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『ディア•ベルンルック』という女について

カクヨムがメインです。

ちょうど、序章ー1章まで終えたのでなろうに複数投稿していきます

『おーほっほっほっ、だから、あなたのような平民がハルデア皇太子殿下とは釣り合いませんわ』

『ひ、ひどいです!!どうしてベルンルック公爵令嬢はいつも私にばかり……!!』

『ベルンルック公爵令嬢、やめるんだ!!アルセラ、大丈夫だったかい?』


 パソコンのモニターに映るのは『セブン⭐︎プリンセス』に映し出された修羅場のシーンだ。


 ズズズズ…


 現在は、コーヒーからカフェインを体内に注入して片手にマウスをクリックしながら、『セブンス王国』第一皇子のハルデア皇太子殿下ルートの終盤を攻略しているところだ。


 この『セブン⭐︎プリンセス』は貴族しか通えないはずの『セブンス学園』で平民の『アルセラ』がハルデア皇太子殿下を中心に7人の攻略対象と身分差恋愛を楽しむ事がメインのゲームである。


 もちろん、魔法を駆使したバトル展開もあるが、基本は恋愛である。


  しかし、この『セブン⭐︎プリンセス』には他の恋愛ゲームと異なる所がある。


 それは、どの攻略対象ルートのハッピーエンドやバッドエンドと言った結末の種類を問わず、共通して、最終的には『ディア•ベルンルック公爵令嬢』と言う悪役令嬢のキャラクターが、謎の因果により死刑の末路を辿るのだ。


 だから、別名『ディア⭐︎DEATHズ』等と不名誉な呼び方もされており、ある意味根強いファンも多い。そして、私もそのプレイヤーの1人だ。


「家族もいない。彼氏もいない。酒に溺れて仮想の恋愛ゲームに入り浸る。あたしも、ディア公爵令嬢と変わんねーや……」


 床に落ちてる氷固やエストロングゼロを眺めて、1人で虚しい感想を垂れてしまった。


「やっぱアルコールがいい。あと一杯ぐ……」


 なにこれ…

 目がぐるぐる回って……

 あぁ…………………………あたしもやっと家族の所へ…………いけ………る……のかな……。


ーーーーー


「ディア、6歳のお誕生日おめでとう。今から2ヶ月後には『セブンス学園』での学生生活が始まる訳だけど、楽しみで仕方ないって顔のようだね」

「ディアちゃん!!お誕生日おめでとうだわ!!私も2ヶ月後にディアちゃんの『セブンス学園』内の素敵な学園生活が送れるよう祈っているわ」

「デ、ディアお嬢様、何かお気に召さないことでもありましたでしょうか?」

 

 あの不愉快な感覚の後、あたしの視界に飛び込んできた光景は、大きいパーティー会場の中だった。あたしの視線の少し先には巨大なホールケーキ、目の前には、あたしを祝う人やあたしへ異常に気を遣う複数のメイドの姿があった。


 あたしの誕生日を祝ってくれた人物は金色の髪に青眼の綺麗な瞳を持ち、高身長かつダンディで黒色のタキシードに身を包まれた男性と黒色と赤色のドレスへ身を包んだスタイル抜群のスレンダーな女性だった。


 いや、それより、あたしの聞き間違いでなければ、目の前の男性も女性も怯えるメイド達も、あたしのことを『ディア』って言わなかったか?


 いや、そんなはずはない。これは何かの夢だ。


 なぜならば、さっきまであたしはお気に入りのエストロングゼロでキメていたはずだ。


 確かに、あたしもアニメやライトノベルで異世界やゲームに転生した事例を知っているが、まさか自分が『バッドエンド確定』の『悪役令嬢』に転生するはずはない。だから、これは夢なのだ。


 ガッシャーン……ビチャッ

 つめたっ!!


 あたしが到底受け入れられない非現実へ、呆然と立ち尽くしていると見習いメイドと思しき小柄な女の子が足を滑らせてしまったのか、運んでいたワインの大半があたしへかかる事となった。


 そのおかげで目の前の出来事が夢ではなく現実だという事がわかった。


「ひ、ひぃ!?た、た、大変申し訳なく…ど、どうかディアお嬢様、い、命だけは…」

「ディア、大丈夫かい?急ぎこの者を牢へ」

「だ、旦那様、どうかそれだけは…」


 青褪める見習いメイドはあたしを見て声と身体を震わせ命乞いをする。


 次に焦った表情をしながら、あたしの方へ駆けつけ、ワインをかけた見習いメイドに厳しい処罰を下そうとするディアの父親の姿があった。


 そして、そんなディアの父親の名前は『ディブロ・ベルンルック』というキャラクターである。


 王位継承権の争いに敗北して、婿養子として、公爵の座へ落ち着くこととなった彼だが、未だに王族の野心が高くある一方、あたしを溺愛してくれている数少ないキャラクターでもある。


 更に彼について詳しく話すと、あたしこと『ディア•ベルンルック』を溺愛していた故に『セブン⭐︎プリンセス』では彼の『公爵』という高い貴族の権力の立場を利用されることとなる。良くも悪くも、最後には悪役令嬢の『ディア•ベルンルック』陣営は敗北、死刑とまではいかないまでも、かなり厳しい処罰で退場する事が多い。


 きっと、そんな彼が見習いメイドを牢に入れようとしたのも、『セブン⭐︎プリンセス』の設定通りにあたしのことを溺愛しているからだろう。しかし、それを実行されてはあたしが困る。


「ディブロお父様、ここはあたしにおまかせを」

「お?おおっ…」


 前世がアル中かつゲーマーのあたしに貴族のような『お嬢様』の話し方等できるはずもなく、あたしは『セブン⭐︎プリンセス』の時の『ディア•ベルンルック』の話し方を意識しながら、ディブロお父様へ話しかけることにした。


 それにしても、これが夢ではなく、実際にあたしが『ディア•ベルンルック』に転生しているならば、どこかで死ぬのは確定だ。


 それならば、死ぬのは『あたし』だけでいい。


 今日より『セブン⭐︎プリンセス』の『バッドエンド確定の悪役令嬢だったディア』は存在しない。あたしは生まれ変わるんだっ!!


 誓いを立てた後、まずは見習いメイドの前に膝をつく。そして、涙目で逸らそうとする彼女の視線とあたしの視線を真っ直ぐに見つめ合わせる。

 

「あなた名前は?」

「シ、シ、シンリーと申します」


 あたしを前にして怯え切っている。


 そりゃそうだ。


 きっと今までのあたしだった『ディア•ベルンルック』は理不尽にゲームの設定通り、自分の好き放題してきたのだろう。


「そう…シンリー、怪我はなかった?」

「え?ええ」

「あなたのおかげで目が覚めましたの。どうか、あたしだけのメイドになりませんか?」

「「「「「ええええええええええええ」」」」」


 その瞬間、会場に来ていた全員が大きな声で驚くこととなった。


 あたしの言葉を聞いて、何度も眼鏡を擦って、幻覚か確かめようとする人

 あたしの言葉を聞いて、周囲と顔を見合わせて永遠に首を振り続ける人

 あたしの言葉を聞いて口元に手を当てる人


 多種多様な反応があった。でも、関係ない。

 

「ディブロお父様、あたしはシンリーが欲しいわ。あたしの願い受け入れてくれるかしら?」

「……ああ、それくらい構わないが、ディアが怒らないなんて何かあったのかい?」


 昔のあたしは相当やらかしていたみたいだね。まぁ、どのルートに行っても『死』が確定しているキャラクターだから仕方ないとはいえ、どうせ死ぬなら、それまでの間にあたしはあたしの人生の中で関わる人たちへ感謝する人生にしたい!!


「いいえ。何もないですわ。一先ず、ドレスのワインを落としたいの。だから、お風呂に入りますわ。シンリー、エスコートしてくれるかしら?」

「は、はいっ!!」

 

 あたしはシンリーに案内されるまま、彼女の後に着いていった。


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