表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/32

第20話 新たなる上級悪魔

 サーティーンの部屋から、少し狂気じみた高笑いと独り言を、部屋の前で耳を澄ませていたルサールカは嬉しそうに目を細め、隣に立つナタルは少し引いた表情で小さく溜め息をついた。


 ルサールカはドアをノックする。


「サーティーン様。ナタルをお連れしました」


 中から鋭い声が響く。


「入れ!」


「失礼します」


 ルサールカとナタルが部屋に入る。黒と紫を基調にした装飾の中、中央にはサーティーンが腕を組んで立っていた。その姿は威圧的で、ナタルは自然と膝をついた。


「この度は……命をお救いいただき、誠にありがとうございます。契約通り……私はあなた様に従います」


「……儀式を始めるぞ」


 サーティーンはその言葉と共に、ブラックビットから手のひら大の黒い球体――ゲオークのデーモンコアを取り出した。それは生き物のように脈動していた。


「これが……悪魔の核……!」


 ナタルは一瞬、顔をしかめるが、すぐに表情を消し、両手を差し出す。サーティーンは静かにそれをナタルの掌に置いた。


「さあ、契約の文言を唱えろ」


 ナタルはデーモンコアを胸に抱くように持ち、深く息を吸い、はっきりとした声で言った。


「――あなた様の物は、あなた様の物。私の物は……あなた様の物でございます」


(ギーブは……生き返らなかった。でも……これで――)


 サーティーンは冷ややかに命じた。


「その核を、お前の心臓に当てるんだ」


 ナタルは一瞬目を伏せたあと、右手でコアを持ち、左胸に当てた。すると、デーモンコアはナタルの体内へと吸い込まれるように沈み込んだ。


「うっ……ぐあああああああっ!!」


 次の瞬間、ナタルの体が黒紫の光を放ち、部屋中を照らす。苦悶に顔を歪めながらも、ナタルは倒れず、歯を食いしばる。


 額には淡く光るXの紋章、そして左の首筋には、XIIIの刻印が浮かび上がる。


 ルサールカが微笑みながら声をかけた。


「ようこそ、ナンバーX……あなたは、サーティーン様直属の上級悪魔となりました。身体が慣れるまで、少し休んだほうがいいでしょう」


「……分かりました」


 ナタルは静かに立ち上がり、サーティーンに一礼してルサールカと共に部屋を出ようとした――そのとき。


「……マルカス王にはな、ゼニゲバという中級悪魔が取り憑いていてな」


 窓の外を見つめながら、サーティーンが独り言のように言う。


「相棒を生き返らせるには、もう一つ……デーモンコアが必要なんだよな」


 ナタルの足が一瞬止まり、サーティーンに振り返ることなく、再び歩き出し部屋をあとにした。


 

 しばらくして、マカリアがサーティーンの部屋を訪れる。


「サーティーン様、サマル町長よりお手紙を預かって参りました」


 サーティーンが手紙を受け取り、目を通す。


「初めまして、私はムーカワ国の王、マルカスである――」


 手紙を読み終えたサーティーンは、フッと鼻で笑う。


「……なるほどな……ルカ。聞き耳を立ててるなら、入って来い」


 間を置いて、ルサールカが何食わぬ顔で現れる。


「……お呼びでしょうか?」


 まるでキッチンから来たような演技をする彼女に、サーティーンは何も言わず手紙を渡した。


「一週間後だ。ナタルの体、間に合いそうか?」


「ええ。ゲオークとゼニゲバにいたぶられた影響で、彼女の悪心はかなり育っています。……四日もあれば充分に馴染むでしょう」


「なら、それでいい。ナタルに伝えておけ」


「かしこまりました。さあ、マカリアも行きますよ」


「はい!」



 二人が部屋を出た後、サーティーンは再び窓の外に視線を向けた。

 そこには冥界――彼が支配する無機質で冷たい空間が、ただ無限に広がっている。


「……そろそろ、この空間も少し……イメージチェンジしてみるか」


 静かに呟いた声は、虚空に溶けて消える。

 やがて冥界は主の意思を映し、全く新たな姿を形づくるだろう。


――その変化の時は、もうすぐそこまで迫っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ