『パタリーとシンリー同盟?』『セブンス学園へ』
この話でカクヨムに追いつきましたが、ここでは全然伸びなくてなろうの厳しさに打ちひしがれています….orz
「ディアお嬢様、おはようございます」
「天使……?」
「もうっ!!」
早朝に目を覚ますと、あたしの顔を上から覗き込む天使がいる。この世界に来て、通算61回目のやり取りだ。
その後、あたしがシンリーに抱きついて甘えるまでが朝のセットである。
ちなみに、今日は『セブンス学園』へ初めて登校する日である。そのため、いつもより早くに起きて、シンリーと共に2Fの食事場へ移動する。
ーーー
「そう言えば、ディブロお父様とステラお母様は朝に弱いと言ってたね…」
「ええ。だから、私とディアお嬢様と2人だけの朝食です」
「…………………ディアお嬢様、おはよう。僕も食べる」
食事場へ移動するといつもあたしを笑顔で待ってくれているディブロお父様とステラお母様がいるのに、その2人の姿はなかった。
つまり、この場にいるのは淡々と朝食を作るシェフ達とあたし達の食事する場所の準備をしているメイド達だけである。
心の中で寂しいと思っていると、先程まで朝食を作っていたはずのパタリーシェフがあたし達と共に食べることとなった。
ちなみにそんな今日の朝食のメニューは、ロールパン、白身魚のムニエル、スクランブルエッグ、サラダ、コーンスープである。
ロールパンはいつも通り、ふわふわの生地で、スクランブルエッグも程よく口の中でほろける。
サラダも鮮度抜群で、コーンスープは素材の良さが活かされていて、どの料理も絶品だった。
「ディアお嬢様は優しすぎます…!!」
「えぇ!?食事をするなら多い方が楽しいよ?」
「…………………師匠もディアお嬢様も優しい」
「きぃぃ…!?」
なぜか、シンリーだけが朝食を終えるまで、パタリーシェフへ悔しそうな表情を浮かべていた。
ーーー
朝食を食べ終えたあたし達は3Fへ、いつもの外出の準備に行こうとした時だった。
「…………………ディアお嬢様、僕のお弁当」
「パタリーシェフ、ごめんなさい!!」
「…………………ううん。大丈夫。でも、愛情込めて作ったから食べて欲しい」
パタリーシェフがあたし達を呼び止めて、保冷剤も完備している大きなサンドイッチのバスケットをあたしへ渡してきた。
普段、クールなパタリーシェフから『愛情込めて』と聞こえた瞬間、あたしは嬉しさのあまり、無意識のうちに、彼女へ抱きついてしまう。
「パタリー様、やってくれましたわね…」
「…………………気づかない方が悪い」
なぜか、シンリーvsパタリーシェフの構造が出来上がっているが、あたしにとって、何よりも彼女があたしとシンリーの分を分け隔てなく、丁寧に作ってくれたことが嬉しかった。
「……………………シンリー、ディアお嬢様を頼んだ。残念だけど、僕はついていけない」
「ええ。任せてください。ディアお嬢様には私達意外不要です」
「……………………僕は料理で裏から支える」
「パタリー様、それならば、私は表でディアお嬢様を支えましょう」
「…………………シンリーにも負けない」
「パタリー様、それは私のセリフです」
私がパタリーシェフに甘えている傍で、先程まで争っていたようにみえたシンリーとパタリーシェフが、今度は握手をしている。
ーーーーー
「ディアお嬢様、今日は晴れ舞台ですから、透き通るような水色のドレスを着ましょう」
「ん?うーん、シンリーに任せるよ」
「ええ。世界で1番可愛く仕上げます」
あたしとシンリーは朝食を終えた後、3Fのドレスアップルームへと移動することとなった。
シンリーも『セブンス学園』の初日だからか、いつもより、気合が入っているらしい、
ーーー
そして、あたしとシンリーがベルンルックの屋敷を出て、あたし達の白色の馬車を発見した。
あたしはいつものように、ロンとアースより先に『ホープ』と『サクセス』の挨拶を優先にするため、馬車の前方へとあたしは足早に移動する。
「『ホープ』、『サクセス』おはよう。昨日はよく寝れたかな?改めて、今日からよろしくね?」
「「ヒヒーン」」
あたしの手に近づいて、撫でて欲しそうにする白色のお馬さん達を見て、彼等の頭を撫でる。その後、あたしはロンとアースへ合流する。
「ディアお嬢様、シンリー隊長、おはよう。そのうち『馬姫』様も広まりそうだな」
「あははは!!ディアお嬢様、シンリー隊長、おはようございますー。ディアお嬢様は何にでも優しいからねー」
あたしが馬車へ乗り込むと、ロンとアースが早速、挨拶と共に揶揄ってきた。
あたしとしては、これ以上変な通り名が増えるのは勘弁して欲しいと心の底から願う。
「ロン、アース、おはよう!!そして、いつも護衛をありがとうございます。もしかして、かなり待たせてしまいましたか?」
とりあえず、『馬姫』の話題に関しては乗っからずにスルーする事にした。
「ロン、アース、おはようございます。それとディアお嬢様は気遣い不要です。親衛隊の私達に全てお任せください」
「「「「ディアお嬢様、親衛隊の皆様、お気をつけて行ってくださいませ」」」」
シンリーの言葉へ縦にこくりと頷いた後、メイド達の見送りと共に、あたし達の馬車はゆっくりと『セブンス学園』へ動き始める。
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ガララララ…
「そ、その、ディアお嬢様、今日のドレス、似、似合ってると思うぞ」
「あははは、ロン、照れてるー!!」
「ん…ロン、何か言った?」
「な、何もねぇよ!!」
あたし達の乗っている馬車は、そこそこの騒音と振動がする。
だから、ロンがあたしに何かを言ってくれた事には気づいたが、詳細は聞こえなかった。そのため、聞き返すと、なぜか怒られてしまう。
「ロン、命拾いしましたね」
隣のシンリーが不吉なことを言ったので、シンリーなりの冗談かな?と思い、隣へ視線を向けると彼女の目が笑っていなかった。
その後、雑談をしながら、あたし達は30分程、馬車に揺られ『セブンス学園』へ到着した。
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「ここが近づける限界かもしれないな。それにしても、やけに馬車が多いな…」
ロン の言葉を機に、あたし達は馬車から降りることとなる。
降りた先であたしの視界に飛び込んできた光景は、『セブン⭐︎プリンセス』内で何度も目にしてきた『セブンス学園』に関連する建物だった。
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大前提として、『セブンス学園』には、建物が5つある。まず、学園の1番後ろに聳え立つ2棟の巨大な青色の建物と赤色の建物がある。
確か、青色の建物が『男子寮』で赤色の建物が『女子寮』のはずだ。
もちろん、あたし達のような馬車で通学できない生徒や『主人公のアルセラ』と『攻略対象』達は必ず、ここで寮生活を送ることとなるだろう。
そして、各寮を除いた中央の赤茶色の4F建ての建物と左右のベージュ色の2F建ての建物が、所謂、『セブン⭐︎プリンセス』のメイン舞台となる『セブンス学園』である。
まずは、3つの建物のうち、中央の建物を『本校』と呼ぶ。『本校』では、主に魔法に関する『知識』を学ぶ場所のはずだ。
つまり、セブンス学園の毎日のスケジュールのうち、午前は『本校』で過ごす事となる。
次に右側の横幅の広さに特化した2F建ての建物は『魔法演習場』である。この『魔法演習場』では、魔法を実践的に練習するための場所だ。
あたしが『セブン⭐︎プリンセス』をプレイしていた頃は、この『魔法演習場』が『レベル上げ』に最も効率の良い場所だった。
主な理由として、魔法の習得には個人差があるため、各生徒が『自由』に活動できる。
つまり、あたしの『セブン⭐︎プリンセス』の攻略知識が正しければ、セブンス学園の毎日の午後は大体『魔法の個人練習』になるだろう。
最後に左側の建物だけドーム型になっており、横幅が広い2階建ての構造だ。下は学食のような生徒が交流しながら飲食をする場所、上は教師達の合同会議等をする場所である。
結論として、あたし達は基本的に『セブンス学園』の『本校』と『魔法演習場』を行き来することとなるだろう。
「それじゃシンリー隊長、ディアお嬢様を任せたぞ。あんたしかいねぇ」
「あははは!!僕たちの分まで頼みますねー」
「ええ。私がお守りします!!」
あたしが『セブン⭐︎プリンセス』の攻略知識と目の前の『セブンス学園』の建物を照らし合わせている最中、ロンとアースの真面目な頼みに対して、シンリーは真面目な返事をしている。
「ロン、アース、行きの護衛をしてくれてありがとう。帰りもよろしくね?」
「ああ、ディアお嬢様、任せてくれ」
彼等のやりとりを見届けた後、あたしは彼等に帰りの護衛も頼み、ロンとアースから快諾してもらう。その後、シンリーと共に手を繋ぎながら、馬車を降り、そのまま『セブンス学園』の校門付近まで歩いて移動する事となった。
「ディアお嬢様…私がいますからご安心を」
「…うん!!」
一度、『セブンス学園』の校門の直前であたしは怯えてしまったのか、足が竦んでしまう。
しかし、そんなあたしに気づいたのか、シンリーがあたしの手を強く握りながら、励ましてくれる。
あたしは、彼女の言葉のおかげで『セブンス学園』の中へ足を踏み入れた。




