『ディア•ベルンルック』vs『ハルデア皇大使殿下』(修正)
すみません。
描写とか不足な部分が多くて、2話に分けて加筆修正させていただきました。
パタンッ
あたしは『セブン⭐︎プリンセス』の世界に転生してから、『闇魔法』の修行を積んできた。
だから、勝利を確信して挑んだ決闘のはずだったのに、いざ、掴み取った勝利に安堵してしまったのだろうか。急に、膝へ力が入らなくなり、魔法演習場でまともに、立てなくなってしまった。
「ディアお嬢様ぁぁぁぁぁぁぁ……!!!」
「ディア様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」
そんなあたしを見たのか、シンリー達があたしの名前を呼びながら、抱きついてきた。
ちなみに、サラとウィスとジークもあたしの方へ向かってきている。
「ディアお嬢様の勇姿、きちんとこの目で、見届けさせていただきましたよ…」
「今日のディア様の姿は、私の歩んできた人生の中で誰よりもかっこよかったです!!」
あぁ……あたし、守れたんだ。きっと、シンリーとアルセラが咲かせる今の笑顔をみるために、この日まで頑張ってきたんだ……。
心の中でそう思ったあたしは、シンリーとアルセラの言葉に返事をせず、持てる力を振り絞って、全力で2人を抱きしめる。
ーーーーー
「ディア、必ず勝つって信じてたわよ…」
「ベルンルック公爵嬢様、お見事な戦いでした」
「ふっ……及第点だな。もう少し、あの『ナルシスト野郎』を絶望に落としてたら、満点だ」
あたしがシンリー達を抱きしめていると、近くに来たサラ、ウィスさん、ジークの順でねぎらいの言葉をあたしに掛けてくれる。
ジークは相変わらずの褒め言葉だったが、それでも、あたしは彼らの言葉が嬉しく思った。
ーーー
最終的にあたし達は、ヒュートン先生から注意されるまで、静寂に包まれた『魔法演習場』の中、『決闘の勝利』を喜び続けた。
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「『ハルデア•セブンス』は、『決闘』に敗北したぁぁぁぁ。そのため、勝者のベルンルック公爵嬢の願いに応える義務があるぅぅぅぅ」
あたしは、足に力が回復した後、ヒュートン先生の指示の元、『ハルデア皇大使殿下』と正面から向き合うこととなった。
そして、ヒュートン先生は『ハルデア皇大使殿下』に日頃の鬱憤が溜まっていたのか、ここぞとばかりに、ハイテンションで説明している。
「分かっているさ。まず、ベルンルック嬢と『魔王の生まれ変わり』とアルセラ嬢の『闇の魔女』が、僕の『推測』だった事を認めよう。そして、これ以降、その呼び名を僕の名の元に禁じる」
「やっぱりそうだったのか」
「わたくし達も薄々、ベルンルック公爵嬢が、そんなはずはないと思ってましたの」
「周りに流されてた奴らがふざけやがって……」
『ハルデア皇大使殿下』の宣言を聞いた瞬間、1-Aのクラスメイト達は『決闘に勝利したあたし側』に分かりやすく、手のひら返しをした。
そんな彼らに『ハルデア皇大使殿下』派が嫌悪感を示している。
ちなみに、張本人である『ハルデア皇大使殿下』はいつも通り、笑みを浮かべていた。
「周囲は気にせずに、続きを……」
でも、あたしにとって、彼らは有象無象であり、そんな彼らの手のひら返しに興味が湧くはずもない。だから、あたしは『ハルデア皇大使殿下』へ宣言の続きをするように、急かした。
「おや、せっかく、僕に勝ったのに、勝利の余韻に浸らなくても良いのかい??」
「ええ。あたしにとって大事な人は、あたしの周りにいる彼等だけですから」
「それは失礼したね。それと、僕からは『ベルンルック派閥』に危害は加えない事を約束するよ」
これで『サラ』や『ジーク』にはベルンルック家の盾も付与されているはずだから、あたしの守りたい人達へ、危害が及ぶ心配はないだろう。
「いくら王族だからと言って……ねぇ??」
「ええ。あんまりだと思ってましたの」
「我々は無力だったのさ……」
あたしが『ハルデア皇大使殿下』の宣言に満足していると、外野のクラスメイト達は、『どの口が言ってんの?』と聞き返したくなるような、都合のいい言葉ばかりを並べていた。
「ベルンルック公爵嬢、これでいいかい??」
「ええ」
アレだけ『1-A』でチヤホヤされていた『ハルデア皇大使殿下』の面影は、あたしの『決闘に敗北した』瞬間から消え失せることとなる。
それでも、『ハルデア皇大使殿下』は笑顔を貼り付けたまま、あたしの方へ尋ねてきたため、彼の質問に肯定する。
「クックックッ……最後にベルンルック公爵嬢、感謝させてもらうよ。君のおかげで、僕は新たな僕に辿り着いた。おかげで、目が覚めたよ」
『ハルデア皇大使殿下』は、まるで『人』が変わったかのように前髪を掻き上げながら、それでも笑顔を貼り付けてあたしに感謝を伝える。
「あたしは『決闘』に勝っただけです」
あたしは『ハルデア皇大使殿下』がした謎の感謝に対して、端的な事実のみで返した後、彼に背を向けて、シンリー達の方へ移動する。
その間も『ハルデア皇大使殿下』にとって何が面白いのか、彼は笑い続けていた。
ーーーーー
「ゴホンッッッッ、今日は、『決闘』があったため、授業の再開が遅れてしまったが、今から始めるとしようじゃないかぁぁぁ」
ヒュートン先生の言葉を皮切りに、午後の魔法の演習の講義が再開となり、クラスメイト達が散らばって各自が魔法の練習を始める。
「そう言えば、サラって魔法できるの?」
「うぐっ……」
「魔法を何個か覚えて試験に合格しなければ、特別休暇の間って補習になるような??」
うる覚えの『セブンス学園』の知識を呟くと、サラが絶望したかのような表情を浮かべる。
「ディア…魔法を教えてくれないかしら?」
「分かったー。えーと、ヒュートン先生が例として挙げてた基礎魔法は覚えてる??」
「ええ…覚えてますわ」
「魔法に関しては、まず、自分に適正な属性を見つけることから探そっか」
あたしはサラの方に説明して、彼女はあたしの言葉にこくりと頷き、練習を始めた。
「ディア様は休んでいてください。私がサラ様をサポートします」
「アルセラ様、私も手伝います!!」
そうすると、『決闘』したばかりのあたしを気遣ってくれたのか、サラの魔法の特訓には、アルセラとシンリーが付き添うこととなった。
ーーーー
「ディア、私には魔法の事を聞かないのか?」
あたしはそんな3人の様子を遠くで眺めているとジークがあたしの近くに来て質問をした。
「ジークは『水魔法』を使えるでしょ?」
「………なるほど。馬鹿ではなかったか」
もちろん、あたしは前世の『セブン⭐︎プリンセス』の攻略知識により、既にジークが『水属性の魔法』を使えることを知っている。だから、あたしの保有する知識をそのまま彼に伝えた。
そうすると、相変わらずの毒舌っぷりで、イラっとするが、反応しないようにする。
「話を変えるけど、ジーク、正直に『ハルデア皇大使殿下』の感謝について、どう思った??」
「…………正直に話せば、奴の思考が読めなかった。アレは『絶望』でも『復讐』でもない。なにか、もっと『別のナニカ』な気がする」
ジークが、眼鏡をクイッとあげながら、彼にしては珍しく、曖昧な返事をする。そして、そんな彼の意見に、あたし自身も同意した。
もちろん、これはあたしの直感だが、『ハルデア皇大使殿下』とは、これで終わりではなく、また衝突する、なんとなく、そんな気がする。
しかし、この場で解決できる問題ではないため、あたしはこの話から切り替える事を選んだ。
ーーーーー
「あたしやアルセラの噂はどうなるかな…」
シンリー達の楽しそうな様子を眺めて、自分の心の中で不安に思っていた事を隣にいるジークにだけ聞こえるような小さな声でつぶやいた。
今回の決闘で『ハルデア皇大使殿下』の口から『撤回』等の条件を引き出したが、他のクラスメイトからすれば、あたし達がどう見えるのかという事が新たな悩みの種になった。
そのため、あたしはジークに頼る事を選ぶ。
「愚問だな。それは明日以降の『ディア•ベルンルック』と『アルセラ』が決める事だ」
「え?」
「今の『ディア』と『アルセラ』はグレーに映るだろう。それを白に染めるのも黒に染めるのも、未来のディア達の行動以外あるのか??」
「ジーク、確かに、これはあたしの愚問だったね。ありがとう」
あたしはジークなりの不器用な優しさに気づいて、彼へ感謝を告げる。そうすると、ジークが、なぜか、あたしの方からそっぽを向いた。
「なんで、あたしの顔から逃げるの??」
「………………なんでもない」
「変なジーク……」
「………………黙るがいい」
だから、あたしがジークの顔を覗き込もうとすると、頑なに、彼はあたしを避けようとした。
そのため、あたしがジト目を送りながら文句を言うと、いつもの無愛想な言葉が飛んできた。
「これで今日の午後の魔法演習を終了とする。速やかに、退出するのだぞぉぉぉ」
ジークとそんなやりとりをしているうちに、タイミングよく、ヒュートン先生が午後の『魔法演習』に終わりを告げる。
彼の声を聞いたクラスメイト達は、続々と『魔法演習場』から退室していった。
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「あたし達も退室しよっか」
ヒュートン先生の言葉を聞いたのか、あたしの周りに、『ベルンルック派閥』の全員が集まってきたため、みんなに移動を提案する。
そんなあたしの提案に彼らが頷くのを確認した後、あたし達は『魔法演習場』から退室して、『セブンス学園』の校門付近へ移動した。




