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17.メイヨウと黒龍雅麟2

「間に合ってくれ!」

メイヨウは、飛翔術で茶館へと向かう中、心の中に渦巻く不安と決意を抱えていた。


メイヨウの術師の師匠である黒蚩尤こくしゆうと、その息子の黒龍王、雅麟がりんは思想の違いから仲が悪いと聞いた。


風を切り、茶館の黒い瓦屋根を見えてきた。

メイヨウの視界には、黒と金の濁流が揺らめき、強大な力が彼を待ち受けていることを示していた。


「あぁッ……なんだ、この味!」

えぐ味をふくんだ味が舌先にふれた。

思わず吐き気がする喉もとをおさえる。


何が起こるのか、彼は予感していたが、その恐怖を振り払うように心を奮い立たせ、足を進める。


「喉がただれる…ジジイ、無事か!」

空中から素早く着地。玄関から部屋にに踊りでる。

部屋は金と黒の濁流で、部屋の様子がわからない。

「来たか!小僧!」

部屋の中心から恫喝するようは怒鳴り声とブンと鈍い音がした。


瞬間、メイヨウに黒蚩尤の骨ばった体がぶつかって来た。衝撃を受け止めて二人は家財道具を背中に派手に横転する。


ザッ、ザッ、ザッと、草履が床をする音が近づいてきた。


「我が与えた、支援器具の調子はどうだ?」


低い声と共に、金色と黒の濁流の中から、黒い袈裟姿の豪傑が現れた。


短く刈り込んだ頭にある、二対の角は折れている。それが迫力を伴って、金の瞳の強靭な男がメイヨウを見据えた。


「黒龍王、雅鱗。てめぇ、ジジイをどうしやがった!?」

メイヨウは怯むことなく、怒鳴り返す。


「そなた、共感覚の持ち主だろ。

感覚でわかるだろ?それは死期がちかい。

死への旅路に花向けに少し叩いただけだ」


雅麟の言葉に、メイヨウは黒蚩尤の脈と心臓の音を聞く。味も匂いも苦いままだが、気絶しているだけだ。


「俺はアンタに、支援器具の調整をお願いした。なんでジジイが殴られるだよっ!」


睨みつけるメイヨウを雅麟は無視して言葉をなげる。


「小僧、『個性』の話をしようか?お前は、支援器具を使って自分の感覚を操り、味覚、聴覚などの五感を調整しようとした。疲労や、嫌な味を、なるだけ味わないように。違うか?」

今にも戦闘が始まりそうな黒龍王が冷静に問いかてくる。


「そうだ。それが何が悪いんだ!」

「悪くは無いが、無駄なだけだぞ」

「どうして!?」

メイヨウは声を荒げた。

やっと、不自由から解放されて人並みの感覚で生きれるようになったのだ。


「今まで眩しすぎて、明るい道をあるけなかったり、音が聞こえすぎて頭痛がしたり、酷い目にあってきた。誰だって心地よく生きたいと思うんじゃ駄目なのかよ!」


「よく、考えろ。お前は一生、器具に頼るのか?そこに居る黒蚩尤だって、昔は若く強かった。しかし、いつかは老いて、体が脆くなりお前の様に生きづらくなる。」


メイヨウと雅麟は暫し睨みあい、メイヨウが口をひらいた。

「困った時にどうやって生き抜くか対策を取れっていってるのか?」


「及第点にもならん。

まぁ、もっと自分を理解しろ。一先ず、ソレを自分の手で修理できるようになれ。その時、また話をきいてやる。」


金と黒の洪水を纏いながら、雅鱗はゆっくりと扉にむかう。ピタリと、止まり振り返った。


「世間は残酷で厄介だ。我は千年だけ龍界の幸せを願い。我慢して生きた。しかし、幸せじゃなかった。だから、戦争をおこし、龍界を壊して愛する兄を手にいれた、今は、すこーしだけ幸せだ。またな、小僧」


黒龍雅麟の壮絶な表情に、メイヨウは口をつぐむ。パタンと扉がしまり、部屋の空気の重さが変わった。

「俺は、誰かの不幸の上にある自分の幸せなんて嫌だね。アンタみてぇには、ならない」


メイヨウは、支援器具を取り外すと見えにくい目で部屋を見回した。

その赤い瞳には強い意志があった。


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