表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/62

第43話 サーティーンの陰謀

 トママイ連合の会議が決裂し、ケンタウロス族の三国は二対一に割れた――。


 その数日後。

 冥界――暗黒の魔力が満ちるこの異界の奥深くにて、極悪魔サーティーンは静かに次の一手を見据えていた。


 彼の部屋に足音もなく現れたのは、一人の魔人。

 黒衣のフードをまとい、片眼に漆黒のアイパッチをつけた異形の者――名をグレウスという。

 諜報の魔人にして、サーティーンに命を救われた少年。ピクシブらと多国を見にゆき、世界の歪みを観察し続けてきた男である。


「……ご報告いたします、我が主」


 グレウスは膝を折ることなく、淡々と口を開いた。


「トママイ問題は、想定より早く動きました。三部族の会議は決裂。和平を望むシュンカク族はムロロンと結び、ジンビ族はモンテの保護を受けて軍備を増強中。コウガン族は沈黙を保ちながらも、裏で武器供与を継続しています」


 サーティーンは肘をついた姿勢のまま、虚空に指を滑らせるように伸ばす。


「……ふむ。燃やすには、薪をもっと丁寧に積まねば面白くもなかろう」


「はい。私の見立てでは、この問題は収束に三年くらい。和平と戦火、信仰と現実、理想と利権――すべてが絡み合う矛盾の盆地が形成されるでしょう」


「なるほど。あの茶毛の王――ザイ・コウガンも、いずれは正義という泥を自ら纏うことになるな……。で、モンテはどうだ?」


「健在です。黒槍同盟と呼ばれる戦闘集団を率い、ジンビ族との結びつきを強めています。また、ドロワ――奴隷商ドクワの子も、地下経済の再編と資金流通を掌握しつつあり、トママイの闇を支えています」


 サーティーンは軽く笑い、立ち上がる。

 その背から、二枚の巨大な黒い翼が静かに揺らめいた。


「……ふむ、良いだろう。そいつらはまだ泳がせておけ。金と血に肥え太った獲物は、焼くと旨味が増すものだ」


 一歩、また一歩。闇を踏みしめるように歩きながら、サーティーンは続けた。


「グレウス。お前はこれよりコウガン族の内部に潜れ。ザイの息子――ナム・コウガンの動きが気になる。現実主義を疑い、信仰と倫理に傾いていると」


「はい。すでに接触の種は撒いてあります。ナムは揺れています。……理想という毒が、心に染み始めているのです。裏切りの芽としては上出来です」


 サーティーンの口元に、わずかな笑みが浮かぶ。


「腐りかけの秩序には、いずれ腐った者が群がる。……それでよい。風が吹いているぞ、グレウス。白き風が」


 グレウスの片眼が、わずかに輝いた。


「その風が、穢れを祓う光の風か……それとも、死を撒き散らす灰の風か――」


 彼はゆっくりと頭を垂れた。


「いずれ、明らかになります。我が主の劇場にて」


 サーティーンは顔を上げ、虚無の空を見上げた。

 そこには、ただ何もない――空虚なる暗黒が、無音で広がっている。


「さぁ、幕を引け。トママイの地に立つ者たちが、いかなる真実を選ぶか……見届けようではないか」


 世界はまたひとつ、深淵へと足を踏み入れた。

 それが誰かの正義であろうと、悪魔にとってはただの変化にすぎないのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ