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僕の彼女、変なんです  作者: 九条千冬
子犬少女と雨
2/2

雨の日の同居犬

「藍瑠ー?俺が悪かったから出て来いって」

キッチンの片付けを済ませ、俺は藍瑠の立て籠もっている部屋の前で声をかけ続ける。

かれこれ30分が経過しているが、一度も返事はない。

時折部屋の中か啜り泣く声が聞こえてくるが、それ以外は物音ひとつしない。

面倒だ。はっきり言って。

ほんの数週間前までは平和だったのに…

あの雨の日、騙されなければ…





バイトの帰り、傘をさしながら歩いていると、くぅんと悲しげな声が聞こえた。

元々犬が好きな俺は迷わず声に近付き、その声の主を見つける。

そこに居たのはダンボールに入れられて弱っている茶色い子犬…

その可愛さと儚さに一目で心奪われた俺は、子犬を抱き上げてパーカーの中にいれてしまった。

そう…今思えば、それは今の不幸な日常を招いてしまったのだ。



家に連れて帰り、まずはタオルで念入りに拭いてやる。

ふるふると身体を震わせて横たわる子犬に、温めたミルクを飲ませていき、零れたミルクを拭ってやり、と、兎に角世話を焼き続けた。

そんな苦労の甲斐あってか、子犬は3日もすれば回復して元気に走り回るようになっていた。

「お前さ、捨てられたのか?」

俺の問いに、子犬はコテンと首を傾げる。

その仕草があまりにも可愛くて、他に飼い主を探そうという俺の思いは簡単に崩れていく。

「俺と暮らすか。」

この時手放せばよかったと思っているのは言うまでもない…。



「んー…」

1人で寝ていたはずだった。

いや、確かに1人で寝ていた。

なのに…なんで…!!

「誰だ⁉」

朝起きると、俺の隣に女の子が寝ていた。

それも服を着ていない、犬耳と尻尾付きの異常なほどの美少女だ。

「んぅ……なぁに…?」

俺の声で目を覚ました犬耳美少女は、目を擦りながら眠そうな目で俺を見つめる。

思わずドキンと心臓が高鳴るが、一先ずよく考えてみろ、自分…

昨日の夜は確かに俺と子犬しかいなかったはずだ。

それが起きて見れば不信な少女が1人増えている。

いや…待て。そういえばさっきから一度も子犬の姿を見ていない。

気配すら感じない…

「なに考えてるの?」

「いや…ちょっと…

ていうより、君、誰なんだ…?」

我ながらよく冷静にいれたと思う。

混乱しすぎて逆に冷静になったのか?

「わたし…?

んー…わんっ」

…………なんなんだ、こいつ。

そう思ったのは言うまでもない。

俺の前に座って笑顔で鳴いた美少女。

よく見れば胸元に傷がある。そういえば、あの子犬にも傷があったな…なんて考えてみるが、無意識のうちに俺の目は露わになったままの胸へと向いてしまう。

決して大きくはないが形のいい綺麗な胸。

そして、まだ誰にも触れられたことのないであろうピンクの頂……

「って違うだろ!!」

「っ⁉」

「あ…悪い……」

突然怒鳴った俺を、彼女は怯えたような目でジッとみる。

やめろ…その目で見られると理性がぶっ飛びそうだ…

「頼む…取り敢えずこれを着てくれ……」

なるべく見ないようにしながら近くに脱ぎ捨ててあったパーカーを渡す。

これ以上この格好で居られれば理性に打ち勝つ自信がない。

「……やだ」

空耳だろうか?いや、今確かに…

「嫌っつったか?」

「うん。服嫌い」

コクンと頷き、今度はねだるような目を向けてくる。

「嫌いじゃなくて…女の子がそんな格好でいたら変だろ?」

俺の言葉を聞いても頷こうとはしない。

むしろ泣きそうな顔でジッと俺のことを見ていた。

「……着なきゃ追い出すよ?」

「着る」

よし、勝った。渋々服を受け取る彼女を見て、俺は確信した。

だが…

「着方…わかんない…」

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