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15.メイヨウの共感覚と新たな敵

「ねぇメイヨウ。貴方に、コレをあげるわ」

黒百合はメイヨウに青く色づいた遮光眼鏡を渡した。

「黒百合姐さん。コレどうしたんだい」

メイヨウは初めて手渡される遮光眼鏡を恐るおそるかけてみる。

「眩しくないし、目が痛くない」

黒百合は得意げに、

「保健所のお医者さんが診察して、眼鏡屋さんにお願いして、メイヨウ専用の眼鏡をつくったの。これで前より、生活が楽になるといいわね」

と、メイヨウの顔を両手で包んだ。

しかし、この眼鏡はメイヨウには合っていなかった。何故なら、メイヨウは紫外線や熱を察知し、さらに誰かの呪いまで見分けられた。

これが判明するのが、黒蚩尤にメイヨウが弟子入りした後のことである。


★★★メイヨウが黒蚩尤に弟子入りし、飛龍と兄弟弟子になってから


「新しい補助器具の具合はどうだい?」飛龍は義理の弟になったメイヨウに声をかける。


「視覚支援機器によって、温度や紫外線をローラ式スイッチによって切り替えられるのは楽になった。聴覚補聴器も、周波数の聞き取りの増減や雑音のノイズの排除はいい。機能の追加を希望したい。聞いた音が文字化して視界に浮き上がったり、音が味覚化したりするを防ぐ機能か欲しい」


メイヨウが奇妙なことを言う。そう彼の感覚は敏感で独特だ。


聞いた音が文字として視界に現れ、聞いた音が味として口の中に現れる。

共感覚と言う特徴らしい。


「それは余りよい判断では無い気がする」飛龍はメイヨウに柔らかく諭す。

「飛龍、なんでたよ?俺は、この特徴が辛い。人より疲れやすい。兄貴は丈夫だから、言えるんだよ!」

メイヨウは理解を得られないことに、飛龍に声をあらだてる。


「その機能をつけたら、君の日常生活に支障をきたすのでは?それは、人が痛みを感じるのを排除するのと近い気がする。

痛みは辛いが生命の維持に役立っている。

メイヨウが疲れやすいのは人より知っているから、技師達に提案はしてみるが…余り期待しないほうがよいよ。できるかも分からないから」


「兄貴、俺は、この特徴を治したいんだ!

人と同じになりたい」


「メイヨウ、それは無理だよ。君には君の個性があるだから、その感覚は大切にしたほうがいいよ」

憤慨するメイヨウを飛龍は、思わず抱きしめる。気の強い彼が泣き出しそうな顔をしたからだ。


「じゃ、具体的に言う。黒蚩尤のジジイの調子が前より悪い。ジジイの言葉の味が段々と苦くなってきた。死期がちかい。死ぬ間際の言葉を味として感じないといけないのか?」


メイヨウは真剣に悩む。それが本当なら、祖父である黒蚩尤の体調も心配だ……。


「それは、私にも君にも辛いな」

飛龍は優しく諭す。


「ああ、だから、その感覚を無くせるなら治したい。できないなら、少なくしたい。補助器具の技師を紹介して欲しい。一緒に試行錯誤したい」メイヨウが真剣な表情で頼む。彼の視点は彼個人ではなく、龍界全体を見ているのだろう……補助器具を作る希望と黒蚩尤の死期を飛龍に伝えるのは勇気がいったにちがいない。加えて、黒蚩尤こくしゆうが死んだ後の四島の権力者が誰になるか早めに動けとの催促だ。


彼は子供だが生い立ちが複雑。ゆえに大人だ。

「技師は、師父の知り合いらしい。お伝えしてみる。」飛龍は内心悩んでいた。メイヨウの体質が本当に治るのなら嬉しいことではあるが……。しかし、このことを黒百合に話したら彼女も同じことを言っただろうか?


「ありがとう。兄貴」メイヨウは少し晴れやかな顔で礼を言った。


「でも、それは君の個性だから大切にして欲しい。君の得性により、四島が守られていることも事実だ。今日から一週間、穢れによる災厄はどんな感じだい?」


メイヨウの感覚過敏は稀な才能でもある。彼は五感から、四島の自然災害やその他を事前に察知する事ができる。そして、その情報から予想される災厄に対処すべく人々の誘導をして四島の民を助けている。

「今回は飛びっきり酷そうだ。災害より、酷い『誰』かが来る」

メイヨウは、飛龍に告げる。


「視界に映る色は黒と金。味は辛いを通り越して痛い」

メイヨウは舌をだしてうんざりした顔をした。


「天界と人間界を往復する貿易船と貨物線と四島の結界に注意するとしよう」飛龍は思考する。天界からの移民、穢れが降り立ったか……。四島は世界の境界にあり結界が存在するため外的要因の災いを受けにくい。

だが、守りきれない事案もある。その事は飛龍とメイヨウは重々承知していたし、対処もしている。


「兄貴、黒蚩尤のジジイに技師のことも含めて、『誰』か来ないか聞いてなくれ」

メイヨウは気だるそうに言う。


「わかった。聞いてみよう」

飛龍はそう答えた。

このやり取りが、後に四島に混乱を起こすことは二人は予想できなかった。


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