気にかけない勝手口の方に目がいったのも、足が止まったのも、雪のせい、そう思いたかった。
彼の全身真っ黒な姿は、真っ白な景色の中ではよく目立った。そして、彼と向かいあっている、傘の赤がやけに眩しかった。
話し声は、聞こえない。
赤い傘の下から、シックなチェック柄の紙袋が覗き、彼の手に渡される。
小さく頭を下げて見せた彼に、赤い傘が近づいて、被った。
その向こうは、見えなかった。
傘と袋を握り締めて、私は突っ立っていた隅っこから音を立てないように離れた。
後から付け足していって、全部で3000字くらいになります。