俺と二重人格少女の冒険
「ちょ、待ちなさい」
金髪で短髪の歳は13ぐらいの少女が俺を追いかけてくる。
だが、俺は追いつかれてはいけない、何故なら振り向けば全てが彼女に分かってしまうからだ。
だが、怪我をしている俺は走ることが出来ない、対して彼女は全力疾走で走ってくる。
いつかは追いつかれてしまうだろう、その時は――――。
※
「ハァハァ」
彼は肩で息をしながら目を覚ました。
そして体を布団から起こし額に手をやった。
その瞬間頭痛に見舞われたが、ほんの一瞬だったのでなんとか耐え、体を起こす。
「またこの夢か……いい加減にしてくれ、まったく」
そう呟き彼は立って深呼吸をしようと―――――したのだがその行動を妨げるものが布団から立ち上がった、彼の前に立っていた。
「あぁ、えっと、その……えへッ」
その言葉を発した物は夢で見た少女とそっくりだったが、今はそんなこと気にしていられてない、なぜなら彼は今一人暮らしで誰もこの部屋の合鍵など持ってもいないし、この部屋に来て鍵をなくした覚えもない。
すると、この前に立っている少女はなんなのだろうか?
答えは一つ不法侵入者だ。
その思考か働いた途端、彼は自分でも意識しないまま体を動かしていた。
自分の部屋の前で立っている彼女に近づいて行きすれ違うと同時に彼女の服の後ろの襟をつかみ玄関の外へと放り出した。
その後、彼はため息を付いたが、その途端混乱していた思考が戻ってき、いくつかの疑問が湧いてきた。
まず、昨日確かに彼は家の鍵をしめていた、だが彼女は普通に平然と家に入ってきている。
しかもだ彼女が泥棒なら何故、彼が起きる前に物をさっさと取って退散しなかったのか。
この二つの疑問が彼の頭の中でグルグル回っていたが考えても仕方ないので、やはり本人に聞こうと思い玄関の扉を開ける。
すると玄関扉の前には先ほどの彼女がきちんと体育座りをしていた。
「お前、なにものだ」
彼は反射的にドアを無言で締めようと思ったが、思いとどまり声を発する。
「私ですか?私は……誰?」
彼女の口からは彼が考えていた孤児や、泥棒などと言う甘っちょろい答えは返ってこなかった。
いや、むしろ普通の人は人に名前を聞いて、本気で私は誰?と返されることなど普通の人生では一度も経験しないだろう。
「本気で言ってるのか……?」
彼は驚きのあまり考えていることが口から出た。
「すみません……自分が誰だかわからないです、けどここにこなければならないとだけは何故か頭に残ってて……」
彼女は顔を下に向け言葉を発したが声が段々と小さくなり最後の方は聞こえなかったが彼は彼女をとりあえず家に入れようと思った、他の人から考えればまだ泥棒かも知れないやつをむざむざ自分の家に招き入れるのはおかしいのだが、寝起きということもあって彼の思考はそんな当たり前のことを考えることもできなかった、というよりかは彼の直感が大丈夫と判断したのだろう。
その、瞬間彼の部屋の上の屋根がすざまじい音をたてて吹き飛んだ。
「ちょ……ま」
彼は唖然として声が出なかった、自分の家が吹き飛んだのもあるが、それより自分の家の屋根を吹き飛ばした存在の姿が信じられなかったのだ。
彼の目が見たそれの姿は、とてもこの世のものとは思えなかった。
体の形だけは人間ににいていのだが、目は一つで両肩に刺のようなものが三本づつ、そして何より腕が肩からだけではなく後ろの人間なら肩甲骨にあたる辺りから手らしきものが左右対象に生えていた。
「ウググググ」
その怪物が唸り声とも威嚇の声とも取れる声を発する。
「異界に召喚されし怪物よ貴様らの永遠の消滅を……シェルス・ジ・ザーべ」
その言葉が聞こえた瞬間彼の後ろから光りの弾が複数その怪物に向かって飛び散った。
少し間を開けて怪物に被弾したと思われる弾が閃光弾並みの光りを散らす。
次に彼が目を開けた瞬間怪物は跡形もなく消えていた。
「被害が出ちゃったかー、ま大丈夫でしょ」
彼の後ろにいた彼女が隣に来て言う。
さっきまでオドオドしていた少女が違う喋り方になったのは驚いたがさっきの怪物を一発で消滅させたのにもっと驚いていたので彼の頭にはあまり印象に残らなかった。
「あっ、私はあの子とは違うからー、簡単に言うと人格が違うって言うのかなー、ちなみに私は名前があって、サイカ・ルアンって言うのよろしく」
印象が変わった彼女は色々と衝撃的なことを話しているがあの怪物を目撃した彼にはさほど驚くことではなかった。
「それじゃぁサイカ、これはなんなんだ?俺にもわかるように説明してくれ」
まぁ普通の人間なら当然の質問だ、怪物に襲われそして、彼女が何故そんなものに太刀打ち出来たのか。
そんな疑問が浮かんでくるだろう。
「えーと、あの怪物は異世界はディセンって言ってこの世界とは違う世界から、ある組織によって送られてきてるの、それを倒すのがあたしたちの役目ってわけねー。後私たちって意識だけで肉体は世界を移動出来ないから他の人の体に宿ってないと消滅しちゃうのよー、それであたしが宿ったのがこの子ってわけ彼女はあたしが宿ってるのは知らないからねー。それじゃぁ後よろしく」
そう良い彼女の違い人格、もといサイカは彼女の中にひっこんだ。
そして、これから彼は二重人格の少女とディセン退治を始めることになる……