傘を盗まれるくらいで良かったです
ペタペタ
「えへへへへ」
デコる。
身近なモノにアレンジをするのは楽しいと、阿部のんちゃんは思う。
傘は特に好きだ。
ザーーーーーーーッ
「あっ、あっ、あっ……」
だが、そんなお気に入りなんて知るかと、非常事態においてはどんな傘でも使っていく。
「のんちゃんの傘がない!!どーして!?」
せっかく、デコった傘が……。のんちゃんが小学校にいる間に起こった事件。
自分の傘だって一発で分かるモノだ。きっと、大雨だから盗んで使った人がいる。
だから、のんちゃんだって知らない人の傘を使う!!……なんて事はしなかった。そんな事よりも傘を返してほしいの気持ちである。
グスングスン…………
自分と同居している人に迎えを頼んだ。大雨は夜中降るようである。ただ、そんな雨模様よりも……許せないって思う気持ちをずーっと堪えながら
「「迎えに来たよーーー!!のんちゃーーーーん!!」」
「…………え?灯さんまでご一緒なんです?」
自分と同居している沖ミムラと、……彼女の2つ先輩の山本灯が迎えに来てくれたのだ。いや、誰がとかよりも、灯が
「な、なんで、……のんちゃんの傘を灯さんが持ってるんです?」
「ああ。やっぱり、のんちゃんのかー。やるなぁ、ミムラ」
「でしょー!絶対にのんちゃんの傘だって、私には分かったもん!部屋で傘をデコってたのにソックリだし!」
「??????」
状況把握ができない。
「のんが泣いて、”独占”の能力を使って傘を取り返そうとしたら、危険だろー。あたし達だって、ちょ~っとは気が利くのさ」
「私も傘を忘れててねー。私が使ってるのは、アカリン先輩の傘だよ。のんちゃんの小学校に来る途中で、のんちゃんの傘を使って帰ろうとする男性を見かけて、のんちゃんから連絡が入ってピンと来て!」
「あたしがその男を追いかけて、殴り飛ばして傘を奪い返しといたって話さ。どーせ、捜そうとするでしょ、のんは?」
……あ~~、傘を盗まれたけど、知り合いが暴力で取り返してくれた。
そ~いう解釈でいいんですね、これ
「あ、ありがとうございます!!灯さん!」
「いいって、いいって。ホラ、使いなさいよ。ミムラ、あんたはあたしの傘を返しなさい」
「あーーー!、アカリン先輩がのんちゃんに傘を返したら、そーなりますね!」
いや、気付かなかったんかい!!
「アホですね。ミムラさん。やっぱり!」
「あんただけよ、傘を忘れたの」
「ぐぬぬぬぬ!だって、私はぜ~んぜん!経験ないもん!置き傘してるのは全部、私のモノだと思ってます!!」
「ダメですよ!のんちゃんの同級生の傘を奪うようなマネは!!みっともない!」
とか言い合っていれば、夜中まで降る大雨が突如として、止み始める。
「あーーー!ホラホラ、虹が見えてきたよー!!晴れて来ましたよー!私が困ったから、お天道様が助けてくれたんですよ!」
「ホントに運の良い人……」
「さ~すが、”天運”のミムラ。こーいう時は頼りになるわね」
「でも、のんちゃんとしては、この傘を広げて帰りたかったですよ」
「家に帰る前に広嶋くんや藤砂さんところに寄ろうよー!いつもの喫茶店」
あはははは…………
◇ ◇
『本日のニュースです』
喫茶店で男性客が2名、マスターが1名。
今日のニュースを聞いているところである。
『今日、遅くまで降る予定だった大雨でしたが、原因は分かりませんが、雨雲は突如として日本列島を離れ、太平洋沖まで流されたそうです。気象庁の予測では、これが大きなハリケーンを作り、アメリカに上陸するのではという見解を示しています』
「………、こーいうこともあるな。頑張れ、広嶋」
「何も頑張らねぇーよ、藤砂。アシズム、これはあれか?あのバカか?」
「間違いなく、ミムラちゃんの”天運”だね~。無意識で天候を変えたんだよ」
『続いてのニュースです。本日、夕方。〇〇地域にて、中年の男性が何者かに暴行され、顔面と胸、右腕の骨を折られるという事件が発生。その何者かは、男性の傘を奪って、そのまま走り去ったようです』
「……、灯がやったような気がするのは俺だけか?傘だけ奪うってところが、あいつのやりそうな範囲だ。他人の金とかには手を出さないと思う」
「そうだろうな。まったく、傘を忘れたからって人のモノを奪うか……」
「前のニュースがなきゃ、やってる事は大したことないんだよね。というか、やらないと思うんだけど」
『なお、被害に遭われた男性は、……え~っ、小学校にいる可愛い女の子から声をかけてもらいたく、可愛い子供の傘を奪ったと供述し、その男は不法侵入及び窃盗という形で警察が捜査しています』
「……、灯は悪い事をしていないな」
「のんだけどーして、被害に遭ってる感じなんだよ。他人の独占欲を刺激する力はホントに厄介だな」
「これはニュースで流れる情報かね」
チリンチリーン
傘を持った2名と、傘を持たない1名。
ご入店。
「「「お前等、傘ぐらいで騒ぎを起こすな」」」
「え?」
「ええっ!?」
「私は傘を持ってないよ!なんの話かな!?」
バギイイィィッ
「ミムラ。お前だけは傘を忘れてんじゃねぇ……」
「い、いきなり店の外に連れだそうっていうか、投げ飛ばさないでよ!!広嶋くん!」




