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『ディア•ベルンルック』の覚悟

 あたし達は屋上から降りて、『魔法演習場』の方へ移動する。そして、あたし達が『魔法演習場』へ到着する頃は、あたし達以外の『1-A』のクラスメイトやヒュートン先生も集まっていた。


ーーーー


 今は周囲のことなんてどうでもいい。あたしは、ひたすら、真っ直ぐに『ハルデア皇大使殿下』の方へまっすぐ歩いていく。


「『魔王の生まれ変わり』のくせに、のうのうと何をしにきたのかしら?」

「殿下の顔を泥になった『反王家』が……」


 もちろん、『ハルデア皇大使殿下』の周囲には、彼の腰巾着のように、『シースール伯爵』の派閥や『ダノン伯爵』の派閥がいて、彼らがあたしに対して、好き放題に言っている。


「『ハルデア皇大使殿下』の取り巻きさん、これ以降の侮蔑の発言は『ベルンルック公爵家の敵』とみなして厳正に処理させて貰いますね」


 きっと、あたしが無抵抗だったからだろうか……。彼らはあたしの言葉を聞いた瞬間、一瞬のうちに黙り込む。そして、静かになった『魔法演習場』をゆっくりとあたしは歩いていく、


「『ディア•ベルンルック』は『ハルデア皇太子殿下』へ『決闘』を挑みます」


 そして、『ハルデア皇大使殿下』の目の前に立った後、大きな声で、彼に『決闘』を申し込む。


 あたしの『決闘の申し出』が聞こえたのか、先ほどまで静寂に包まれていた『魔法演習場』が再び、騒々しくなった。

 

「おやおや、僕へ挑むなんて正気かい?」

「ええ、正気ですわ」


『ハルデア皇大使殿下』は決闘に乗り気ではないのか、肩を竦めて、あたしを挑発する。


「おや、是非、私は『見学』させていただきたいです。特に『ハルデア皇大使殿下』は『紅蓮の王子』とも呼ばれる逸材、皆も興味あるだろう?」


 てっきり、『ハルデア皇大使殿下』は決闘に乗ると思っていた故に、想定外の反応で、言葉が詰まりそうになった。そんな時、ジークがあたしと『ハルデア皇大使殿下』の間に入り、上手にクラスメイトへ大きな声で演説を行い、焚き付ける。


 当然、関与しないクラスメイトにとって、『決闘』は遊戯の位置付けに近い、そのため、ジークの言葉に、大盛り上がりすることとなった。

 

「『決闘』になれば、立ち会い人になるであろうヒュートン先生の意見も聞いてみるとしようか」


 更に、ジークはヒュートン先生にも、目配せをして、手回しをさせており、確実に『ハルデア皇大使殿下』の逃げ道を塞いでいく。


「そうだなぁぁぁ。少し早い気もするが、いいかもしれないなぁぁぁ!!」

「わたくしもみてみたかったんですの!!」

「そ、そうだな…見てみたいかもしれないわ」

「『紅蓮の王子』、みせてくれーっっ」


 そして、ジークの意図を察したヒュートン先生が大きな声で同調した事を機に、1-Aのクラスメイトの盛り上がりはピークを迎えた。


ーーー


「ふふっ、そうですか。シュミレット辺境伯は『そっち側』に着く気ですか…残念です」

「なんのことやら……分かりませんね」

「しかし、聡明なあなたが、こんな無謀な策を講じるなんて、解せませんね」

「無謀?この私が認めた『リーダー』だぞ??お前如きに遅れを取るわけないだろ」


 本当に、ツンデレなんだから……

 でも、ジーク、ありがとう。

 この世界でも、やっぱり、かっこいいよ…。


『ハルデア皇大使殿下』と『ジーク』の口上戦が終わると、ジークが『舞台は整えた、後は任せた』と言わんばかりに、あたしの肩に自分の手を置いた後、後ろへと移動する。


「そろそろ、『ハルデア皇大使殿下』、あたしの『決闘』の返事をお聞かせ願えるかしら??」

「やれやれ、この場を強制的にそう言う雰囲気にさせておいて、よく言えたものだ。どのみち武力衝突は避けられないだろうし、いいだろう」

「それならば、立会人は、この僕が務めさせてもらおうかぁぁ。後、2人とも『セブンス学園』の『決闘』のルールを知ってるだろうかぁぁ?」


 あたしは前世で『セブン⭐︎プリンセス』の攻略知識があるため、縦にこくりと頷き、目の前の『ハルデア皇大使殿下』も縦にこくりと頷いた。


「それではベルンルック嬢、勝った時に何を求めるか、この場で宣言してくれぇぇぇぇ」


『セブンス学園』の『決闘』イベントは大抵、権力が下の方が『チャレンジャー』として、先に『自分の願い』をベットする必要がある。


 だから、あたしは、宣言する前に、胸に手を当てて、深呼吸をする。


「『魔王の生まれ変わり』と『闇の魔女』の不名誉の撤回及び禁止、彼の『ベルンルック公爵派閥』に対する危害の禁止及び不干渉を求めます」


 そして、深呼吸をした後、あたしは自分の願いを宣言した。


 もし、『決闘』に勝てたとしても、これまでの噂が完全に消えるのかと言えば、消えない。


 でも、『ハルデア皇大使殿下』の自らが撤回と禁止をした場合、それ相応の効力が生じると考え、『決闘』の内容をこれに選択した。


「ふっ……僕は、とても優しいから、その内容を認めようじゃないか」

「それでは、次にハルデア皇大使殿下が勝った時に何を求めるか、この場で宣言してくれぇぇぇ」

「『ディア-•ベルンルック』の全てをもらおうか。そうだな。負けた時点で『婚姻』の儀を執り行い、その場で僕の『正妻』にしてあげよう」


『ハルデア皇大使殿下』の発した条件を聞いて、反吐が出そうになるのを我慢する。ここで、取り乱していたら、勝機を溢すだけだ。そのため、あたしは再び、大きく深呼吸をした。


「ハルデア皇大使殿下って、『魔王の生まれ変わり』が好きなのかしら?」

「きっと、見せしめだと思うわ」

「でも、『正妻』ってな…」

「殿下の血走った目を見てみろ、ありゃ、婚約を断られたことを根に持ってるぜ」


 ちなみに、あたしが深呼吸をしている間に、周囲のクラスメイト達は、『ハルデア皇大使殿下』の出した条件について、様々な噂をしていた。


 しかし、今のあたしにとってはそんな噂が耳に入るはずもない。


「分かりました。その条件を飲みます」

「それでは、『決闘』が成立した事を、僕が保証しようじゃないかぁぁぁぁ。勝敗は『降参』か『気絶』で決するからなぁぁぁ!!」


 ヒュートン先生の『決闘の成立』の宣言を皮切りに、1-Aのクラスメイト達は、自分の使用人達が控えている端の方へ移動した。


 どうやら、他のクラスメイト達は、興味本位に、あたしと『ハルデア皇大使殿下』のために、戦闘スペースを大きく開けてくれるようだった。

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