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イースト村1

 ガララララ…


「ゴホンッ…ディア、今から訪れる視察場所は『ベルンルック領』内で農業をメインにしているイースト村という場所だ」

「農業と申しますと小麦ですね!!」

「ああ、パンの材料はもちろん、様々な用途がある。私達は公爵家だから広大な土地を所有している。だから、力を入れている産業の1つなんだ」


 農業をする上でアドバンテージになるのが土地の広さは言うまでもない。だから、ディブロお父様の言葉へ縦にこくりと頷く。


 それにしても、『ベルンルック』公爵家の領地運営なんて、『セブン⭐︎プリンセス』のゲーム内の攻略情報に載っていなかった。だから、ある意味、あたしは貴重な経験を積む事ができている。


「ちなみにディブロお父様の管理している村はイースト村以外にございますの?」

「村ならば、ウェスト村とノース村とサウス村があるな。ウェスト村は水産に力を入れている。ノース村は繊維業、サウス村はワイナリー業だ」

「ちなみにディアお嬢様、私達が住んでる屋敷が『セントラル地区』と呼ばれている場所にあります。つまり、『セントラル地区』は、それぞれの村から見て中央にある場所ですからね」 


 シンリーとディブロお父様の話を整理すると、『ベルンルック公爵家』は『セントラル地区』を中心に4つの村に加えて4つの名産を持っていることとなる。同時に、『公爵家』だから成せる盤石な経営基盤だと思った。


 そして、あたし達が今から訪れるのは『イースト村』と呼ばれる場所らしい。


 あたしが『セブンス学園』で失敗したら、家族だけでなく、関係のない領民まで巻き込むかもしれない、そう考えると怖気付いてしまう。


「いつもより馬車の揺れが少ないな…。それに護衛の兵士もやる気満々だ」

「旦那様、もしかしてですが、ディアお嬢様のおかげかもしれませんね。ディアお嬢様は馬にも感謝を伝えてましたからね」

「感謝………か」

「シンリー、もう大袈裟だよー!!」


 その後も『イースト村』へ出発する馬車内で軽く雑談に華を咲かせていると、いつの間にかイースト村の門の入り口へ到着していたらしい。


「これはこれはベルンルック公爵様、ささ、何もない村ですが、中へお入りくだされ…」

「そうさせてもらおうか」


 イースト村へ到着すると、あたし達の前に周囲を若い男達に護衛されながら、白髪の髭が、今にも地面へ届きそうになるくらい伸びきったおじいちゃんの一向が現れた。


「……それでベルンルック公爵様、その娘は?」

「イースト村の村長、お初にお目にかかります。あたしはベルンルック公爵家長女、ディア•ベルンルックです。以後お見知り置きを」

「わしの名前はゾルと申しまして、この村の村長ですじゃ。それにしても、噂の『理不尽の権化』とは随分異なる佇まいで、驚きましたのじゃ」

「………色々ありましてな」


 あたしの悪名はイースト村にまで届いてるんだと気付き肩を落とし、挙げ句の果てにディブロお父様が否定しなかったことに傷つき、地面にドレスがつかないよう、小さく座った。


「ディアお嬢様、私は大好きです」

「本当!?シンリー、ありがとう!!」


 ディブロお父様達の言葉にいじけていたら、シンリーがあたしの耳元で魔法の言葉を囁き、それを聞いた瞬間、先程まで傷ついて悩んでいたことが一気にバカらしく思えた。


 その結果、再び、あたしはシンリーのおかげで地面へ立つことができた。


 そうすると、不思議な事にディブロお父様へ腹が立ったので、彼の腰をつねることにした。


「いだだだ」

「ディブロお父様のおたんこなすですわ!!」

「いやぁ、気にしていたとはすまなかったね」


 ディブロお父様の表情を見ると、すぐに、わざと言った事に気付いた。それを知りつつも、怒ってみたら、彼に笑顔で謝られてしまった。


「皆様の仲が大変よろしゅうようで何よりですじや。それでベルンルック公爵様、本日はいかなる用件でこの村へ参られましたのかな?」

「私はいつもの要件だが、ついでに娘のディアが見学したいそうで、小麦の栽培の様子を見せてやってくれないだろうか?」


 ディブロお父様が娘のあたしが『民へ感謝を伝えにきた』と言えば、変になるだろう。だから見学といえば、あたしの年齢を考えれば『勉強の一環』で済むことを見越して誤魔化してくれた。


「お安い御用ですじゃ。ロン、アース、頼めるじゃろうか?」

「ゾル村長が言うなら仕方ねぇ…」

「あははは!!ロン、仕方ないよねー…」


 村長を護衛していた5人の中の内の2人、『ロン』と『アース』と呼ばれた若めの青年達が嫌そうな顔であたし達を先導することとなった。


 そのため、この場でディブロお父様と率いる護衛兵達と別れることとなった。


ーーーー


「なんで俺達が貴族様のおままごとに時間を割かなければならないんだよっ!!」

「あははは!!ロン、気持ちはわかるけど、ベルンルック公爵様にチクられたら面倒だよー」


 あの後、ディブロお父様達と別れることとなり、『ロン』と『アース』とあたしとシンリーで行動することとなった。


 それにしても、彼等が聞こえる範囲であたし達への不満を言ってくるが、ディブロお父様から事前に忠告されていた内容だった。


 だから、あたしは気にしない事にした。


 それに彼等の煽りはあたし達が騒動を起こして何かを狙っている物ではなく、彼等のは単にあたし達の都合で振り回されてる事への苛立ちだ。


 特に青年の頃は起こりやすい反抗期だと思うのであたしは気にならないが、隣を見るとシンリーが不満そうな表情をしていた。


「シンリー、せっかく可愛い顔してるんだから怒っちゃだーめ!!」

「しかし、ディアお嬢様、あの2人、わざと…」

「うん。間違いなくわざとだね」


 シンリーもそのことに気づいてあたしのために怒ってくれている。しかし、『ロン』と『アース』の言動に反応したら『これだから貴族は』と嫌悪感を超えて、反感を買うかもしれない。


 だから、シンリーの腕を組んで微笑みかけて、できるだけ彼女が暴走しないように努めた。

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