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『ディアの成長』と『母』と『感謝』

 「それでは本題に入るとして、ディアお嬢様、『セブンス学園』の学園生活はどうじゃ?」


 あたしはゾル村長の言葉を聞いて、咄嗟にディブロお父様とステラお母様の方を見る。


「ディア、話すといいさ」

「色んな見方があると思うわ」


 正直に『セブンス学園』の出来事を話していいか分からなかったため、ディブロお父様とステラお母様に視線で意見を求めた結果、2人から許可をもらえたため、話すことにした。


「ゾル村長、あたしは闇魔法を使えたり、昔の異名が原因で『ハルデア皇大使殿下』から『魔王の生まれ変わり』って言われていじめられてるの」

「『ベルンルック公爵様』、『セブンス王国』と戦争じゃな?わしらは喜んで力を貸すのじゃ」


 えぇぇ!?

 どう言うことっ!?


 てっきり、ゾル村長は、あたしの話に親身になって聞いてくれるかと思っていた。


 しかし、あたしの予想に反して、ゾル村長はいつもの優しいおじいちゃんの声ではなく、低いダンディ声でディブロお父様に尋ねている。


「ああっ、実は私も迷っていたんだ。この世界で1番可愛い私の愛娘の名誉を踏み躙る。それは『国』が敵という証明だと思うだろう?」

「そうですじゃ!!そうですじゃ!!」

「ったく、誰でもない。ディアお嬢様のためだ。こうなりゃ、やるしかねぇなぁ!!」

「あはははは!!僕達もディアお嬢様のためならば、喜んで戦うよー」


 そして、ゾル村長の言葉に、満面の笑顔で戦争を示唆するディブロお父様だけでなく、ロンやアースまで、やる気満々になり立ち上がる。


 ゴンッッ 

 ゴンッッ 

 ゴンッッ 

 ゴンッッ


「全く、4人共感情になりすぎですわ。犠牲の出る戦争ではなく、暗殺くらいにしときなさい。さぁ、ディアちゃん、暗殺作戦を練りましょう?」

「「「「(あははは)確かに(じゃ)」」」」


 ステラお母様が拳骨をして、4人の血が上り過ぎた頭を冷やしてくれた、と信じていた。それなのにもかかわらず、彼女は戦争よりも、更に陰湿な策を講じようとあたしを誘ってきたのだ。


「みんな、本当にあたしの事を思ってくれてありがとう!!!でも、これはあたしの問題です!!あたしが解決しますから、動かないでくださいね!!」

「ディアお嬢様、それは違いますよね?」

「ええ。シンリー様の言う通りですね?」


 このまま行くとまずいと思ったあたしは、ディブロお父様達が下手に動かないよう、大きな声で彼等へ頼み込む。そうすると、今度は、シンリーとアルセラが、あたしに訂正を求めてきた。


 どう言うことだろうと首を傾げていると、昨夜の事を思い出す。それと同時に、あたしはシンリー達が言いたいことを理解したため、彼女達の表情を見ながら、こくりと縦に頷いた。


「すーっ…訂正します!!!あたし達の生徒同士の問題です。だから、あたし達で解決します!!」

「ディア……成長したんだね」


 そして、深呼吸をした後に、あたしがそう宣言すると、ディブロお父様から頭を撫でられる。


「も、もうっ…ディブロお父様、子供扱いしないでくださいっっ!!」


 なぜか、ディブロお父様に撫でられると、恥ずかしさで中々素直になれずに反抗してしまう。


 ただ、あたし達の宣言により、『戦争』や『暗殺』といった危険な行動はなくなる事となった。


ーーーーー


「それならば、『ベルンルックの女神様』、覚えて欲しい事がありますじゃ。それは、『イースト村』が誰よりも、味方だという事ですじゃ」

「ゾル村長、本当にありがとうございます!!」

「ルキナもみかたー!!」

「ルキナちゃんもありがとうねー」


 ゾル村長の言葉に感謝の返事をすると、眠っていたルキナちゃんが目を覚ましたらしく、そのまま、ゾル村長の言葉に同調していた。だから、あたしは彼女にも、感謝を伝える。


「………………ディアお嬢様、作った」

「これは………!!クレープ!!」

「わぁ……おいしそー!!」


 その後、ゾル村長とルキナちゃんとの話が終わったタイミングで、パタリーシェフがあたし達の部屋へスイーツを持って、戻ってきた。


 どうやら、彼女は人数分のバターシュガークレープを作ってくれていたようだ。


「ルキナちゃん、あーん」

「あーん…」


 そのため、早速、あたしはルキナちゃんの分を取り分け、彼女を優先に食べさせてあげる。


「ルキナは普段、人見知りする子ですじゃ…。それなのに、こんなにも懐くとは…」

「そういや、ここまで楽しそうにするルキナを見た事なかったな」

「あははは、ロンの言う通りだねー」


 ゾル村長はルキナちゃんとあたしを見て、驚いている。いつもの如く、大袈裟だなぁと思っていると、ロンやアースから見ても、ルキナちゃんが楽しんでいるのは珍しかったらしい。


 だから、あたしはクレープを口へ頬張るルキナちゃんの方を改めて、見つめる。


「ルキナを見つめてどうしたのー?」

「ううん、ルキナちゃんはとっても可愛くて、いい子だなって見惚れてたの」

「ルキナ、いいこー?」

「うん。いい子だよー。ほら、次のあーん」


 そして、ルキナちゃんの髪を撫で終えた後、同じように、一口サイズのクレープを運んでいく。


 そうすると、ルキナちゃんの分が終えたので、彼女をゾル村長へ返そうとした。しかし、困った事に彼女はあたしから一向に離れようとしない。


「やー…!!」

「あ、あはは…!!」

「重ね重ね、ベルンルックの女神様、孫のルキナが申し訳ございませんですじゃ」

「ゾル村長、気にしないでください!!」


 ゾル村長が申し訳なさそうにしているが、あたしからすれば、周囲は同年齢か年上ばかりのため、小さな子の相手は新鮮である。だから、ルキナちゃんに懐かれても、嫌な気はしなかった。


「あ、あの、ディア様、私、クレープの食べ方が分からないんです。だから、私にも『あーん』をして、食べさせてください!!」

「アルセラまで?仕方ないなぁ。ほら、あーん」

「あーん」


 そうすると、アルセラがわざわざあたしの方へ移動して、『あーん』のおねだりをしてきた。


 当然、断る理由もなかったため、あたしは、アルセラにもクレープを口へと運ぶ。


「アルセラ様だけずるいです!!」

「…………………僕も!!」


 アルセラに『あーん』をするとシンリーとパタリーシェフも登場する。その結果、なぜか、あたしは、自分より年上のはずの2人にまで、クレープを『あーん』することとなった。


ーーーーーー


「ディアちゃん、あーん」

「ス、ステラお母様!?あたしは自分でっっ」

「ディアちゃん、あーん」

「は、はい。あーん…」


 4人分の『あーん』を終えた後、自分の分を食べようとした時だった。ステラお母様があたしの口へクレープを運ぼうとしたのだ。


 最初こそ、両手を前に出して、拒もうとしたものの、ステラお母様の笑顔の圧力に負けたあたしは、2度目であーんを受ける。


ーーーー


 あぁ……お母さんに食べさせてもらうって、こんなにも心が暖まって、安心感を覚えるんだ。


 そう思うのと同時に、前世のあたしにも、こんな風に愛が注がれていたら、と思ってしまう。


 ステラお母様に食べさせてもらった時間は、ほんの一瞬だった。それなのに、この時のあたしは一時の恥ずかしさよりも、いつまでもこの時間が続いて欲しい……心の底からそう願った。


ーーーー


「ディアお嬢様……そんなに奥方様が好きなんですか??もしかして、そう言う事ですか??」

「ディア様、いつも、恥ずかしがってるのに、今日はすごーく甘えてました…」

「………………………可愛かったけど妬く」

「ち、ちがっ……!!」


 ステラお母様へ甘え終えた後、あたしを待っていたのはシンリー達の頬を膨らませた姿だった。


 確かに、いつものあたしなら、恥ずかしがっていたと思う。しかし、先ほどは、前世のことを思い出してしまい、感銘に浸っていただけだ!!


 だから、ステラお母様に甘えてしまったが、もちろん、邪な考えはしていない!!だから、あたしはシンリー達に、全力で否定しようとした。


「ディアちゃん、私は歓迎するわよ?」

「ディア、分かってると思うけど……」


 それなのに、あたしが否定しようとした瞬間、ふざけたステラお母様が笑顔と共に、あたしに謎のオッケーを出す。その結果、ディブロお父様があたしへジト目と物凄い圧力を掛けてきた。


「あ、あたしは知りませんっっ!!」


 色んな意味でとばっちりと誤解を受けた結果、あたしは、ほとぼりが冷めるまで、顔を両手で覆い、その場で蹲る事にした。


ーーーー


「ゾル村長、そろそろウェスト村に行こうと思います」

「それは少し寂しいですじゃ」

「えー、いっちゃうのー?」


 先程、負った傷が癒えたあたしは、ゾル村長とルキナちゃんへ挨拶をした。そうすると、ルキナちゃんが寂しそうな表情を浮かべていたので、あたしは彼女の近くに移動して、腰を下げる。


「ルキナちゃんがゾル村長の言うこと聞いて、いい子にしてたら、戻ってくるからね」

「……ほんとう?」

「本当だよー」

 

 あたしは、ルキナちゃんのサラサラな髪を撫でながら、彼女へ伝える。


「じゃ…ルキナにうそついたら、けっこんね」

「えー…うん。分かった。約束ね?」


 あたしは心の中で『ルキナちゃんは3歳だ、幼稚園の時に結婚の約束するのと変わらない』と呟きながら、ルキナちゃんへ了承する。

 

「今回は愛娘が世話になったよ」

「『ベルンルックの女神』様ならば、わしらはどんな時でも歓迎しますじゃ。ロン、アース、『イースト村』の代表として『ベルンルックの女神様』の護衛を任せるのじゃ」

「おうっ!!」

「あはは!!任されましたー!!」


 ディブロお父様がゾル村長に感謝を伝えると、彼は嬉しそうに笑いながら、返答した。


 それに釣られるかのように、ロンとアースもゾル村長の頼みに、元気よく返事をする。


 そして、みんなが馬車の方へ移動する中、あたしはイースト村に1人で立ち止まった。


 もちろん、シンリー達には事情を伝えて、了承をもらっている。


ーーーーー


 今から、あたしが1人でしようとしてることは、ゾル村長とルキナちゃんに向けた感謝である。しかし、『イースト村』の方々があたしの存在に気づいたのか、続々とあたしとゾル村長とルキナちゃんが立つ近辺へ集まってきた。


 だから、あたしは深呼吸をして落ち着いた後、人が集まらなくなるまで待つことにする。


「ゾル村長、ルキナちゃん、イースト村の方々、本当に今日はありがとうございましたっ!!」


 そして、イースト村の方々が一通り集まった時点で、あたしは大きな声で感謝を伝えた。


 パチパチパチパチパチパチパチパチッッ

 パチパチパチパチパチパチパチパチッッ


 そうすると、以前に訪れた時以上の大きな拍手が湧き起こる事となる。


「ベルンルックの女神様!!また、一緒に小麦の脱穀作業できるの楽しみにしてるべっ!!」

「ベルンルックの女神様、今度は、窯で焼いたパンを食べましょうっ!!」

「ベルンルックの女神様、『イースト村』はあなた様のためなんら、命も賭けるだっ!!」


 その後、『イースト村』の方々から色んな言葉をいただくこととなり、あたしは『イースト村』の方々へ手を振って、対応する。


 そして、最後に彼等へお辞儀をした後、ロン達が待つ馬車に乗り込み、あたし達は『イースト村』を出て『ウェスト村』へ向かった。


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