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1.俺の名前と記憶は?


「酷い人生だな…生き残るってムズイ!」

力は正義。弱さは悪。記憶喪失の上に住所不定無職。この階級社会の龍界の四島で少年はボロ雑巾のように、ゴミ捨て場の上に転がっていた。


「記憶喪失なんて、どうやって治せばいいんだ!」

まだらの記憶の中、誰かと戦って返り打ちにされた。それから龍界に放り込まれた事しか覚えていない。痛む体を引きずって浮浪児として生き延びた。


赤い瞳に白い髪が災いした。

アルビノの自分は忌子と嫌われた。

龍界に住む人間が少ない上に、自分は異相だ。


「差別の強い龍界で人間の俺が生きるにはどうしたらいい…」

差別の強い龍界での子供一人どうやって生きていけるのだろう。暫く何も食べていなくても生きていられるのは誰かが貸与してくれた呪力のおかけだ。それもつきかけている。


「腹が空きすぎて起きれねー!」

肉体は残酷だ。飢餓感は襲ってくる。起きる気力もない。


「笛でも吹いて、sosでもだしてみるか…」

指先に触れた薄いケーキのセロファンを乾いた唇に押し当てて草笛の代わりにする。甘い菓子の残り香で飢えを凌ぐ。


「そこにだれかいるの?」

ガサゴソと音がして人影が路地裏のゴミ置き場に現れた。


「ヤベ!管理人か?また無理やり鉄の棒で打ち捨てられるのは嫌だ!」

慌ててメイヨウは起きあがろうとするが、誰かの方がはやく近寄ってくる。


とてもとても、美しい少女だった。

銀の髪に褐色の肌、エメラルドの瞳。

人形のようだ。


「周波数でモースル信号を打ってる馬鹿は何処にいる?」

甲高い少女の声がする。これが少年と少女(?)の初めての出会いだった。


「アンタ、人間だな。龍界の半龍や神人じゃない。何の用だ」

少年の鋭い眼光に怯む事なく、アンバーはメイヨウを品定めするように見た後、言った。

「その赤い目はアルビノだな? 龍界では珍しいね」

声をかけてきたのは、偉く綺麗な格好をした美しい少女だった。


「俺は龍界の出身じゃない」

「なら、吸血鬼のいる鬼界かい?」

「違う。思い出せない」

「はぁ。とんだ厄介なのを姐さんに拾ってこいって言われたな。まぁいいか、拾ってやる」

「は?」

「たぶん、そういう運命だ」


アンバーの人離れした美しさに少年はゴクリと喉をならす。有無をいわさない態度で、彼をむりやり立たせて手を引く。痩せ細ったメイヨウの服が風になびいてハタハタと音がする。


「お前名前は? アタシはアンバー」

「……名前はない」

「そうかい。じゃあ、メイヨウ。龍界じゃ無いは没有メイヨウと書くんだ」

「メイヨウ。……俺は、メイヨウ」


少年は初めて自分の名を得た。その名は、アンバーがくれたものだ。

それが二人の出会いだった。


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