『公爵令嬢のメイド騎士』と『馬』
ガララララ…
「そう言えば、ベルンルックの屋敷も『セントラル地区』だったような…」
ディブロお父様の馬車が動いてる中、私は素直に思った疑問を口に出す。
「ディアお嬢様、その認識で合ってるぞ。補足するなら、ベルンルック領内で最も交易が盛んな商業場所の事を指してるんだ」
「……残念ながら、王都には及ばないけどね」
ロンの説明した事をまとめるとするならば、本来、『セントラル地区』は商業場所以外も含むが、最も有名なのが商業場所のため『セントラル地区=商業場所』と言う認識になったのだろう。
そんな風に馬車で少し話しているうちに、馬車や人の行き来が増えてきて、果物、武器、魚、野菜、宝石等を取り扱う色々なお店が見えてきた。
「ベルンルック公爵様…!!ご苦労様です。どうぞ、お通りください」
当然、交易が盛んと言うことはベルンルック領外からも訪れる人がいるのだろう。
そのため、『セントラル地区』の入り口には安全を確認するための護衛兵が常に待機していた。
尤も、あたし達はベルンルック領を治めているため、顔パスで通り、あたし達の馬車はすんなりと『セントラル地区』に入る事となった。
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「ディブロお父様、ちなみにお馬さんと馬車を買う場合、どちらからいくんですか?」
「少し距離はあるが、馬から購入する予定だ」
「先にお馬さんから買うんですか!?!?」
「馬車はサイズの種類が豊富だが、馬に関しては相性の問題もあるからね」
『お馬さんの相性』…そう言えば、あたしはディブロお父様のお馬さんと相性はいいと思う。しかし、必ずしも、お馬さんがあたしに懐いてくれるとは限らない訳だ。
あたしは、馬車の方が買うのは大変かと思っていたが、ディブロお父様の説明によると馬車は消耗品のような位置付けらしい。
とりあえず、あたしは、ディブロお父様が説明した今後の方針に納得して、縦にこくりと頷く。
「旦那様、私にはディアお嬢様と相性の悪い馬がいるとは思えません…。もし。そんな馬が存在するならば、ふふふ……」
「シ、シンリー怖いよ!?」
お馬さんも、あたしなんかより『攻略対象』や『アルセラ』に選ばれた方が幸せだろう。いくら死亡率が下がったと言っても、『90%』もある。
あたしの『バッドエンド』により、お馬さんを危険に巻き込む可能性がある以上、理解してくれそうなお馬さんを選ばなければならない。
「ディアお嬢様、そんなに気を詰めなくていいぞ。俺もアースもあんたに惚れた。馬も同じだ」
「あはははは、ロンが珍しくかっこいいー!!」
「あたし、そんなに顔に出てた??」
どうやら、あたしの覚悟は顔に出ていたらしく、ロンとアースに励まされてしまった。
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ロンとアースに励まされた直後に、あたし達の馬車が止まった。そして、馬車から降りてみると、『セントラル地区』のような栄えてる商業場所にしては珍しく、緑豊かな放牧地があった。
「ベルンルック公爵様、おひさしゅうですな」
「マーク、元気にしてたかい?」
「ええ。今日のご用件を聞きましょうか」
あたし達が馬車から降りて待っていると、放牧地のオーナーと思しき、頭は眩しいのに、髭をクルッとさせた恰幅のいい男性が話しかけてきた。
どうやら、オーナーはマークと呼ばれる男性のようで、ディブロお父様と親しげな様子らしい。
「今日は私じゃなくて私の愛娘がね。紹介しよう。私の愛娘のディアだ」
「ゴホンッ、マーク様、お初にお目にかかります。ベルンルック公爵家の長女『ディア•ベルンルック』と申します。以後お見知り置きを」
この世界に来て、初めて、毛根が永眠している方に出会ってしまったせいか、自己紹介の時に頭部をチラチラと見てしまった。
「ベルンルック公爵令嬢、ご丁寧な挨拶に感謝をするが、わしの寂しい頭を見ながら言うのは控えていただけないですかな?」
「し、失礼致しました!!」
ば、ばれてたぁぁぁ……と心の中で叫びながら、マークさんに謝罪をする。
「そう言えば、あの伝説の『感謝の公爵令嬢様』、今日は付き添いの『公爵令嬢のメイド騎士』様はいらっしゃらないんですか?」
「グハッ………ところで、その『公爵令嬢のメイド騎士』とは?」
このツルツル…!!
絶対、あたしへの仕返しであたしが気にしている呼び方に変えやがった…!!
ほんの少し、あたしが粗相をしただけなのに…と心の中で愚痴りつつ、マークさんの口から聞き覚えのない新しい『通り名』が出てきた方もあり、あたしは彼へ質問をする。
「マーク、それはシンリーのことかい?」
「えー…ご挨拶が遅れました。シンリーと申します。マーク様、確かに、私はディアお嬢様の親衛隊隊長とメイドを兼任しています」
ディブロお父様の言葉と共に、あたしの後ろに控えていたシンリーがあたしの前に出て名乗る。
「おおっ…あなたが、『公爵令嬢のメイド騎士様』ですな。平民ながら、ベルンルックの公爵令嬢のハートを射止め、騎士になった事で『感謝の公爵令嬢』様と同じ勢いで広まってますな…!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ、ってディアお嬢様、その顔はなんですかっ!!」
マークさんの話を聞いたシンリーは大きな声で叫び、恥ずかしさのあまりに両手で顔を覆う。
あたしの苦労を知ったシンリーに、『こっち側へようこそ』と心の底から満面の笑顔で迎え入れようとしたら、怒られてしまった。
「も、もうお嫁にいけませんっっ」
「シンリーはあたしのだからっ!!」
「デ、ディアお嬢様…」
「シンリー…」
涙声でいじけたシンリーに駆け寄って、あたしはシンリーを抱きしめて彼女に囁く。
あたしの言葉で復活したシンリーが潤んだ瞳であたしを見つめ、あたしも彼女を見つめる。
「「ゴ、ゴホンッ」」
「そ、その、あたしは明日から『セブンス学園』へ通うの。だから、お馬さんが2頭欲しいの」
見つめ合っていると、ディブロお父様とマークさんに咳払いをされる事となったので、あたしは、頭を切り替えて、要件を伝えることにした。
「かしこまりました。ここから先はベルンルック公爵令嬢様のみご案内になりますな」
あたしはマークさんの言葉に縦にこくりと頷いて、ついていく事となった。
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そして、マークさんについて行った先は、周囲に茶色の柵が広大な四角形を作っていた。そして、柵の中にはお馬さん達が寝ていたり、走っていたり、遊んでいたり等、のびのびとしている。
あたしが周囲を観察すると、白色の馬が2頭、栗色の子が4頭、赤茶色の子が8頭、黒色の子が6頭の合計20頭いた。
「わぁ…どの馬も可愛いですね」
「それはそうでしょうな。それはそうと『感謝の公爵令嬢様』、わしの頭部をチラチラと視線を送るより、馬に全集中して欲しいですな」
「た、大変申し訳ございません」
久しぶりに見るツルツルに、どうしても視線がいくことくらい許して欲しい。ガン見してるわけではないのだっ!!
とりあえず、時間は有限のため、マークさんから餌をもらい、相性チェックに入ることにした。
「『感謝の公爵令嬢様』、動かないんですか?」
「ええ。お馬さんからしてみれば、あたしは自分のテリトリーに入った侵入者に見えるでしょう。だから、まずは様子見をします」
あたしの言葉を聞いた瞬間、マークさんがあたしを見る目を変えた気がした、
あたしは宣言通り、餌を周囲に広げて、お馬さん達が自主的に来てくれるのを待つことにした。
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そして、しばらく時間が経った頃、あたしとマークさんの付近に他の子達より一回り小さい白色のお馬さんが近づいてきた。
「手渡しだと警戒されてしまうかもしれない」
だから、あたしは敵じゃない事を示すため、2頭のお馬さんの近くにゆっくり、餌を転がす。
そして、あたしの手が届く距離に来た頃に、あたしは餌を手で差し出す。
ただ、白色のお馬さん達はあたしの差し出した手の餌を受け取るか、まだ迷っている様子だ。
「「ヒヒーン」」
そしたら、不思議なことに、外の方からディブロお父様のお馬さんの鳴き声が聞こえてきた。
その声を聞いた瞬間、白色のお馬さん達はあたしの手にある餌を食べ始め出す。
「君達を危険に巻き込むかもしれない…。それでも、あたしのお馬さんになってくれないかな?」
まるで、あたしの言葉を理解したかのように、白色のお馬さん達は頭を上下に動かした。
「うん、ありがとう。マークさん、この白いお馬さん達にします」
「『馬姫様』、お任せくださいな」
マークさんの方をみると、先程までの態度とは異なり、なぜか崇められていた。
あたしはディブロ公爵様のお馬さんに心の中で感謝を伝えつつ、マークさんに後の事を任せ、シンリー達の元へ戻った。




