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感謝の力

「ディア、シンリー、外へ出る身支度をしてきなさい。領地の視察をするんだろう?」

「旦那様、すぐにして参ります」

「ディブロお父様、ありがとうございます」

「私はその間に馬車の準備をしておくから」


 領地視察のために、あたしはシンリーに案内され、3Fにある外出用の広々としたドレスルームで着替えることとなった。


「ディアお嬢様ならどんな色もいいですが、青色はいかがでしょうか?」

「シンリーが選ぶなら、間違い無いね!!」


 シンリーが選んでくれた青色のドレスへ着替えることなり、身支度を終える。


 最後の身支度チェックとして、ドレスルームにある全身鏡で自分の顔を見る機会があった。


 白色のリボン型のカチューシャ、青色のドレス、金色の髪のロングヘアー、青色の瞳、紛れもなく『セブン⭐︎プリンセス』で何度も見てきた『ディア•ベルンルック』だった。外見は完璧な美少女なのだが、憂鬱である。


「シンリーは、メイド服の格好でいくの?」

「ええ。私のようなメイドが主人に付き従って同行する事は珍しくありませんから」

「ちぇ…いつものシンリーも可愛いけど、オシャレをしたシンリーを見たかったなぁ」


 桜色の髪をしたポニーテールの小柄な女の子がおしゃれをしたら、どうなるか?そんなの、答えは簡単、最強に決まっているのだ。


「その……ディアお嬢様がどうしてもと言うなら、またの機会にお見せしま……す」

「え?本当?絶対だよ?あたしが死ぬまでにね」

「ディアお嬢様は死なせませんし死にません。そんな悲しいこと言わないでください!!」


 あたしの運命は『セブン⭐︎プリンセス』物語の既定路線上、もう決まっていて、覆すのは難しいと思う。それでも、ダメダメなあたしにそんな嬉しいことを言ってくれるシンリーと共にこの先何十年も歩みたいって心の底から願ってしまった。


ーーーー


「ディブロお父様、お待たせ致しました」

「ディア、よく似合っている」


 シンリーの案内とともに3Fのドレスルームから退室して1Fへ降りて、屋敷を出ると、ディブロお父様が声をかけてくれた。


 周囲を確認すると元気そうな赤茶色の馬2頭と黒塗りの大きな馬車があたしの前に停まっている。そして、馬車にはディブロお父様、その付近には鎧を着たディブロお父様を守る護衛の兵士達が隊列を組んで待っていた。


「お馬さん達、いつもディブロお父様を運んでくれてありがとう、今日はあたしもよろしくね?」

「「ヒヒーーン」」


 まずは、お馬さん達に伝わるかは別として挨拶と感謝を伝えるため、前方の方へいるお馬さんの方へ移動して感謝を伝える。あたしの感謝が伝わったのか、大きな声でお馬さん達が鳴いた。


「おい、あれ…途端に馬達がやる気出したぞ」

「嘘だろ。あの2頭、いつもやるきないのに」 

「そんなのあり得ねえって」


 護衛の方々から変な声が聞こえたが、それは気にしないことにした。馬の様子を確認した後、ディブロお父様がいる馬車付近へと向かう。


「それでは、ディアとシンリーはこっちへ、周囲の護衛を固めろ」

「「「「「「はっ、ベルンルック公爵様!!」」」」」」

「皆様、いつも当家のために身体を張り守ってくれてありがとうございます!!信じてますから!!」


 ディブロお父様が大きな声で命令を出し、彼が出した命令に対して、同じように大きな声を出して遂行する兵士達の様子を眺めていた。


 その様子を見て、同時にこう思った。例えそれが仕事でも彼等のおかげで、あたしはここまで生きることができたんだと実感できた。


 だから、あたしもディブロお父様や護衛の兵士の方々に負けないくらいの大きな声で、彼等に感謝を伝えることにした。

 

「うおおおお!!燃えてきたぁぁぁぁ」

「最優先護衛対象はディアお嬢様ぁぁぁぁ」

「絶対に死んでもディアお嬢様だけは守るぞお」

「あの方だけは死なせるなぁぁぁぁ」


 あたしが感謝を送ったのが原因かわからないけど、周囲にいる護衛兵達の方々のやる気が漲ってくれたようで何よりだった。


 ディブロお父様が、大きく肩を落としてしょぼんと落ち込んでいたが、気にしないことにした。


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