9.白玉の提案または、賭け
茶館にて
「そんな話し、黒百合から一言も聞いてない!」
メイヨウは、驚いた。
黒百合とは血は繋がっていないのだ。まだあって一年と半年である。
「姉さんは俺のために龍界一の権力者に直版弾しに行ったんだ…」
間違ったら殺される確率だってあったのだ。黒百合の思いにメイヨウが目頭が熱くなる。
「弟を助けたいが為、自分の命一つで大会に臨んだ少女の勇敢さに敬意を示したかったのじゃよ。それに、龍族はもともと慈悲深い。一度相手のことを認めれば、それにこたえる種族だ。大会の議題は縁故主義の撤廃。大会の議題は達成されているしな」
茶をすすり、黒蚩尤は言った。
「えっと、黒百合姉さんが勝ったから俺がこの茶館によばれたの?」
「違います。メイヨウ、貴方が白玉との賭けに勝ったからです。」
考え込むメイヨウに飛が答えた。
「賭けってなに?」
「まだ話が終わってないのだ。ここからは飛が話をしよう」
黒蚩尤が飛に話をふる。飛が形のよい唇を開く。それから妓楼の主である。白玉の話になった。
★★★囲碁大会にて
大会終了後、黒蚩尤は四島の権力者と八潮と会合を開こうとした。しかし、領主、白玉は参加を嫌がった。
「軍師と言えば聞こえがよいが、龍滅大戦の大罪人である、白龍八潮と一緒の席などお断りしたい。
あの戦争でどれだけ、四島に負担をかけたかご存じか。四島が大切にそだてた、三本爪の龍が絶滅しました。
反感をかったのが分かった、貴方の弟の黒龍雅麟が四島の国民からの謀反を恐れて、我ら四玉の身内を人質にとっている。
現に我が娘、紅龍姫は雅鱗の部下、暁月に赤子の頃から囚われて監視されて育てられている。
龍滅大戦がおわった、いま現在も人質のままですよ。それと比べれば、一人の娼婦の涙など小さく、すぐ死ぬか弱い人間の少年など長命な龍と比べれば虫けらの命。黒蚩尤様、少女の涙に絆されただけです」
白玉が黒蚩尤に忠告する。
「しかし、確かにあの娘は強かった。数々の龍族の棋士を倒した。並の精神力じゃない。私はあの娘に敬意をしめすとともに、我が息子、雅鱗が迷惑をかけていることを謝る。長い月日、私の力が及ばす、四島、四玉には苦しい思いをさせた。どうか許してくれ」
黒蚩尤が深く頭を下げるのを四玉は驚いた。
齢い四千年の龍が頭をさげたのである。半龍で寿命の短い白玉の言葉に。
「頭を上げてください」白玉が慌てて黒に頭をさげるのをやめさせた。
「しかし」まだ言う黒蚩尤に白玉は続ける。
「黒蚩尤様の謝罪に深く痛みいります。
けれど、謝るべき雅鱗が謝罪の意を示していない。その証として、四島から追放した我が親友、飛龍を四島に呼び戻してください。
雅鱗は人望のある息子の飛龍に地位を譲るのが嫌で、飛龍を四島から放逐した。飛龍が四島に戻りましたら、黒蚩尤様は私と賭けをしましょう。では飛龍が四島に戻るまで、この話はお預けです」
白玉は踵をかえし、白龍八潮の目の前をわざと無視して通り過ぎていった。
白龍八潮はその背中に思わず投げかけた。弟である雅鱗の秘密の話を。