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#69 イルミネーション。
「奏太君もここのバイトだったんだ」
もう店も閉めて真っ暗になった喫茶店から家に帰ろうとした奏太は悠希の言葉で振り返った。
「何?まさか私のこと追いかけて?!」
「んなわけあるか。」
「へへへ、残念。ねー、クリスマスデートしようよー?」
「残念ながら先客がいるもんで」
「えー・・・」
『そーうた!』
翌日の放課後、優弥は雑誌を持って奏太の席へ向かった。
「あ?」
『ここ!ここ!ここのイルミネーション見たい!』
と、雑誌を指差した。
「・・・いつ?」
『だからクリスマス!』
「あぁ・・・。いいんじゃないの?そこらへんはご自由に。」
『なにそれー』
と、奏太は鞄を持って歩き出そうとした。
「じゃ、俺今日竜ん家よってくから」
『いってらっさぁーい・・・』
「ただいまー」
優弥が夕食を食べ終えて部屋に戻ると玄関で声がした。
『おかえりー?』
誰かと思って覗いてみると玄関には兄がいた。
『あれー?学校は?』
「冬休みなったから戻ってきた。母さん達は?」
『いや・・・まだ誰もいないけど?』
「ふーん」
そう言ってあっさり自分の部屋へ行ってしまった
『ごはんはー?』
「いらない」