3話 変化
「さっ、着いたよ。」
奴は一つの扉の前に止まり、振り返りながらそう言った。
そして扉を開けて入って行った。
わたしはそれについて行った。
「なに...これ...」
そこにあったのは非人道的な実験.........ではなく一枚の大きな鏡。
そして驚いたのは自分“らしき”人物の姿。
右腕を動かす『それ』も右腕を動かす。
左足を上げる『それ』も左足を上げる。
自分が何かを動かす『それ』は全くもって同じ動きをする。
嫌でも理解した。『これ』が自分の姿なんだと。
美しいと何人にも言われてきた蒼穹の目の左目は暗い紫に、
綺麗と言われた銀色の髪は左半分が漆黒に、
そして何よりも、顔の左半分が黒く染まっていた。
縦に一直線ではない。ほうれい線辺りで左にカーブはしている。
「それじゃあこれ、服ね」
そう言い奴は私の服を床において部屋を出て行った。
着替えろってことだろうか?
私は何も考えず着替えることにした。これ以上は気が狂ってしまいそうなのだ。
取り敢えず病服を全て脱いだ。
すると、まぁ、何というか...想像通りだった。
体は肋骨に沿うように左側が染まっていて、左腕は手首まで染まっている。
更に右足の太股の半分辺りから爪先までもが染まっている。
ベンタブラック級の黒さだから立体感が一切分からない...
そうして着替え終わる。
半袖の白シャツに青緑色のベスト、動きやすい膝丈のスカート。
自分から見て右側に黒リボンが付いている黒のカチューシャ。
黒の靴下に青緑色と白色のスニーカー。
「よし...いつもの服装...」
病服を持って部屋を出た。
「どうして女の子は着替えるのに時間がかかるのかね~」
そうため息をつきながら奴は言ってきた。
急いで5分で着替え終わったのに...
「それじゃ次のところに行くよ」
そう言い歩き出したので、ついて行った。