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自衛隊転移ー衛るべきものー  作者: GoGoGorilla


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プロローグ 第一部:鋼の牙城

エピローグ2話中の1話となります。

白峰しらみね駐屯地は、本州の険しい稜線に抱かれた盆地の北方に、その身を潜めるようにして存在する。


北から西にかけては緩やかな尾根が連なり、その裾野が駐屯地の背後まで迫っている。東側はなだらかな斜面となってその先は切り立った深い谷へと落ち込んでいる。その底を流れる細い川は、やがて人里へと流れていく。唯一の動脈は、南側に開けた一本の舗装路。盆地へと下るその道だけが、この孤独な砦を現代社会へと繋ぎ止めている。


この地には、歴史の血が染みついている。 第二次世界大戦中、大日本帝国陸軍が構築した秘密基地。三方を山と谷に守られ、上空からは主要施設や武装は森のなかに紛れる。正面には高い壁が築かれており、攻略を拒むその地形は、当時の軍資料に「難攻・秘匿」の四文字を刻ませた。 戦後、施設の一部は破壊され、あるいは土に埋め、隠蔽されたが、多くの施設は残された。白峰駐屯地は、かつての要塞の遺構をなぞるようにして築かれている。旧陣地跡は広大な演習場へ、地下通路の跡は緊急作戦室や倉庫へと姿を変え、戦後数十年を経た今も、古の軍事思想が基地の随所に息づいている。


夜明け前。 東の谷底に溜まった湿気が白い霧となって斜面を這い上がり、駐屯地を呑み込んでいく。 コンクリートの庁舎も、並列する車両の無機質な輪郭も、半分ほどが白に沈む。霧に浮かぶ山の緑は、どこか現実味を欠いていた。


敷地の最下部、南側の正門と警衛所を起点に、緩やかな坂を上れば駐屯地の中枢へと至る。

中央には、アンテナの林を背負った指揮庁舎と通信施設。それを取り囲むように、隊舎、医務室、厚生施設が秩序正しく配置されている。


西側の広大な車両駐車区域には、陸の防衛を担う鉄の塊が鎮座していた。 鈍い光を放つ十両の主力戦車。 二十両の装甲車に、四両の自走榴弾砲。 多連装ロケット砲二両と、地対地ミサイルを搭載した重厚な発射車両。 それらを護衛するように、三十両近い高機動車や人員輸送車が取り囲んでいる。別区画には、施設科が運用する大型ブルドーザーやホイールローダー、クレーン車といった重機が、その腕を休めていた。


いずれも、整備員たちの執念に近い手入れによって、即応の呼吸を保っている。


東側の緩やかな斜面には、土とコンクリートで覆われた掩体を転用した、半地下式の弾薬庫が点在している。 万一の事故や外敵からの攻撃による誘爆を考慮し、被害を最小限に留めるべく分散配置されたその姿は、この場所が「平時」であっても、常に「有事」を想定していることを無言で主張していた。


北へ進むと舗装は途切れ、踏み固められた土の匂いが立ち昇る。 そこは、鉄の轍が幾重にも刻まれた演習・展開区域だ。 広大な開轄地の奥には、塹壕構築訓練のために掘り返された土が、地層のように過去の痕跡を晒している。さらにその北西の平坦地、簡易舗装されたヘリポートには、二機の大型輸送ヘリコプターと、二機の攻撃ヘリコプターが待機していた。


白峰駐屯地に常駐する隊員は約三百名。 普通科を中心に、機甲、特科、施設、通信、補給、あるいは医療。 一国の国防を縮図にしたような機能が、この山間に凝縮されている。


この駐屯地は、周囲で災害が起きれば、瓦礫を穿ち、道を作り、人々を救い上げる希望となる。 有事であれば、敵を排し、侵略者を拒む盾となる。 南へと延びる一本の道は、救いへの回廊であり、同時に戦いへの出撃路でもあった。


かつては帝国陸軍の要塞として。

今は、陸上自衛隊の駐屯地として。


やがて、静寂を切り裂くように起床ラッパが鳴り響く。

霧が晴れ、ディーゼルエンジンの重低音が山々にこだまし始めるころ、白峰駐屯地はいつもの「日常」を起動させる。

人も、装備も, 己の役割を果たすために。


まだ誰も、その役割が、根底から覆る「未来」を知る由もなかった。

本作は初めて執筆した小説で、今回が初投稿となります。至らぬ点もあるかと思いますが、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

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