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イースト村2/ベルンルックの女神様?

 現在、イースト村へ向かう馬車の中であたしはパタリーシェフの膝の上に乗りつつ、みんなと共に馬車の景色を楽しんでいる。


「あ、あの……」

「………………ディアお嬢様、変態?」

「不、不可抗力!!」

「………………僕は嬉しい」


 そんな現在、あたしは馬車へ乗っていて、少々困ったことが生じているのだ。


 前提として、動いている馬車は上下に大なり小なり揺れる。そして、馬車が揺れる度に、パタリーシェフの身体が上下に揺れる事となる。



 つまり、どう言うことか??



 簡単に言えば、あたしの頭に彼女の柔らかく、心地の良い胸の感触が、直接、伝わるのだ。


 だから、あたしはパタリーシェフへ言葉を濁しつつ、伝えようとしたのに、『変態』呼ばわりされた事で、彼女に抗議する事となった。


ーーーー


「デ、ディアお嬢様には刺激が強すぎます!!」

「えーと、その、ディア様は大きい胸の方が好きなのでしょうか…」

「アルセラ、あたしは胸よりも気持ちが大事だと思うよ!!!」

「……………………ほんと?」

「ひゃうっ!!も、もうっ…!!パタリーシェフっ!!」


 シンリーは顔を真っ赤にしながら、パタリーシェフへ抗議している。


 その一方でアルセラは自分の胸を見た後、ちらちらとあたしの方へ質問してきた。もちろん、あたしは自分の心に従って、アルセラに回答する。


 しかし、そんなあたしの純粋な心をパタリーシェフが弄ぶかのように自分の胸をあたしの頭へ押し付けてくる。


「パタリー様、それ以上はやめてください!!」

「………………だって、僕は学園に行けてない」

「くっ……それとこれとは別問題です!!」

「ディア様は大きい胸が好きなんですね。私の胸は牛乳を飲めば、大きくなるんでしょうか…」


 パタリーシェフとシンリーが、いつものように激しく言い争っている。


 その一方で、アルセラの方は、未だに胸のことで悩んでいるようだ。しかし、あたしの知ってる『セブン⭐︎プリンセス』通りならば、『セブンス学園』に卒業する頃から、アルセラのボディはナイスボディに変化するから心配無用である。


ーーーー


 とりあえず、シンリーとパタリーシェフが大きな声で言い争う状況をなんとか打開しなければならないと考えた。


 そのため、少しの間、打開策について考えると、あたしの中で画期的な策が生まれる。


「こうすればいいよね……!!」


 画期的な策を思いついたあたしは、上下に揺れる馬車の中、振り落とされないように、気をつけつつ、パタリーシェフと対面になるように、姿勢を変更する。


「そ、それならまぁ……」

「ディア様があんな近くに…!?羨ましいです…」

「…………………悪くない」


 完璧なあたしの策を、アルセラとシンリーは苦渋の表情を浮かべながら、肯定しつつ、パタリーシェフはあたしの提案を褒めてくれた。


 ただ、姿勢を変えた途端に、パタリーシェフが呼吸をする度に、彼女の吐息があたしの方へかかることとなる。その瞬間、あたしはパタリーシェフを意識してしまい、体温が急上昇する。


 そうすると、あたしもパタリーシェフに吐息をかけてしまった。


 それがきっかけで、さっきよりも、パタリーシェフの事を強く意識してしまう。


 吐息だけが問題ではない。普段、お互いの顔を間近で見る機会もなかった。


 それも、相まってあたしは、パタリーシェフから視線を逸らそうとした。


 その時だった。


「………………僕から視線を逸らしちゃダメ」

「は、恥ずかしいの…」


 それをパタリーシェフが許さないと言わんばかりにあたしの顎を持ち上げる。


 自然と、近づいてくるパタリーシェフにあたしは必然的に目を瞑り………


「やっぱり、ディアお嬢様、最初の態勢に戻ってくださいぃぃ!!」

「ディア様、それ以上は絶対にダメですから!!」


 最終的には、アルセラとシンリーの大きな声により、当初の姿勢へ戻ることとなった。


 そして、そのまま、あたし達の馬車は『イースト村』へ到着することとなった。


ーーーーー



「これはこれは『ベルンルック公爵様及び夫人』と『ベルンルックの女神様』、ようこそじゃ」


 あたし達の馬車が『イースト村』へ到着すると、以前と同様、ゾル村長達があたし達を出迎えてくれることとなった。


 ちなみに、今回はディブロお父様の馬車とあたしの馬車の合計2台の移動のため、後ろに位置するあたしの馬車はロンとアースへ預けている。


 つまり、現在、あたし達は馬車を降り、ゾル村長がいる門の方へ移動した所だ。


「ゾル村長、その、『ベルンルックの女神様』っていう呼び方は、なんなんだい?」

「わしらは定期的に他村と交流がありますじゃ。その際に、ディアお嬢様の民に対する考え方へ感動して、わしらでそう呼ぶことにしたのじゃ」


 そう言えば、あたしのステータス内に『ベルンルック領の次期女傑』が追加されていた。つまり、『感謝の公爵令嬢』が進化して、『ベルンルックの女神』になったと言うことだろうか。


 だだでさえ、『感謝の公爵令嬢』と言う通り名に苦しめられたのにもかかかわらず、そんなポ◯モンの進化のような設定をあたしは、認めない。


 そんなわけで、早速、『ベルンルックの女神』と言う名前を修正しようとした時だった。


「ディアお嬢様が女神様?当然です」

 やめてぇ!!

「ディア様が女神?何を今更言ってるんですか」

 やめてぇ!!

「……………………ディアお嬢様は女神」

 やめてぇぇぇ!!


 パチパチパチパチパチパチパチパチパチッッッ


 挙げ句の果てに、その場にいた全員から拍手が沸き起こる事となった。


 その結果、恥ずかしさのあまり、あたしは両手で顔を覆い、その場でしゃがみ込む。


ーーーー


「ディアお嬢様、ロンとアースは元気ですじゃ?役に立っておりますじゃ?」

「ええ。それはとっても…」


 暫く時間が経過した頃、復活したあたしにゾル村長がロンとアースの事を聞いてきた。そのため、あたしはありのままの回答を彼に伝える。


 あたしの回答を聞いたゾル村長は満足そうに縦にこくりと頷いていた。


 もちろん、ロンやアースが役に立っていると言うのは、嘘でもなんでもない。


 いじめの標的とされているあたしの馬車が常に無事なのは、きっと、彼等があたし達が見えない所で退けてくれているからだ。


「それならば良いですじゃ。とりあえず、わしの家に来てみるのはどうですじゃ?」

「え?」

「わしには『小麦の収穫を手伝いに来た』と言うよりは、何か悩みがありそうに見えるのじゃ」


 あたしは自分自身の中では、悩んでいるつもりはないが、一度、ゾル村長と話してみたいと思っていたので、縦にこくりと頷く。


 そして、そのままゾル村長を先頭に、あたし達は彼の家へお邪魔することとなった。


ーーーー


「ゾル村長の家は久しぶりだなぁ」

「あははは!!僕達はそうだねー」

「この村は同じ村の人達と交流しているの?」


 ゾル村長の自宅へ移動中、ロンとアースが懐かしそうに語っていたので、質問をする。


「他の村もそうだと思うが、特に『イースト村』はコミュニケーションが何よりも大事だ」

「それならば、アースは、もっと私とディアお嬢様を敬うべきだと思います!!」

「あははは!!シンリー隊長、尊敬してますー」


 ロンの言葉にあたしはこくりと頷いてると、シンリーがアースに対して、説教をしようとする。


 しかし、アースにはシンリーの言葉が届かなかったようで、彼に揶揄われる事となった。


「ディア様、ここがベルンルック公爵家が管理している『イースト村』で、普段、私達がふわふわなパンを食べれる『小麦』の産地ですね!!」

「アルセラ、その通りだよ!!」

「……………………いい小麦」


 後方で移動していたアルセラがあたしの方に話しかけてきた。どうやら既に、アルセラは『ベルンルック公爵家の領地』に詳しいらしい。


 だから、あたしはアルセラへ同意をする。その一方で、パタリーシェフを見ると、彼女は遠くから見える小麦畑を誉めていた。


 そんなことをしている合間にあたし達は、ゾル村長の自宅へ到着したらしい。


 ちなみに、ゾル村長の家は、他の村民の家よりも、少し大きい程度である。家の大半が赤茶色の煉瓦で建築されており、おしゃれな家だった。


 その後、あたし達は玄関付近で挨拶をした後、ゾル村長の自宅へお邪魔する事となる。


ーーーーー


「コーヒーと焼き立てのフレンチトーストじゃ」

「あ、ありがとうございます」

 

 ゾル村長に案内されるまま、彼の家の応接室へ招かれることとなった。ちなみに、応接室は大きいテーブルとソファーが複数ある程度である。


 そのため、あたし達は近くにあった緑色のふかふかなソファーへ腰掛ける事にした。


 そのまま、ソファーでリラックスしていると、ゾル村長が人数分のコーヒーとフレンチトーストを複数回に分けて、運んできてくれる。


 ちなみに、ゾル村長が運んできてくれたフレンチトーストにはたっぷりの蜂蜜が塗ってあった。


「い、いいなぁ…」

「ル、ルキナ、ここに来てはダメと言っておったはずじゃ」

「ゾルじぃ……ルキナもたべたぁーい!!」

「ベルンルック公爵様方、申し訳ないのじゃ」


 あたし達がいる部屋の隙間からゾル村長のお孫さんと思しき、麻色の髪を三つ編みにした3歳くらいの女の子が顔を覗かせ、駄々を捏ねている。


 どうやら、彼女の名前は『ルキナちゃん』と呼ぶらしく、すごく可愛らしい名前だと思った。


「構わないよ。特に子供は、私達にとって、人生の宝物だからね」

「ふふっ、そうねぇ…」

「な、なんで、ディブロお父様もステラお母様もあたしの髪を撫でながら、生暖かい目で、見つめてくるんですかっ!!」


 ゾル村長の言葉へ同調しながら、ディブロお父様とステラお母様があたしの髪を撫でてくる。


 とても嬉しいことだけど、シンリー達だけでなく、ゾル村長の前ということもあり、恥ずかしくて、素直になれずに、つい、反抗してしまう。


ーーーー


「ゴホンッ、ルキナちゃん、こっちだよ。あたしの所においでっ」

「んー……わぁ…可愛い人」


 ディブロお父様達に撫でられた後、ゾル村長に叱られたルキナちゃんが可哀想だったので、あたしは彼女の名前を呼ぶ。そして、ルキナちゃんが近づいてきたので、彼女を抱っこをする。


「ふふっ…ありがとう。私の1口分けてあげるからねぇ……。ほら、あーん」

「あぁーんっ」


 そして、あたしの分のフレンチトーストを少しずつ、彼女の小さな口へ運ぶことにした。


「わしの孫のルキナまで、面倒見ていただけるとは、流石、ベルンルックの女神様じゃ…」

「ディアお嬢様のあの慈悲深い姿は、正しく、ベルンルックの女神様に相応しいですね!!」

「ディア様は、私をどれだけ惚れさせるのでしょう…もうっ、ディア様以外、考えれないです!!」

「…………………女神さえも超える?」


 あたしがルキナちゃんへフレンチトーストを運んでいると、なぜか、周囲から変な会話が聞こえてきたが、ルキナちゃんに集中することにした。


ーーーー


 その後、フレンチトーストを食べ、満足したのか、あたしの胸元でルキナちゃんは眠り始める。


「改めて、ベルンルックの女神様、孫のルキナが迷惑をかけて申し訳ないのじゃ」

「いいえ。こちらこそ、いつも美味しい小麦で作ったロールパンを提供いただき、ありがとうございます。本当に助かっています」

「それで話を聞く前に……」


 ゾル村長が視線を移動させた先にはアルセラとパタリーがいた。


「こちら、あたしの専属シェフのパタリーです。それとあたしの大事な親友のアルセラです」

「……………僕はパタリー。ディアお嬢様の『専属シェフ』。フレンチトースト美味しかった。だから、僕もスイーツを作って恩返しがしたい」

「次に私はアルセラです!!『セブンス学園』に通っているディア様の『大事な親友』です」


 ゾル村長にパタリーシェフとアルセラを軽く紹介したら、彼女達も各々の自己紹介を始める。 


 そして、なぜか2人ともあたしが言った事をドヤ顔かつ強調している事が気になった。


 もしかして、2人は誰かに向けてアピールをしている?そう考えたあたしは周囲を見渡す。


 周囲を見渡すと、シンリーが2人に悔しそうな表情をしていた事から、なんとなく理由を察したので、見なかった事にした。


「それでは、パタリー様、孫のためにもお願いできますかな?アルセラ様、どうかわしらの『ベルンルックの女神様』を頼みますのじゃ」

「………………お安い御用」

「ええ!!ディア様の事は私に任せてください!!」


 一応、これで無事にパタリーとアルセラの自己紹介も終えた事で、本題へ戻ることとなった。


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