#94 楽しそうに?
「ゆーやちゃんっ!お帰り~♪」
班長決めから数週間後、優弥が学校から帰るとリビングから顔を出したのは奏太の姉、奏だった
『あれ・・・?どうしたの?』
奏は優弥の兄、祐人と一緒ににテレビを見ていたようだ。
優弥の問いに奏太の姉は寂しそうに答えた
「だってぇー、折角帰ってきたのに家に誰もいないし奏太だっていなくて寂しかったから・・・」
『奏太ならもう帰ってきてるよ?』
優弥がそう言うと奏太の姉は「ほんとっ?!」と、嬉しそうに帰っていった
『ご飯は?』
「そこ」
そういって祐人はテレビを見ながら食卓を指差した
『おぉー、ビーフシチュー♪』
机の上にはラップされたビーフシチューがあった。まだ少しあったかい。
優弥は食卓についてテレビを見ながらご飯を食べ始める。
テレビではちょうど修学旅行先の沖縄の紹介がされていた。
『修学旅行かぁー・・・』
今日、学校で奏太の班長の件で未だに千秋と奏太はもめていた。
結局奏太がやることになったのだがその代わり副班長は千秋ということで解決した。
『副班長って。仕事少ないじゃん』
「なにブツブツ言いながら食べてんの?」
祐人が笑いながら優弥を見ていた
『あのね、修学旅行の班長が何故か奏太に決まってねー、それでね』
優弥は話している途中に祐人が驚いた表情で優弥を見ていたことに気付いた
『・・・何?』
「あ、いや。楽しそうに話すなぁーって。」
優弥にはよく意味が分らなかった。首を傾げる。
『どういう意味?』
「今まではさ、奏太の事話す時はいっつも怒ってたじゃんか」
『え?・・・そう?』
俯いた優弥を見て祐人は楽しそうに笑った
「優弥の彼氏がまだ奏太でよかったよ。きもい人とか性格最悪な人だったらどうしようかと」
祐人の言葉に優弥は顔を上げた
『あれー?!お兄ちゃん私と奏太が付き合ってる事知ってたっけー?!』
祐人に、奏太と付き合っていると話したことはあったか?と優弥はいろいろと過去を振り返ってみた
祐人は立ち上がってリビングのドアの前で優弥の方を見て笑った
「何言ってんの。去年の学祭の時俺見たじゃん」
そう言って祐人はリビングから出て行った。
『あ、そっか。・・・楽しそう、ねぇ・・・』
優弥は奏太との事をいろいろ振り返ってみた
『まぁ、よくここまでになったもんだ』
と、優弥は一人で頷いていた。
ふと、カレンダーをみて気付けば明後日が修学旅行となっていた。