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パタリーとのデート 前編

「ディアお嬢様、おはようございます」

「ディア様、おはようございます」


 目を覚ますと、あたしの顔を上から覗き込みながら、シンリーとアルセラが挨拶をする。


「2人ともおはよう!!」


 本来ならば、いつものようにシンリー達へ甘えた後、彼女達に与えるのが日課だが、今日はパタリーとのデートの日である。


 そのため、朝に弱いあたしでも、なぜかこの日ばかりは目が冴えていた。


「事前に、それぞれのデートの日は邪魔しないと決めていても、朝にしか見れないディアお嬢様の愛らしい姿がないのは辛いです」

「シンリー様、お気持ちはよくわかりますが、私達のデートの日に抱きつかれないためです…!!」


 シンリー達の話を聞くと、どうやら、彼女達の中で取り決めがあったらしい。


 その取り決めのせいか、2人から涙目で睨まれる事となったが、あたしは視線を気にせず、2Fのドレスアップルームへ移動した。


ーーーー


「ディアお嬢様、今日は……」

「シンリー、出来るだけ控えめなドレスをお願いできるかしら?」


 パタリーがどこをデート場所としているのか、分からないものの、彼女との時間を邪魔されるのは不愉快だと思い、シンリーにお願いする。


「え?ええ。かしこまりました。それでは、この薄紫色のドレスなんてどうでしょう」

「うん。ありがとう!!それでお願い…!!」


 そして、あたしのお願いを聞き入れてくれた彼女は目立たない色のドレスを選択してくれたため、彼女に感謝を伝えた。


 その後、あたしはシンリーの選んでくれたドレスに着替え、エントランスの方へ移動する。


ーーーーーーー


 あたしがエントランスへ移動すると、コック姿のジェフル料理長が右端の方に立っていた。


「ディア•ベルンルック様、多忙な中、愛弟子のために、時間を作ってくれて感謝する………!!」


 そして、あたしの姿を見た彼は真ん中へ移動をした後、頭に被っていたコック帽を外して、深々とお辞儀をしながら感謝を伝えてくる。


 そんなジェフル料理長の姿を見て、あたしは目を伏せ、祝勝パーティーが終わった後、ディブロお父様から聞いた話を頭の中で思い出す。


ーーーーー


『ディブロお父様、質問いいですか?』

『ディア、どうしたんだい?』

『パタリーって『祝勝パーティー』で料理の担当でしたよね??それなのに途中で綺麗なドレス姿で参加していたのが、気になって………』


『祝勝パーティー』を終え、招待客の帰りを見送った後、あたしはパタリーの事が気になり、ディブロお父様を呼び止め、彼へ質問した。


『そう言えば、ディアに話していなかったが、ジェフル料理長とパタリーシェフの関係は、師弟以上はもちろん、親子のような関係に近いのさ』

『それって………』

『ああ、今から詳しく話そう。……………で…………から…………………………なんだ』


 ディブロお父様から聞いた話によれば、本来、パタリーは『シェフ』ではなくて『メイド』だったらしい。しかし、シンリー程ではないにせよ、他のメイドからいじめの標的になっていた。


 そんな彼女に手を差し伸べて助けたのがジェフル料理長だったらしい。その日を境に、今日に至るまで二人三脚で歩んできたようだ。


 実際、『祝勝パーティー』にパタリーが途中から参加できたのは、ジェフル料理長の手腕のおかげらしい。きっと、ジェフル料理長にとってパタリーは弟子で自分の娘のような存在なのだろう。


ーーーー


「そんなの当然です!!!パタリーだって、あたしにとって大切な人ですから!!あたしの名にかけて、彼女を傷つけない事を約束しましょう!!」


 未だに深々と頭を下げるジェフル料理長の姿を見て、半端な返事が許されるはずがない。


 だから、深呼吸をした後、あたしはお腹の底から声を出して、彼に向かって返事をした。


 そんなあたしの返事を聞いたジェフル料理長は、満面の笑みを浮かべて会釈をした後、厨房がある2Fの階段の方へ移動する。


 あたしはそんな彼に一瞥した後、ベルンルックの屋敷を出ようとした。その瞬間、階段の方から男の人の泣き声が聞こえた気がしたが、振り返らずに、前へ進む事を優先にする。


ーーーー


「……………………待ってた」


 ベルンルックの屋敷を出ると、ロンとアースが馬車の準備をしているらしく、馬車の近くに、パタリーが立っていた。


 そんな肝心のパタリーの外見は髪型がポニーテールとなっている。それだけではなく、メイクもいつもよりチークが明るく、マスカラにまで手入れが届いており、大人な魅力を醸し出していた。


 それに加えて、ドレスも外側が淡い緑色で内側が濃い白色という色が混在するドレスを身体に纏っており、いつもよりも手が込んでるようだ。


「…………………ディアお嬢様??僕、変??」

「ごめん……そのあまりに綺麗で」


 ただでさえ、大人な魅力を醸し出すパタリーに太陽の光が射し込むことで魅力が倍増した事により、あたしは立ち尽くしたまま、見惚れていた。


 しかし、反応をしなかった事により、パタリーに心配かけてしまっていたみたいで、率直に彼女に立ち尽くしていた理由を明かす。


「…………………喜んでくれたならよかった。ディアお嬢様も綺麗、ほら、手」


 あたしが理由を話すと、パタリーは自分の胸に手を当てながらほっとする。その後、彼女があたしの目の前に手を差し出したため、自分の手を重ね、ロンとアースの馬車へ乗ることとなった。


ーーーー


「パタリーさん、確か、セントラル地区に行くであっているよな??」

「………………………うん」

「あはははは、ロン、私情はだめだよー!!」


 ロンが不機嫌そうに目的地を尋ねると、あたしの隣に座るパタリーが縦にこくりと頷く。その後、アースがいつものようにロンへ注意する。


 ガララララ……


 その結果、ロンとアースの言い合いが起こったものの、いつものように馬車が動き始めた。


ーーーー


「そう言えば、今回のデートの場所は『セントラル地区』なんだよね??どこへ向かうの??」

「…………………まだ、内緒」


『セントラル地区』へ向かう途中、デートの場所が気になったあたしがパタリーに質問する。


 そうすると彼女はあたしの唇に人差し指を差し出して内緒のポーズを取ってきた。きっと、いつもならば、特になんとも思わないだろう。


 しかし、今の溢れんばかりの大人な魅力を醸し出すパタリーだと話が異なる。


 その結果、『セントラル地区』へ到着するまであたしの胸のドキドキが収まることはなかった。


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