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家族に感謝

「もうパーティー会場へ戻らなくていいわ。それより、あたしの私室ってどこだったかしら?」

「ディアお嬢様、案内いたします」

「シンリー、ありがとう」


 あたし達はお風呂を浴びた後、自分の部屋に移動することをシンリーに提案した。そして、彼女はそれを承諾してくれる。


 それにしても、ゲームの中だったから分からなかったけど、『公爵家』の屋敷はすごく広い。


 シンリーに聞いた話だと、螺旋構造の階段になっており1Fは当家の兵士達、2Fはメイドやシェフ達の部屋や食事場所、3Fは客人用と外出用のドレスルーム、最上階の4Fにあたしやディブロお父様、ステラお母様の部屋があるらしい。


「こちらがディアお嬢様のお部屋です」


 シンリーに案内された部屋は、一流ホテルのスイーツルームの如く、部屋内はモノクロの大理石でできた床、ゆったりできる黒色のソファー、赤色と黒色で構成された天蓋ベッド、広々としたトイレ等があり、実に快適な空間が広がっていた。


「それでは私はこれで……」

「ダメっ!!」


 シンリーはあたしを部屋へ案内した後、すぐに退室しようとする。あたしは、彼女が出て行こうとした瞬間、彼女の裾を引っ張った。


「えっと…ディアお嬢様?」

「もう少し話したいと言ったらダメかしら?」

「いいえ。いいえっ、ぜひお話ししましょう!!」

「シンリー、ありがとう」

「こ、紅茶をお持ちしますっ!!」


 そこからシンリーが淹れてくれた紅茶を片手に彼女とたくさんのことを話した。


 シンリーは9歳になったばかりらしく、この屋敷に来て、まだ日が浅いらしい。平民の出自で、メイドの仕事も未経験だったらしい。そもそも、いくらゲーム内とはいえ、なぜ、『セブン⭐︎プリンセス』の世界では9歳で働かせる設定にしたのか、と運営へクレームをつけたくなった。


 他には昔のあたしが色んな婚約者候補達に無理難題を押し付けて断ってきた事やその一方で一時期、『ハルデア皇太子殿下』に夢中だったけど、相手にされていなかった事まで、シンリーは自分の知ってる全てをあたしに話してくれた。


 コンコンコンッッ


「ディア、入るよ」

「ディアちゃん?入るわね」

「ディブロお父様、ステラお母様、あたしの誕生日パーティーを催して頂いたにもかかかわらず、途中で抜けてしまい大変申し訳ございません」


 シンリーと紅茶を嗜みながら様々な話をしている途中、私の部屋をノックしながら、入ってきたのは、あたしを心配してくれたであろうディブロお父様とステラお母様だった。


「誕生日パーティーはもういいんだ。しかし、今日は『ディア』の様子が心配でね…」

「ええ。それは仕方ない事だわ。それよりも、いつものディアちゃんなら怒り狂うかなと…」

「ディブロお父様、ステラお母様、その節は大変ご心配をおかけしました。あたしは今日、生まれ変わりました。何より、お父さん、お母さん、今日まであたしを健康に育ててくれてありがとう」


 あたしの言葉を聞いた瞬間、ディブロお父様もステラお母様も号泣し始めた。


 そして、隣に座っているシンリーまで泣き始めて事態の収集がつかなくなり、暫くの間、苦笑いしながら、落ち着くのを待つことにした。


ーーーー


「えーと、ディブロお父様、頼みたい事があります。シンリーと共に明日、当家が管理している領地へ視察に訪れてもいいかしら?」

「それは構わんがどうしてだい?」

「あたしは、民が努力をして貴族の生活は成り立つと考えています。だから、あたしはたくさんの領民の方々へ感謝を届けたいと考えていますの」


 あたしは『ディア•ベルンルック』で『セブン⭐︎プリンセス』の『バッドエンド確定』の悪役令嬢、ゲームの看板名を『ディア⭐︎DEATHズ』と呼ばれるような異名を持つキャラクターだ。


 そんな異名を持つあたしは『セブン⭐︎プリンセス』のメイン舞台である『セブンス学園』で卒業する前に死ぬことになるだろう。


 だから、どうせ死ぬくらいなら関わるたくさんの人に感謝を伝えてから、死にたいと考えた。


「ふむ…しかし、貴族は恨みを買いやすい。もしかしたら、冷たい反応もあり得るやもしれん」

「存じています。もちろん、領民に同情で金貨を払いません。ただ、あくまで、あたしができる声掛けの感謝を領民へ送りたいのです!!」

「旦那様、奥方様、私が命に変えても『ディアお嬢様』へ指一本触れさせません。だから、どうか『ディアお嬢様』の願いを一考ください」

「昔のディアちゃんならともかく、今のディアちゃんならいいんじゃないかしら?」


 もちろん、あたしの行動は『公爵令嬢』としては軽率と呼ばれるかもしれない。それに加えて、領民の方々からは『貴族の驕りだ』等と罵倒を受ける可能性もある。


 それでも前世を含めて、これまでの人生でたくさんの迷惑をかけた分、今度は感謝を伝えて1人でも笑顔にしたい。だからこそ、身体を震わせながら、シンリーがあたしの援護をしてくれた事が嬉しかったし、ステラお母様の助太刀も心強い。


「いいだろう。明日、領地を見に行こうか」

「ディブロお父様、感謝いたしますわ!!」

「それとシンリーと言ったか?」

「は、はい」

「ディアはお前を気に入っているみたいだ。仮にも、公爵である私に意見を言う姿勢もいい。私の大事な愛娘のディアを隣で支えてやってくれ」

「はい!!この命、燃え尽きるまで尽力します!!」


『セブン⭐︎プリンセス』内において、ディアが破滅の末路を辿った理由の大半が『ディブロお父様』の権力が占めており、彼女を溺愛していたため、なんでも許容をしてしまったことにある。


 だからこそ、あたしはディブロお父様の権力を正しい使い方で利用したいと思った。


 この日、この時を持ちシンリーは『あたし専属のメイド』から、その実は『公爵公認の公爵令嬢の側近』として異例の出世を遂げる事となった。


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