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ノース村へ出発

「ディアお嬢様おはようございます」

「天使…?」

「もうっ…!!」


 あたしの顔を上から笑顔で覗き込むシンリーとの朝の恒例のやりとりである。このやりとりは欠かせない。この世界に来て、通算30回目だ。


 一連のやり取りの後、あたしがシンリーへ抱きついて、甘えると彼女は受け止めてくれる。


 ちなみに、今日は『セブンス学園』の入学式があるちょうど1ヶ月前の日だ。


 それと同時に、待ちに待った今日はディブロお父様とシンリーと共に『ノース村』へ視察する日でもある。


 そのため、シンリーと共に朝食を済ませた後、3Fのドレスアップルームへ移動した。


ーーー


「ディアお嬢様、今日は嗜好を変えて紫色のドレスにしてみませんか?」

「シンリーが決めたのならなんでもいいよ!!」


 シンリーの選んだドレスへ全身を包んだ後、1Fのエントランスの方へ移動する。


 エントランスの方へ移動すると、黒色のタキシードに身を包み、あたしが『叙勲式』の時に授けた剣を腰に下げているロンとアースがあたしを笑顔を浮かべながら、待っていた。


「ディアお嬢様、シンリー隊長、おはようございます。それではディアお嬢様、俺の手を」

「あはは!!ディアお嬢様、シンリー隊長、おはようございます。ディアお嬢様、僕のお手をー」

「ロン、アースおはよう。随分とあたしの親衛隊として、格好が様になってるじゃない?そういえば、2人とも今日から護衛なの?」


 ロンは麻色の髪をした高身長でイースト村の時に出会った男性である。口は悪いけど、すごく根が真面目な青年である。


 アースも麻色の髪をしたロンより身長が低い男性である。どちらかといえば、フレンドリーな子で不器用なロンを隣で支えている青年だ。


 2人に話を聞くと、どうやら、ロンとアースはあたしの『ノース村』の視察から、正式なあたしの親衛隊として護衛に着くことになったらしい。

 

 ちなみに、叙勲式を終えた後、ディブロお父様に、こっそりと話を聞いたところ、ロンとアースはあたしに護衛を志願した日から特訓を重ねていたらしい。そして、今のロンとアースは当家の1Fで護衛兵と生活をしており、彼等と共に、厳しい訓練へ励んでいるそうだ。


「デ、ディアお嬢様、その通り………だ」


 なぜか、あたしの質問に顔を真っ赤にしたロンがカタコトで返事をする。


「ロン、『私があなた達の隊長』ですからね?今、完全に『私の全てを捧げた私のディアお嬢様』へ見惚れていましたよね?」

「そ、そんなわけ……ね、ねえよ」


 シンリーがロンを怒っているが、彼女の言葉に意識をしてしまう。その結果、自分の顔の温度が急上昇してしまい、あたしにも大ダメージだ。


 ちなみに、シンリーの質問に対してロンは歯切れの悪い回答をしている。


「あははは!!ロン、ダメだよ!!レディにはもっと優しく行かないとねー?」

「アース、『私の前で』ディアお嬢様を口説くアドバイスですか?いい度胸ですね?」


 そんなロンを眺めていると、今度は、アースがシンリーの地雷を踏み抜いて行き、今度は彼の方へシンリーの矛先が向かった。


「こらこら、シンリー、新しく入ってきてくれたロンとアースへ意地悪しちゃだめだよ?」

「油断なりません…!!ディアお嬢様は自分のとてつもない魅力にもっと自覚を持つべきです!!」


 とりあえず、せっかくあたしの親衛隊になってくれた2人に辞められると困るので、シンリーには軽く注意をしておいた。そうすると、逆にあたしの方が注意されてしまうこととなる。


 それにしてもシンリーの言う『あたしの魅力』……か。例え、魅力があったとしても『セブンス学園』で過ごす3年内があたしの人生のタイムリミット………ううん。死亡率も下がる事はあるのだから、希望もあるはずだ。


 今、考えても仕方ない事に囚われてはだめだと思ったあたしは首を横に振る。


 まず、あたしがすべきことは『ロン』と『アース』へあたしの親衛隊になってくれたことについて、感謝を伝えることだ。


「改めてロン、アース、あたしの親衛隊になってくれてありがとう!!2人共期待してるからね?」

「お、おう…任せてくれ!!」

「あはは!!微力ながら頑張らせてもらうよー!!」


 だから、あたしはロンとアースへ感謝の言葉と共に、握手をした後、あたし達はディブロお父様達が待っている馬車へ向かった。


ーーーーー


 ディブロお父様の方へ向かうと、いつもの赤茶色の馬2匹と大きな黒塗りの馬車があった。


 まずは、馬車の先端の方へ移動して、お馬さん達の前へ行く。


「「(あははは)ディアお嬢様()」」

「ロン、アース、落ち着いて、ディアお嬢様を見てください」


 あたしが危ないことをすると思ったのか、ロンとアースがあたしの名前を大きな声で呼び、あたしの前へ出ようとした。そんな2人をシンリーが大きな声で止めてくれる。


「お馬さん達、久しぶりー!!元気だった?」

「ブルッルル」

「ヒヒーン!!」


 あたしが話しかけると元気よさそうに、挨拶をしてくれるお馬さん達へ笑顔で挨拶する。


「あ、タテガミ撫でさせてくれるの?いつも、ありがとう!!今日もあたし達をよろしくね?」

「「ヒヒーン」」


 お馬さん達へ感謝を伝えて、タテガミと首筋の触り心地をたっぷりと堪能した後、今度は護衛兵達の方へ振り返る。


「護衛兵の皆様、おはようございます!!それと、いつもあたし達のために守ってくれてありがとう!!改めて今日もよろしくお願いします!!」 

「「「「「よろしくお願いします」」」」」


 あたしの声に合わせて、挨拶をしてくれる護衛兵の方々へ笑顔で縦にこくりと頷く。


「「「「「うおおおおおおおおおお」」」」」」


 護衛兵の方々の気合い十分な様子を見届けた後、後方の馬車へと乗り込む。


「あれがディアお嬢様です…」

「ディアといる時はあんなに指揮が高いのに、私が1人の時はやる気を出してくれないんだよ…」


 あたしが後方の馬車へ乗り込むと、遠い目で外を眺めるシンリーとロンとアースの姿があり、その一方で悲しそうに肩を落ち込みぶつぶつと小さな声で嘆くディブロお父様の姿があった。


 そんな彼等の様子に右へ首を傾げていると、いつの間にか、あたし達が乗る馬車が動き出した。


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