次の『祝勝パーティー』と『交易会談』に向けて
2章のエピローグは『祝勝会』です。
3章は『特別休暇編』がメイン舞台で交易会談やディアの3人の告白に対する答えがメイン舞台となります。つまり、ほのぼの百合に戻ります。
「そう言えば、ジークって使用人いないの?」
『セブンス学園』の移動する中、あたしはジークに疑問に思っていたことを話す。
「もちろん、いるぞ。ただ、基本的には、私以外の生徒の情報収集をさせているからな」
「へぇ……それは随分情報熱心な………」
「ディア、情報を侮るなよ…」
「そ、それはどういう意味かな…」
さっき、ジークのレンズが光った…………?それはまずい……!!眼鏡キャラの覚醒する時は大抵レンズが光るんだ。にげなければ……!!
あたしが他人事のように返事をすると、ジークがジト目を送ってきた。
その瞬間、彼が掛けている眼鏡のレンズが光って見えたような気がして、心の中で焦りを感じたあたしがその場から逃げようとした時だった。
「今から情報の大切さを教えてやる。まずは、そうだな……。屋上で恋愛脳のお花畑共と楽しんだ『間接キス』は楽しかったか??」
「ゴフォ!?」
「他にもあるぞ。『魔王』を名乗って、恋愛脳のお花畑共は『勇者』と『魔女』だったか?」
「グファッ」
逃げ出そうとするあたしを逃がさないと言わんばかりに、ジークが言葉を巧みに用いて、あたしのメンタルにナイフや槍を刺してくる。
チラリと、隣のシンリー達の方へ視線を移すと彼女達の中でも『魔王ごっこ』は『黒歴史』となっていたようで、ダメージに苦しんでいた。
「これで分かったか??情報を舐めてはならない。そして、私自身も情報のおかげで、ディアを信じることができたのだからな」
「たった、今、傷口に大量の塩を掛けられたおかげで、身をもって体感したよ……」
彼の情報により、瀕死の状態に陥ったあたしは、ジト目と恨み言をジークへ放つ。
「サラお嬢様、やはり、シュミレット辺境伯に逆らってはいけません」
「ええ。わたくしの『犬』になる選択肢は間違えておりませんでしたの」
「いや、『犬』まで引き下がらなくていいです」
「いいえ。わたくしは『犬』がいいですわ。叶うならば、ポメ◯ニアン希望ですわ」
あたし達が、ジークの情報テロにより、メンタルが爆発させられる中、サラとウィスの方でも、意味のわからないやりとりが続く事となった。
ーーーー
現場がこんな風に混沌化しても、あたし達が歩みを止めなかった結果、気づいた時には、『セブンス学園』の校門付近へ到着していた。
ーーーー
「そう言えば、ジークとサラは寮だよね??」
「そうだな」
「ええ。そうですわ」
「あたし達の都合で見送ってもらってごめんね」
あたしは『セブンス学園』の校門付近に到着した瞬間、ジークとサラが『セブンス学園』の各寮で暮らしていたことを思い出した。
「別に、ついでだから構わない」
「わたくしはディアの友達ですから、これくらい当然ですわ」
「ベルンルック公爵嬢様、お元気で」
「3人とも、ありがとう。また明日ね!!」
相変わらずのジークとサラとウィスに感謝と別れを伝えた後、あたしはロンとアースの馬車を発見したため、まずは馬車の前の方へ移動する。
ーーーー
馬車の前方へ移動して、あたしとアルセラは『ホープ』と『サクセス』へ挨拶をした。
そして、彼らが満足するまで、頭や首筋やタテガミを撫でた後、ロンとアースが待つ馬車の方へ乗り込んだ。
「ディアお嬢様にしては時間通りだな」
「あははは!!確かに、珍しいねー」
「もうっ、2人とも、その言い方だとあたしがずっと遅いみたいじゃない…!!」
馬車の中へ乗り込むと、ロンとアースに揶揄われたので、あたしは、抗議をする。
「ロン、アース、残念だったねー!!」
「ええ。ディア様の勇姿を拝めないとは……」
「シンリー隊長、話が読めないな。また、ディアお嬢様が『セブンス学園』で何かしたのか??」
「あははは!!僕も気になるー!!」
その直後、謎にシンリーとアルセラが『決闘』の出来事をもったいぶり始めた。
一方でロンとアースはシンリー達の話に興味を抱いており、2人に話すよう頼んでいる。
「私も鬼ではありません。これは幸せのお裾分けとして、私が見たありのままを共有しましょう」
「流石、シンリー隊長!!太っ腹!!」
「あははは!!流石ですー!!」
「今日、ディアお嬢様は悩みの種だった王子と決闘をして…………………………だから………そんな時に………………で…………勝利したんです」
その結果、ベルンルックの屋敷に到着するまで、シンリーが意気揚々にロンとアースに『決闘』の話を始めて、アルセラが補足をする。
当然、本人のあたしはたまったものではない。
その結果、馬車の中では、恥ずかしさで悶絶する形となり、あたしはベルンルックの屋敷に到着するまで、耳を塞いで俯くこととなった。
ーーーーー
「「「「「ディアお嬢様、親衛隊の皆様、アルセラ様、おかえりなさいませっ」」」」」
どうやら、あたしが俯き続けてるうちに、ベルンルックの屋敷へ到着したらしい。
塞いでいた耳を解除すると、いつも通りのメイドの出迎えの声が聞こえてきた。
そのため、あたし達はメイド達へ、軽くお辞儀をしながら、エントランスに移動する。
「ディア、それにみんなもおかえり」
「ディアちゃん達、お帰りなさい」
「ディブロお父様、ステラお母様、ただいま………戻り……ま………し……」
馬車の中までは平気だったのに、ディブロお父様とステラお母様の顔を見た瞬間、安心してしまったのか、あたしの視界が霞み始める。
「ディアお嬢様………!!」
「ディア様っっ!!」
結果、あたしはまともに立てなくなり、近くにいたアルセラとシンリーが支えてくれる。
そんなあたしを見て、ディブロお父様もステラお母様も心配そうな表情をしながら、こちらへ駆けつける姿を最後に、あたしは目を瞑った。
ーーーー
「私の目にはディア様が圧勝に見えました」
「アルセラ様、私も同意です」
「……………………でも、倒れたら意味ない」
「「うっ……」」
あたしが目を覚ますと、アルセラとシンリーがパタリーシェフに、何やら言い訳をしていた。
しかし、言い訳をした2人は、パタリーシェフに言い負かされ、肩を落とす。
「んーっと………ごめんなさい。また、あたし、3人に迷惑かけちゃったね…….」
先程の会話を聞こえなかったふりをしつつ、あたしは背伸びをしながら、伝える。
「…………………ディアお嬢様、大丈夫??」
「ん、パタリーシェフにも心配かけちゃったね。でも、大丈夫だから2人を責めないであげて」
あたしは心配そうな表情を浮かべるパタリーシェフにシンリーとアルセラは、悪くない事を伝える。そうすると、彼女はシンリー達に視線を配った後、あたしの方へ、縦にこくりと頷いた、
「ディブロお父様の所へ行かなきゃ…」
「ディアお嬢様、今は安静にした方がいいかと」
「シンリー様の言う通りです」
「…………………絶対にだめ」
あたしが移動しようとするとシンリー達が止めてくる。もちろん、彼女達があたしのことを思ってくれてるのは嬉しい。しかし、あたし自身はディブロお父様に伝えるべき事があった。
ーーーーー
コンコンッッ
「はーい」
「ディア、目覚めたのかい!?」
「ディアちゃん、本当に心配したのよ…!!」
どうしようかと悩んでいた時に、タイミングよくあたしの扉をノックする音が聞こえた。そのため、あたしが返事をすると、ディブロお父様とステラお母様があたしの部屋に入ってきた。
そして、そのままディブロお父様達が、安堵した表情で、あたしの方へ抱きついてくる。
「あはは…。心配をおかけして、ごめんなさい。ちょっと疲れてたみたいです」
「ディア、シンリー達から聞いたよ。『ハルデア皇大使殿下』との『決闘』も含めてね」
ディブロお父様の話を聞いたあたしは、シンリー達へ『よくも、勝手に話したね?』と言わんばかりのジト目を送る。
そうすると、逆に、あたしがシンリー達から『これ以上、心配をかけさせるな』と言わんばかりのジト目で反撃を受ける形となった。
「ディアちゃん、色々言いたい事はあるわ。でも、まずは、おめでとう。今のディアちゃんの表情は憑き物が消えたようにスッキリしているわ」
「そうだね…。少し前までは無理してそうな時が多かったからね。今は眠るといいよ」
あたしとしては無理してるつもりはない。
ひたむきに、『セブン⭐︎プリンセス』の『ディア•ベルンルック』として、みんなを巻き込まないような生き方を心掛けてきたつもりだった。
でも、『決闘』に勝利して、視界が広くなった今だからこそ分かる。
きっと、あたしは『辛い』や『悲しい』と言ったネガティブに直結しそうな感情を無意識のうちに制御していたのだろう。
だから、あたし自身もディブロお父様の言葉に頷きたい所だが、『マンドール子爵家』と『シュミレット辺境伯家』との交易に関する会談の開催に伴う日程調整の報告しなければならかった。
「その、ディブロお父様にお願いが…」
「マンドール子爵家とシュミレット辺境伯家との『交易会談』の事かい?」
だから、ディブロお父様に交易に関する会談について、お願いしようした時だった。
どうやら、既に彼はあたしが頼もうとしていた交易の会談について知っていたらしい。
「ディアが眠っている時に、アルセラとシンリーから聞かせてもらったよ」
「そ、そうなんだ。改めて、アルセラ、シンリー、ありがとう」
「いいえ。これくらいは当然です」
「私は、ディア様の体調の方が心配です」
あたしがシンリー達へ感謝を伝えると、なぜか、アルセラから心配される事となった。
「アルセラ、いつもありがとう。でも、あたしは見ての通り大丈夫!!それと、ディブロお父様、『交易会談』に関する返事はどうでしょうか」
「結論から言えば、『交易会談』を開くのは当家として構わないが、交易の確約はできかねるな。それに加えて、彼らを当家に招く必要がある」
「えっと……」
「ディア、難しく考えなくていい。私達が公爵家だから、来てもらう必要がある。それだけさ」
アルセラに感謝をした後、ディブロお父様の話を聞いて、1回目は困惑してしまった。そのため、返事が覚束なくなってしまう。
しかし、ディブロお父様が更に詳しく説明した事で、あたしでも理解する事ができた。
「つまりね、私たちがディアちゃんにやってもらいたいのは、特別休暇に入る直前に、マンドール子爵家とシュミレット辺境伯家の友達に、当家からの招待状を送って欲しいの」
「分かりました。招待状は私に任せてください」
ステラお母様の補足説明を聞いて、自分のやるべき事を理解して、縦にこくりと頷く。
「最後に近日中、当家で『祝勝パーティー』を開く。無論、各村長にも、声をかけるつもりだ。その『祝勝パーティー』には友達を誘うといい」
「ディアちゃん、『印象』って大事な事よ??それが後々…ううん、賢いディアちゃんなら分かるわね?だから、恥ずかしがらずに招待する事よ」
『誕生日のやり直し』までするベルンルック家があたしの『祝勝パーティー』をしない訳ないと思っていた。ただ、その中に『各村長』と『ジーク』と『サラ』を誘うのは想定外だった。
気が重いと感じつつも、『祝勝パーティー』の参加が、『交易会談』の成功をキーを握っている可能性があるのであれば、誘うしかない。
「ディブロお父様、ステラお母様、かしこまりました。あたしが胸に誇る友人を紹介します!!」
「ディア、楽しみにしているよ。おやすみ」
「ディアちゃん、期待してるわ。お大事にね」
「ええ。ディブロお父様、ステラお母様、お心遣い、ありがとうございました。おやすみなさい」
あたしと寝る前の挨拶をした後、ディブロお父様とステラお母様は退室した。




