アルセラとのデート 1
「ディア様、おはようございます。早速ですが、今からデートに行きますよ??」
「ふぇあ!?お、おひゃよう」
パタリーとの件から3日経過して、今日はアルセラとのデートの日である。
ちなみに、パタリーとデートの後、ベルンルックの屋敷でアルセラとシンリーにあっけなく捕まり、肉体面から尋問を受ける一方で、精神面では『木葉』を無視した罰として、なぜか、あたしの黒歴史の暴露大会が開催される事となった。
その結果、3日間の休みはあれども、自分のメンタル回復を努めただけで終わりを迎える。そして、肝心の今日はアルセラとのデートがある日のため、気合を入れて早めに眠っていた。
それなのにもかかわらず、太陽が登ろうとする頃合いの早朝に、アルセラから叩き起こされてしまう。挙げ句の果てには、今からデートという無茶振りをされる結果となった。
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「今からは流石に早すぎると思うの!!」
「ディア様、パタリー様との口付けはどんな味でしたか?良かったですか?」
「さぁ、今日はアルセラとのデートの日!!気合を入れるよー!!」
当然、あたしはアルセラの無茶振りに反発したが、彼女にパタリーとのデートを引き合いに出されてしまい、分が悪くなる。
その結果、完全敗北をしてしまい、眠たい目を擦りながら、2Fのドレスアップルームの方へ移動する事となった。
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「これは………??」
そして、ドレスアップルームの中に入ると準備していたであろうアルセラから衣服を受け取る。
しかし、アルセラから受け取った衣服がいつものドレスよりも、質素過ぎて無意識のうちに疑問の声を出してしまう。
「ディア様、お気持ちはわかりますが、どうか、今日だけは我慢して着てください」
「んー、よく分かんないけど、分かった!!」
そんなあたしの疑問に対して、アルセラは申し訳なさそうな表情をしながら、あたしにお願いしてきたため彼女の頼みを引き受ける。
その後、あたしは慣れない服の肌感に違和感を感じつつも、アルセラと手を繋ぎながら、ベルンルックの屋敷を出る事となった。
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「ふぁ〜っっ……くそねみっ……おっ、ディアお嬢様、アルセラ様、おはよう」
「ふぁっ……あははは、おはようですー」
あたしとアルセラがベルンルックの屋敷を出ると、パタリーの時と同じく、既に馬車が準備されている。そして、馬車の付近には眠そうにしたロンとアースがおり、彼らはあたしとアルセラに気づいたのか、欠伸をしながら挨拶をした。
「ロンとアースもアルセラの被害者なのね……」
「まっ…お代としてディアお嬢様の……ゴホンッッ、ほら行くぜ」
ロンが何か重要な事を口走ったような気がして、追及しようとした瞬間、彼の大きな咳払いと共に誤魔化されてしまう。
「ロン、あたしのってどういう…」
「あははははは!!!行きましょうー!!」
「ええ、ディア様、馬車に乗りましょう!!」
このまま逃すわけにはいかないと考え、再度、ロンを追及しようと考え、口に出す。
しかし、そんなあたしの声は同時に発したアルセラとアースの大きな声量に消された瞬間、彼等がわざとあたしの声を掻き消した事に気づく。
その結果、あたしが追及しようとする度に3人の大きな声で掻き消されるので、彼等にジト目を向けつつ、『ホープ』と『サクセス』に感謝を伝えた後、この場は馬車へ乗る事にした。
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ガララララ……
「こんな朝早くからどこへ向かうの??」
正直、アルセラ達が必死で誤魔化した内容が、どうしても気になるが、彼等が素直に話してくれるとは思えない。だから、この場は諦め、あたし達の馬車が向かう目的地を質問する。
「ディア様、それは行ってからの秘密です」
しかし、あたしがした質問の答えはパタリーのデートの時と同様、内緒にされてしまったため、そのまま、馬車に揺られ続ける事となった。
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「ディア様、起きてください…!!」
「んゅ……着いたの??」
「はい」
どうやら目的地に到着するまでの間、あたしは寝不足だった事もあり、爆睡していたらしい。
アルセラの大きな声を聞いて、薄く目を開くと、既に太陽は真上に昇っていた。
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「マークが鬼なー!!」
「ラース、ずるいよー!!」
その後、馬車から降りて周囲を確認すると、ボロボロの教会を彷彿とさせるような建物があり、その付近には、穴が空いた衣服を着た小さな子供達が無邪気な笑顔で鬼ごっこをしていた。
「こーら…!!ラース、意地悪せずに仲良くしなさいって、アルセラ!?」
そして、子供達の近くには子供物の洗濯物を干しているシスターのような格好をした透明感のある水色の髪を背中まで伸ばした綺麗な身長の高いお姉さんが意地悪をした子供を注意している。
そんな綺麗なお姉さんは、子供達に注意するのと同時に、ようやくあたし達が近くにいる事に気づいたのか、驚いた表情をした後、すぐに満面の笑みを浮かべ、アルセラの方へ抱きついた。
「アリス姉様、お久しぶりです!!」
アリスと呼ばれた女性に抱きつかれたアルセラは、彼女に抱擁を返しながら、普段のあたしには見せないような笑顔で彼女と話している。
———『嫉妬』だわね?
———後で話は聞くから黙ってて!!
———釣れませんわね。仕方ありませんわ。黒歴史でも見直しておきましょう。
そんなアルセラを見て、あたしは心の中で嫉妬をしてしまい、『木葉』にそれを見破られ、悪態を吐くと『理不尽』な洗礼を受ける事となった。
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「ディア様……どうされましたか?」
「えっと、あたしは何をすればいいのかな??」
モヤモヤとした晴れない気持ちをどうしようかと悩んでいると、アルセラがあたしの方を心配そうな表情で見る。きっと、彼女に悪気はないし、久しぶりの再会だから仕方ない事なのだろう。
だから、アルセラに心配かけさせないように、無理矢理に微笑みながら、彼女に聞き返す。
「今、『ディア様』って…聞こえたような気がしましたが、聞き間違いですよね??」
「アリス姉様!!残念でした!!現実ですー!!」
そうすると、目の前のアリスと呼ばれた女性は目を輝かせながら、アルセラの肩を激しく揺さぶりながら質問する。そして、アルセラの方は得意げに彼女の質問に否定をした。
「えーと…お初にお目にかかります。あたしは『ディア•ベルンルック』と申します。アルセラとは仲良くさせていただいてます」
「こ、これは!?わ、私はアリスと申しまして、見ての通り孤児院の院長をしています!!その、ディア様さえよければ、中でお話ししませんか??」
アルセラとアリスさんのやりとりを見て、自己紹介した方がいいかな?と考えたあたしはアリスさんに向かって、軽く自己紹介をした。
そうすると、彼女はなぜか、もじもじとしながら、丁寧な言葉で自己紹介を返してくれる。
その後、アリスさんのご厚意により、あたし達は孤児院の方へお邪魔することとなった。




