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シンリーと朝食

「それでは、ディア、おやすみなさい」

「ディアちゃん、ゆっくり寝るのよ」

「はい。ディブロお父様、ステラお母様、おやすみなさい。いい夢を」


 明日の行動方針が決定した後、一足先にディブロお父様とステラお母様があたしの部屋から退室することとなった。


「それでは、私も………ってディアお嬢様?」

「今夜、一緒に寝て欲しいの…」


 シンリーが退室しようとした瞬間、あたしは再度、彼女の着用するメイド服の裾を引っ張る。それと同時に顔の温度が上がるのを感じながら、小さな声で自分の願いを彼女へ伝える。

 

「うぇあ!?流石にそれは…」

「だ、だめ…?」

「か、かわ……お供させていただきます」


 少し上目遣いをしながらダメ?と聞いたらシンリーは頬を赤く染め、何かを早口で口走った後、言い直して、一緒に寝てくれることとなった。


「それじゃ、ディアお嬢様、電気消しますよー」

「はーい」

「あ、あの、ディアお嬢様!?」


 あたしは今、戸惑うシンリーに抱きついて、きっと彼女へ迷惑をかけていると思う。


 せっかくできたあたしを思ってくれる家族

 仲良くなったシンリー

 これから先、出会う主人公や攻略対象達


 でも、みんな、3年以内に別れてしまうんだ。


 そう思うと、なぜ、あたしはこの世界に転生したのだろうと思い、涙が止まらなくなる。


「ディアお嬢様…私はあなたの命ある所に私の命あり。生涯をあなたに捧げます。だから、何に怯えているのか、分かりませんが、ご安心を」

「うん…。シンリー、ありがとう」


 その後、あたしはふかふかで慣れない広々としたベッドでシンリーへ抱きついたまま、一夜を過ごすこととなった。


 久しぶりに1人じゃない夜を過ごせたおかげで、とても心が暖まることとなった。


ーーーーー


「ディアお嬢様様、おはようございます」

「天使……?」


 私の肩を優しく揺さぶり、笑顔で起こしてくれるシンリーがあたしを上から覗き込む。その姿を見て、天使じゃないかと本気で錯覚した。


「あの…ディアお嬢様…あまり抱きしめないで頂けるとその……」

「はっ…ごめんなさい」

「あ、いえ、むしろどちらかと言うとご褒美なので…ってなんでもないです!!」


 ついつい、あまりにもシンリーが可愛すぎて、無意識のうちに抱きしめてしまっていた。


 ちなみに、今日はディブロお父様とシンリーと共にベルンルック家が管理している領地の視察へ訪れる日である。


「ディブロお父様とステラお母様は?」

「えーと、恐らくディアお嬢様が朝食会場へ来るのを待っているかと思います」

「それじゃ、シンリーも共にいきましょうか」


 そのままシンリーに手を引いてエスコートしてもらいながら、4Fから2Fの階段を下っていき、ディブロお父様とステラお母様が待っていると思しき、朝食の場所へと足を運ぶ。


「旦那様、奥方様、お待たせして申し訳ありません。ディアお嬢様をお連れいたしました」

「ディブロお父様、ステラお母様、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。おはようございます」

「ディア、おはよう」

「ディアちゃん、おはよう」


 シンリーに連れてきてもらった朝食の会場は既にディブロお父様とステラお母様が座っており、後方にはシンリー以外のメイド達が控えていた。


「シンリーは一緒に食べないの?」


 その後、シンリーがあたしから離れてメイド達のいる方向へ移動しようとしたため、彼女の手を掴んで制止する。


「いえ、大変恐縮ですが…」

「ディアちゃんが変われたのは、シンリー、私はあなたのおかげだと思ってるわ」

「そうだな。パタリーシェフ、我々と同じメニューをもう1つ追加してあげなさい」

「……………かしこまりました」


 即座に、断ろうとするシンリーに対して、ディブロお父様もステラお母様も喜んであたしの提案に賛成してくれた。その瞬間、シンリー以外のメイド達は驚愕な表情をしていたが、関係ない。


 その後、パタリーシェフと呼ばれた中性のシェフが、ディブロお父様の頼みで、数分を待たずして、シンリーの朝食が用意されることとなった。


 ちなみに、ベルンルック公爵家の朝食メニューの内容はロールパンとベーコン目玉焼きとサラダとスープとデザートのプリンである。


 もちろん、『セブン⭐︎プリンセス』は別に昔に発売された恋愛ゲームではないため、出てくる料理に米のような日本の文化的な和食はない。しかしながら、現代的な洋食の料理は普及している。

 

「えっと…本当にいいんでしょうか?」

「いいに決まってるじゃない!!シンリーはあたしの専属メイドなんだからっ!!」


 恐る恐る確認するシンリーはやはり、あたしのような公爵家との身分差を気にしているのかもしれないが、『攻略知識』しかないあたしにこの世界の色々を教えてくれたのはシンリーである。


「ふふっ、本当にディアちゃんはシンリーのことを気に入ったのね」

「ステラお母様にだってシンリーはあげません」

「まぁ…少しくらいは分けてもいいのに」

「「あはははは」」


 ベーコンのカリッとしたジューシーさ

 目玉焼きのドロっとした匙加減

 サラダのシャキシャキッという新鮮さ

 スープの素材本来の甘み

 プリンの舌でとろける感触


 そして、ディブロお父様とステラお母様の笑顔、隣のシンリーの緊張している表情、前世で孤独だったあたしにはとても幸せな朝食だった。


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