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叙勲式と誕生日パーティーのやり直し

「ディブロお父様、ステラお母様お騒がせいたしました。それと、おはようございます」

「ディア、シンリーおはよう」

「ディアちゃん、シンリー、おはよう」

「旦那様、奥方様、大変ご迷惑をおかけしました。おはようございます」

「それは構わないが、今日は当家の叙勲式があるから、2人とも準備をしておきなさい」


 昨夜の件も相まって、ディブロお父様の言葉にあたしとシンリーは胸を撫で下ろしたのも束の間、『叙勲式』の開催に驚く事となった。


 恐らく、『叙勲式』の内容は、シンリーがあたしの親衛隊の隊長として任命される式だ。


 ここからは、あくまで、あたしの推測になるが、ディブロお父様が叙勲式を開く理由は『ベルンルック家においてシンリーの地位』を参加者の前で明白にするためだと思う。


 だからこそ、ディブロお父様の言葉に、心の中で感謝を送りながら、縦にこくりと頷いた。


ーーーー


 ちなみに今日の朝食は、ロールパンとタイの干物、目玉焼きとソーセージ、サラダとかぼちゃスープだった。しかし、残念な事に、緊張で全く、味が分からなくってしまった。


「叙勲式と言っても大した事じゃないよ」


 あたしの緊張に気づいたディブロお父様が朝食を口へ運ぶ直前であたしとシンリーに穏やかな笑みを浮かべつつ伝えてくれる。そのおかげで、あたしもシンリーも少しだけ緊張が解れた。


「そんな事より、シンリー、聞いてちょうだい。ディアちゃんったら、あなたの事が本当に好きでね……赤ちゃんの様に泣いたのよ!!」

「ス、ステラお母様、恥ずかしいので、そのお話はやめてください…」


 緊張しているあたしとは真逆のステラお母様が嬉しそうな表情をつつ、昨夜のあたしの恥ずかしい出来事をシンリーへ嬉々として話す。


 当然、それを聞いたあたしの頬の温度は急上昇することとなり、先ほどまでの叙勲式の緊張はどこかへ消え去ることとなった。


 その代わりに、ステラお母様に涙目でこれ以上の話をしないで欲しいと懇願する羽目となる。


「いいじゃない?ディアちゃん、シンリーのために動いててすごくかっこよかったわ」

「ディアお嬢様……私のためにそこまで…」

「ふ、ふん!!か、勘違いしないでよね!!」


 挙げ句の果てに、あたしは、あまりの恥ずかしさから謎のツンデレを発動してしまった。


「ゴホンッ、言い忘れてましたわ。是非、パタリーシェフに褒美を与えて欲しいですの。彼女のおかげであたしはシンリーの危機に間に合えたの」


 あたしからすれば、シンリーの危機を救えたのはパタリーシェフのおかげである。


 だから、シンリーのような『叙勲式』とまではいかないまでも、彼女に見合う褒美を与えるべきとディブロお父様達へ進言する。


「…………いや、僕は当然のことをしたまで……故に不要」

「いいえ。シンリーはあたしにとって誰よりも大事なの。だから、まずはありがとうっ!!」

「パタリーシェフ、私を救っていただき、本当にありがとうございました。あなたのおかげで私は私より大事なディアお嬢様へお仕えできます」


 パタリーシェフは欲がないのか、すごく謙虚な方である。しかし、あたしにとってシンリーは本当に大事な人のため、彼女は立派な恩人だ。


 そして、あたしが感謝した後に、シンリーもパタリーシェフへ感謝を伝えている。


「そうだっ!!パタリーシェフ、あたし達の専属になって、お弁当を作ってくれないかしら?」

「………僕が?」

「ええ。ディブロお父様もいいかしら?」


あたしの『セブン⭐︎プリンセス』の知識を辿れば、本舞台となる『セブンス学園』では主人公や攻略対象達と寮生活を送る。


 しかし、『ディア•ベルンルック』というバッドエンド確定の悪役令嬢は『セブンス学園』へ近い位置へ屋敷がある。だから、前世のゲーム通りならば、馬車で通うことになるだろう。


 だから、必然的にあたし達には、お昼ご飯が必要となる。


 そのため、パタリーシェフへお弁当を任せて、少しでも、彼女の出世に貢献したいと考えた。


「パタリーシェフ、任せても良いか?」

「……………はい」


 あたし達のお弁当を頼む事で、パタリーシェフに恩返しができたかどうか分からないけど、彼女の笑顔で頷くのを見て、少しだけすっきりした。


ーーーー


「ディブロお父様、後6日ですね…!!」

「ディア、まさか数える気かい?」

「当たり前ですよー!!視察が楽しみなんです!!」


 ディブロお父様へ盛大に『ノース村』を忘れていないことをアピールする。


「ディブロお父様、あたしは絶対に『セブンス学園』へ通う前に『ノース村』と『サウス村』へ視察に行ってから、入学します!!」


 目を輝かせながら、あたしの宣言を聞いたディブロお父様が額に手をやり嘆いていた。


「ディアちゃんは知ってるかしら?」

「ステラお母様、なんでしょう?」


 ディブロお父様の嘆く様子を傍目に、ステラお母様が唐突にあたしへ質問をする。


「ディアちゃん宛にイースト村からロールパン、ウェスト村からタイが毎日来ますの」

「えぇ…そんな…。皆様、あたしのことを気遣ってくれているのでしょうか?全部食べますね!!」


 ステラお母様にあたしの本音をそのまま伝えると彼女とシシリーになぜか、2人に笑われた。


「ディアちゃんはすごいわね…」

「私が人生捧げた主人ですから」

「シシリー、逃しちゃダメよ」

「奥方様、必ず私の物にします」

「私はシンリーを応援するわ!!」


 ステラお母様とシンリーが一頻り笑った後、なぜか仲睦まじそうに話している。


 しかし、あたしは2人から笑われた事で、恥ずかしさを感じ、話の内容を気にせず朝食の方へ集中する事にした。


 ちなみに、ディブロお父様の方を見ると、未だに、額へ手を当てて、嘆き続けている。


ーーーー


「ディアお嬢様はすごく可愛いので、白色のドレスも似合いますね!!」

「それなら嬉しいわ。シンリーも水色のドレスがすごく似合っているよ。それじゃ先に行くね?」

「はい」


 シンリーにドレスアップをしてもらい、あたしだけ先にディブロお父様達が待つ場所へと足を運ぶ事となった。


 あたしが今から向かう場所は、あたしの誕生日パーティーに使った2Fの特別会場である。


 ちなみに、2Fの特別会場はこの屋敷で1番広い部屋だ。端の方には、どっさりと並んだご馳走が用意されており、両サイド側には、白色の布が敷かれた丸いテーブルとふかふかそうな椅子がたくさん備えられている。


 最後に真ん中の方には、赤色のカーペットが敷かれた道が用意されていた。


 そして、既に会場にはメイドやシェフや護衛兵を含めた当家で従事している人達が静かに座っており、それぞれのグラスにワインが注がれていた。


「ディブロお父様、あたしまで先に入る意味はあるんですか!!って、これは剣…?それも3本?叙勲式というよりパーティーに近いような…」

「『ディア親衛隊の叙勲式』と『ディアの誕生日パーティーのやり直し』だからね。進行等は私達がやるから、ディアが授けてあげなさい」

「ディアちゃんの晴れ舞台、楽しみだわ」


 あたしの誕生日のやり直しも兼ねているならば、ここまで盛大なのも理解できるが、うまくできるかどうか等が不安である。


「……あたしは具体的に何をすれば?」

「ディアの親衛隊だ。だから、ディアの本音を伝えて剣を授ければいいよ」


 とりあえず、ディブロお父様のアドバイスへこくりと頷いた後、またすぐ始まるとのことで、あたしは指定された赤色のカーペットの最奥へ移動して待機することとなった。


ーーーー


 バタンッッ


「入場っ!!!!!!」


 ディブロお父様の大きな声と共に優雅なクラシックの曲が流れ始め、2Fの特別会場の大きな扉が勢いよく、メイド達の手により開かれる。


 パチパチパチパチパチパチパチパチッッッ


 そして、ぎこちない動作で歩いてくる黒色のタキシードを身に纏ったロンとアース、最後に水色のドレスへ身を包み、綺麗に化粧されたシンリーがあたしの方へクラシックのメロディーと盛大な拍手が沸き起こる中、ゆっくりと歩み寄る。


 そして、あたしの前へ3人は跪く。


「ロン、あたしの親衛隊の一員として護衛に励みなさい。これを…」


 あたしはその言葉と共にロンへ剣を渡す。


「ディアお嬢様、謹んでお受けいたします」


 いつもより緊張しているのか、ロンは手を震わせながら、あたしから剣を受け取った。


「アース、あたしの親衛隊の一員として護衛に励みなさい。これを…」


 アースにも同様、ロンと同じ言葉と共に剣を渡す。


「あは………ゴホンッ、ディアお嬢様、謹んでお受けいたします」


 アースはいつも笑う癖がある。その点を心配していたが、彼なりに隠そうとする意思は伝わったため、『大丈夫だったよ』と剣を渡す前に、アースへ小声で伝え、彼を安心させる。


「シンリー」

「ひゃぅい!!」


 あたしに名前を呼ばれて、速攻で変な声を出して噛んだシンリーに、ディブロお父様とステラお母様や護衛兵が主に大きな声で笑っている。

 

「実はあの時、シンリーが殴られてたのに、あたしを庇ってくれていた事、知ってるの」

「え?」

「あの時、すごく嬉しかったの。だから、シンリーには、あたしの親衛隊隊長として、あたしの命尽きるまであたしの隣にいて欲しい。良ければ、あたしが授けるこの剣を受け取ってください」

「はい…。私の全てをディアお嬢様へ捧げます」


 パチパチパチパチパチパチパチパチッッッ

 パチパチパチパチパチパチパチパチッッッ

 パチパチパチパチパチパチパチパチッッッ


 過去最大の拍手が巻き起こる中で、その言葉と共にあたしの剣をシンリーは受け取った。


ーーーー


 パッカーン

 パッカーン


『叙勲式』が終わった瞬間、次々にみんながクラッカーを鳴らし始める。


「「「「ディアお嬢様、お誕生日おめでとうございます」」」」


 クラッカーが鳴り終わったかと思えば、全員が声を揃えて、あたしの誕生日が祝われる。嬉しいような恥ずかしいような、複雑な感情だ。


「今日は祝杯で無礼講!!みんなで飲んで食べて、最高の1日を過ごそうじゃないか!!」


 その後、ディブロお父様の大きな開会宣言と共に、会場内で歓声が沸き起こった後、あたしの誕生日パーティーは再開される事となった。


「俺達は嚙ませ犬じゃねえか!!くそぉっ!!」

「あははは、ロン、落ち着いてー」


 ロンとアースは『叙勲式』での鬱憤を晴らすかのように、酒を浴びるほど飲んでいる。


 確かに、シンリーと比べて、エピソードが少なくて、彼等に申し訳ないと感じつつも、仕方ないと思うことにした。


「ロン、アース、さあ、こっちへ来なさい」


 しかし、そんな頬を赤く染めていた彼等も、ディブロお父様から呼び出さたことにより、酔いが覚めたのか、青ざめて涙目になっていた。


 ちなみに他のメイドや護衛兵の方々も談笑や飲食を楽しんでいる様子を見て、あたしとシンリーも手を繋ぐ。


 そして、2人で美味しい物を探し、どちらかが満足するまで一緒に、同じ食べ物を食べて、あたし達なりに、幸せなひと時を過ごす事となった。





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