じいちゃんからお前への手紙
息抜きで書きました。
じいちゃんはな、嘘が得意なんだ。
嘘まみれで生きてきた。何もかもが嘘と本当が混ざり合って訳が分からん。
嘘だと思うだろ?これも嘘だからな。言葉ってすごく難しいんだぞ、例えば
じいちゃん昨日犬に吠えられてびっくりしてその犬に嚙みついてしまった!
もちろん嘘。ばあさん実は青森で生きてるんだぞ、これも嘘。
嘘なんか簡単につける。でもな、今の話を嘘だと言わなければ、
嘘とは思わないだろう?嘘って言ってないから。
信じさせたらそれはもう事実なんだ。どんな嘘でもな。
だからな、この手紙も嘘なんだよ。
じいちゃんなんか最初から存在してなかった。
これは残念ながら本当の話だ、お前がこれを読んでるずっと前にじいちゃんは
この世から旅立ってるからな。お前の名前も性別も知ることなく、
じいちゃんは旅立ってしまったんだ。
仏壇にじいちゃんとばあさんの写真が写ってるといいが、まあこれは
お父さんがじいちゃんをどう扱ってるかを信頼して書いてるんだけどな、
せめてじいちゃんとして生きたかったなと思ってる。
名前も顔もわからん、でもじいちゃんはお前を思ってこの手紙を残している。
読まれるかどうかも分からない、棺桶に一緒に入れられてるかもしれない、
でも確かにお前に向けて書いたこの手紙。迷惑かもしれんから、読み終わったら
捨ててしまっていいぞ。一度読めば充分だろう。お前もじいちゃんのことなんか
全くわからんからな。お前が生まれる前に旅立ってしまうじいちゃんなんぞ
じいちゃんとして失格だもんな。
だからじいちゃんは嘘をつく。旅立つ事なんか怖くない、寂しくなんかないとな。
心残りと言えばお前の顔を見ることができなかった事だな。まあ嘘だけどな。
何が言いたいんだこのジジイって思うだろ?じいちゃん嘘は得意だけど
文章に残すの苦手なんだ。書き方が分からねえから。
書き残すってバッチリ証拠になるだろ?じいちゃんはその場で嘘つくからな。
その嘘を墓まで持っていく。嘘って言わなければ嘘じゃないからな。
だからこの手紙は、お父さんに「じいちゃんは嘘つきなんだ」
ってばらすきっかけになるための手紙だ。
じいちゃんの事は手紙の人だでおしまいでいい。
お父さんお母さんはそういう訳に行かないだろ?
じいちゃんのこの手紙が、お話のきっかけにでもなれば、じいちゃんは
それだけでいいと思っている。まあ読まれてないかもしれんしな!
じいちゃんからは以上だ!お前の人生にじいちゃんなんぞ存在しねえ!
お母さんの方のじーちゃんはいるかもしれんけど。
わしは好き放題生きた。お前も好きに生きろ、生きることに疲れたら、
お茶でも飲んで深呼吸して、ゆっくり考えてみるといい。
一人で考えられることもほかの人に頼ってみるといいかもしれんぞ。
生き急がなくていい、のんびり生きろ。見ることが叶わなかったジジイの、
最初で最後のお前へのお願いだ。んじゃな!来世で会えるといいな!
ばあちゃんからの手紙
書く?書かない?気分次第。