交易会談の招待状
不満を言うシンリー達を宥めた後、あたし達は1-A教室へ移動する事となった。
「ご機嫌よう」
「「「「ご機嫌よう」」」」
そして、そのままいつものように挨拶すると、その場にいた大勢のクラスメイトから挨拶が返ってくる。あたしはそんなクラスメイト達に軽く笑顔を振り撒きながら、ジーク達の元へ移動する。
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「よぉ。人気者、私はすごく鼻が高いぞ。『セブンス学園』の人気者の派閥に入れてるんだからな。ポチもそう思うだろう??」
「わんわんっ」
いやー、この男は本当に皮肉ばっかり言うね!!
後、それ『ポチ』じゃなくて『サラ』!!
サラ、お願い。目を覚ましてっ !!
正直、『セブンス学園』の生徒達による手のひら返しも衝撃的な変化だったが、あたしからすれば、親友のサラがいつの間にかジークの『忠犬』に調教されている事が何よりの衝撃的だった。
ただ、目の前のサラが頬を赤く染めながら、満面の笑みを浮かべており、幸せそうなため、あたしはジークに文句を言う事ができない。
「よしよし、いい子だ」
「くぅーん……」
「サラお嬢様ぁぁぁぁぁ…!!」
そして、元気よく鳴いたサラに、飼い犬を褒めるかのように、ジークは彼女の頭を撫でている。
そんなサラの後ろでは、ウィスが涙を溢しながら、彼女の名前を呼んでいた。
「ジークとポ…じゃなくてサラに、これを渡そうと思ってたの」
「ディア、今、『犬』と言いそうになりましたわね?いいですか??わたくしのことを『犬扱い』していいのは、ジーク様だけですから!!」
「サラお嬢様ぁぁぁぁ…」
もちろん、あたしは、わざと言い間違えたのではないっっ!!本当に『ポチ』と『サラ』の区別がつかなくなる時があるのだっ!!信じて欲しいっ!!
「ディアとわたくしは『親友』、そこに主従は……あれ、でも、ジーク様よりディアって上ですわよね??それならば、『犬扱い』も………」
「わー、ごめんごめん!!あたしとサラは親友だよ!!ズッ友だよ!!」
なぜか、サラが血迷った事を言いそうになっため、全力で誤魔化す事にした。
「それで人気者、私とポチに渡す物とは??」
「あぁ…うん。今日が最後の日だからね。ベルンルック家からの交易会談の招待状とクッキー」
実は、今日、午後の講義で行われるのは『セブンス学園』の『実技試験』である。この『実技試験』を越えれば『特別休暇』が待っているのだ。
ちなみに、『セブンス学園』の1回目の『実技試験の課題』は1つ以上の魔法の発現である。
そのため、初めからサラ以外はクリアしていたのだが、彼女も『風属性』だと判明しており、魔法も使いこなせるようになっていた。
「『セブンス学園』の人気者から、私にラブレターとクッキーとな??」
「……そんなこと言うから、嫌われるのよ」
あたしは、ジークに薔薇のボタンで留めてある黒色のの招待状とクッキーを渡す。その直後、意図的に、彼は大きな声でみんなへ自慢した。
そんなジークにあたしは、ジト目を送る。
「でも、ディア、私がいることで『魔除け』になってるだろう?」
「全て分かってるから余計にムカつくのっ!!」
ジークの言う通り、彼がヒールに徹してくれるおかげであたしに近づいても、ベルンルック派閥へ、積極的に入ろうとする生徒は少ない。
「なに、気にする事はない。お前は私達のリーダーだ。難しい事は私に任せておけ」
「そうやって余裕ぶってる所よ!!いつかギャフンって言わせてやるんだからっっ!!」
あたしが感情的になってるのに、大人な対応するジークへ地団駄を踏む。なぜか、こいつの前ではいつも、あたしは子供っぽくなってしまう。
「私の居場所が見つかった。それだけで充分さ」
「小さな声でまたあたしの悪口!?」
そんな子供っぽく反論したあたしをみて、小さな声でまたもや文句を言われたような気がする。
だから、ジークへ抗議をすると、優しい笑顔を浮かべた彼から頭を撫でられてしまった。
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「サラにもこれ」
「マンドール領の交易はディアとジーク様の言う通りになりましたわ……。今、近づこうとするのは、ディア目的の貴族ばかりでしてよ」
あたしがサラにも渡すと、彼女は目を伏せながら、初めて家の事情を話してくれる。
「サラ、危機的状況ならもっと早くに言ってくれれば…!!交易会談の日程もなんとかしたよ!!」
「いいえ。わたくし達の勝手な都合で、ベルンルック公爵家に合わせてもらう訳にはいきませんの。これはマンドール子爵家の総意ですわ」
そういえば、あたしはジークやサラといつもくだらない雑談をしていたが、彼等の家事情の話を耳にした事がない。しかし、先程の会話でサラが意図的に話さないようにしていた事が判明する。
だから、あたしが彼女へ強めに主張すると、彼女は首を横に振りながら拒絶した。
「それに、ディアの親友になろうとする以上、こんな所で潰れる家ならば、それまででしたわ」
そんなサラにどう言う言葉を掛けるべきかと迷っていた矢先、彼女があたしの方へウィンクしながら、堂々と恐ろしい可能性告げてきた。
「ポチの気持ちはわかるが、ペットの世話は飼い主である私達責任なんだ。次からは気をつけろ」
「わんっ!!」
ジークなりの愛のある説教かぁ……!!
危機的状況なのに、あたしを頼ろうとしなかったサラに説教しなくては……と思っていたら、先にジークが彼女へ説教をした。
「いや、待って。『飼い主である私達』って何!?ちょっと、あたしの方を見なさいよ!!」
そんなジークの説教に感心していると、彼の言葉を思い出し、あたしが彼に抗議する。
そうすると、彼は分が悪いと感じたのか、そっぽを向いた。
「さぁ、今日は特別休暇前の最後の授業の日だぁぁぁぁぁ。落ちたら………分かるなぁぁ!?」
その瞬間、あたしvsジークによる睨み合いの激闘が繰り広げられるものの決着が付かず、途中でヒュートン先生が1年A組の教室に入り、大きな声で挨拶をしたため、試合は引き分けとなった。
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もちろん、『ハルデア皇太子殿下』は3ヶ月経った今も、姿を見せないままだった。
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「…………だから、………となって……なのだぁぁぁぁ。きっと、このクラスの中に、座学よりも実技だと考えている生徒も多いだろうぅぅぅ!!!」
ヒュートン先生は最後の座学の講義を早めに切り上げた後、あたし達の方へ振り返り、多くの生徒が抱きやすい考え方を見透かす。
「魔法を使い始めた生徒は勘違いしやすいが、魔法の戦は『命』を落とす、マンドール子爵嬢の時の事故のようになぁぁぁぁぁぁ」
いつも熱血なヒュートン先生が、ダノン伯爵を見つめながら話す。
ちなみに、『ハルデア皇太子殿下』の取り巻きをしていた『シースール伯爵派閥』や『ダノン伯爵派閥』は『ハルデア皇太子殿下』がいなくなって以降、クラス内の権力を失っていた。
だから、権力を失った彼はヒュートン先生に反論もできず、じっと睨みつけているだけである。
「そして、それを止めれなかった教師の僕もダノン伯爵と同じだぁぁぁ!!みんな、本当に教師として不甲斐なくてすまなかったぁぁぁぁぁぁ」
一方で、ヒュートン先生は、目に涙を滲ませ、拳を全力握り、腰を直角に曲げて、クラスメイトの前にもかかわらず、大きな声で謝罪した。
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「……………マンドール子爵嬢、すまなかった」
その直後、ダノン伯爵もそんなヒュートン先生の真っ直ぐな謝罪に影響されたのか、辛うじて聞き取れる小さな声でサラの方に謝った
「別に構わないわよ。いいえ。むしろ、感謝していますわ。だって『親友』に会えたんですもの」
「ちょっと…!!サラ!?流石に、授業中は恥ずかしいって…!!」
「ディア様へ抱きつく行為は、いくらサラ様でも、許しません!!」
謝罪を受けたサラはあたしの肩に抱きついて、授業中にもかかわらず、1-Aのクラスメイトが注目する中、あたしの事を自慢した。
その数瞬後、アルセラが当たり前のように、授業中もお構い無しにサラへ抗議する。
一方、シンリーの方も声を出さないようにしているもののら後ろから漆黒のオーラを放ち、サラの方へ威圧していた。
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「ゴホンッッ、僕からは以上だぁぁぁぁ。昼休憩後に『魔法演習場』で特別休暇前の実技試験を行うから、遅刻しないようにするんだぞぉぉぉぉ」
その後、見慣れたアルセラvsサラで盛り上がる中、ヒュートン先生が大きな声で咳払いして、授業終了を伝えて、昼休憩を迎える事となった。




