#88 お誕生日会。
『ん~・・・』
春休みに突入したある日の昼11時。
ようやく優弥はベッドから出てきた。
『眠・・・』
目をこすりながら階段を下りていると突然携帯の音がしたので再び部屋に戻った。
『もしもし?』
「あ、優ちゃん?」
この可愛らしい声でわかった。静香だ。
「あのね、今日ちーちゃんが私のお誕生日会をしてくれるんだって!」
『千秋が?』
「そう!優ちゃんも来ない?」
そういえば今日、4月5日は静香の誕生日だった。
『ん、行く。何時から?・・・・わかった。・・・うん、じゃぁね』
電話を切って再び階段を降りはじめた。おなかがすいた。
夕方4時30分。優弥は奏太を迎えにいった。
『そーうた!早く!!』
玄関から奏太が暗い顔で出て来る。
『・・・?何でそんな暗いの』
「コンタクト落とした」
『あぁ、それで眼鏡かけてんのか』
バカにしながら笑ってやったら足を思いっきりふまれた。いたかった。
夕方4時55分。約束の時間は5時。
5分前に静香の家に着いた。
家の中から静香が出て来る。
「優ちゃん!奏太君!いらっしゃい!ちーちゃんもう来てるよ」
『お邪魔しまーす』
静香の部屋に入ると机の上にケーキが置かれていた
『おぉ!静香が作ったの?』
静香の方を見ると静香は首を横に振った。
「ううん、ちーちゃんが作ってきてくれたの」
『へー。千秋こんなん作れたんだ』
ふと部屋を見渡してみると千秋の姿は無かった。
『千秋は?』
「ちーちゃんなら竜ちゃん迎えにいったよ?」
『へーぇ。カナは?』
「そろそろ来る頃だと思うよ?」
『じゃぁもう少し待つか。』
優弥の言葉に奏太が反応した。
「"じゃぁ〟って。お前カナがもう少し遅かったら先に始める気だったのかよ」
『うん。そうだよ』
別にそんなつもりは無かったのだが、笑顔で答えてやった。