#75 気になるコト。
「ちぃーあーきーっ!」
後ろから竜の声がしたので振り返ってみると、屋上の入り口付近に奏太と竜と叶がいた。
「んかんか。千秋はそんなに僕のことが知りたいんだね」
竜が千秋に肩を組んできたんで千秋はめんどくさそうに振り払った。
「てか、お前ら知らなかったっけ?」
パックのミックスジュースを飲みながら奏太が言った。
『知らない知らない!!』
優弥がぶんぶん手を振ると突然竜が語りだした。
「千秋が来たのは本当の俺んちじゃあなくって、ほんとの家はぁ、あれ!」
すると竜はものすごく高いマンションを指差した。
『えぇぇ?!あのマンション?』
「とーちゃんが、しゃちょさんやってんの♪」
竜は笑顔で再び千秋の肩に手を回した。
「しゃちょさん?!」
それからも竜への質問が長々と続いた。
そんな会話に適当に返事していた優弥には、最近気になっていることがあった。
クリスマスの日の悠希からのメール。それは奏太と悠希のキスの写真だった。
でも、この関係が崩れるのは嫌だったので優弥はまだ誰にも言っていなかった。
「・・・何?」
『え?』
突然奏太に話しかけられた。
自然と奏太の方を見てしまっていたようだ。
『べ・・・べつに!』
「じゃあこれ捨てといて。」
奏太は優弥にジュースのパックを押し付けてどこかに行ってしまった。
「何だよ、それ」
放課後、電車の中で竜の耳にぶら下がっている人気キャラクターのピアスを見た千秋が急にそう言った。
「あ、気付いたぁ?」
「ね、そういえばピアスといえば、ゆーちゃんと奏太君。おそろいでつけてるよね」
突然静香が優弥の所を向いたのであわてて耳元を手で隠した。
奏太は平然としていたが。
静香の話に千秋が食いついてきた。
「おぉ?!ちょ、見せろ!」
『やーめーなーさ・・・』
千秋とふざけあってると、優弥は視線を感じた。
横を見ていると叶が寂しそうな目でジーっとこちらを見つめていた
『う・・・』
子犬のようなその視線に耐えられなくなり、仕方なくピアスお披露目会が勝手に開催された。