#80 自信。
空はだんだんと薄暗くなって来ていた。
教室に残っているのも優弥ただ一人。
その優弥は日直の為、黒板の前でぴょんぴょん跳びながら懸命に黒板を消していた。
『・・・届かないし!』
刹那、急に優弥の手から黒板消しが無くなった。
・・・いや、誰かに抜き取られた。
『・・・?』
後ろからは、奏太の香水の香りがした。
(奏太・・・?!)
しばらくの沈黙。
久しぶりのこの香りに、胸が高鳴る。
『・・・・・・・・・・ありがとう』
優弥はそう呟いて優弥の机の上にあった日誌を手に取って走って職員室へ向かった。
「えーっと、とりあえずここでこれをまぜて」
時が経つのは以外に早い。
あっという間にバレンタインが翌日に迫った日の放課後。
優弥と千秋と静香は調理室でチョコを作っていた。
『あとは冷やすだけ』
優弥がそう言った途端、調理室に叶が入ってきた。
「なんかいい香りがする」
「カナちゃん!何でいるの?」
静香が嬉しいような驚いたような表情でいた。
「今日日直だったから。ね、ね、これ僕にもくれるの?」
叶は可愛らしい表情でチョコを指差す。
「うん!明日のお楽しみ♪」
2人の世界に入ったところで千秋が邪魔するように突然呟く。
「カナはどちらかというとあげる側じゃないのか?」
「もう!ちーちゃん!カナちゃんは男の子だよ!」
静香はぴょんぴょん跳ねながら千秋に言った。
『一応ね』
優弥が呟くと叶は楽しそうに笑いながら帰っていった
『・・・・・はぁ』
急にため息をついた優弥を心配するように千秋は顔を覗き込む。
「・・・どうした?」
『・・・自信ない』
「は?ここまで来ていきなりどうしたんだよ」
『だって・・・この前も無視されたし、品浜さんにもあんなこと言われちゃったし』
以前、悠希に「でも喧嘩中のくせに、そんな状況でよく言えるね」と言われたのが今更になって頭の中で繰り返し流れる。
確かに、バレンタインに奏太と仲直りできるという自信はない。
奏太の事情も聞かずに勝手に怒った優弥が悪いのだから。
「・・・何あったか知らねーけど、お前等なら仲直り出来るだろ」
『うん・・・ありがと。千秋』
「別に」