#59 始まりは些細なコト。
今日も何とか学校が終わり、いつもの6人で帰りの電車に乗っていた。
1番最初に静香と叶が電車を降りて、電車を降りた後も帰り道が途中まで一緒なのでしばらく一緒に帰っている。
静香は今日の学校での出来事を思い出した。
あまりにも展開が遅すぎるため千秋が大量の少女漫画を貸してくれたのだ。
と、いろいろ考えているうちに分かれ道にたどり着いていた。
「しーちゃん?」
静香がぼーっとしていると叶が静香の顔を覗き込んでいた。
「え?何?」
「ここでばいばいだよ?」
「あ!うん」
(確か・・・ちーちゃんの漫画ではここでちゅ・・・ちゅーしてた・・・)
そんなことを思い出して静香は叶の服の袖を引っ張り、しばらくじっと叶の顔を見つめてみた。
「カナちゃん・・・」
「しーちゃん?ばいばい♪」
「え・・・?あ、うん」
そういってあっさり帰って行った。
「・・・帰っちゃった」
『え?ちゅーされなかった?!』
次の日、静香は教室で優弥と千秋に昨日の出来事を話してみた。
「それって別にカナは静香のこと好きじゃないとか?」
『こらこら、千秋!』
「え」
『あぁ!!別にそんなわけ無いじゃん!ほら、カナ結構鈍いから「ちゅーして?」くらい言わないとさ!!ね?千秋ー!!』
「・・・」
優弥は必死にそう言ったのだが千秋からの返事がない。
静かに千秋の方へ顔を向けると千秋はいつの間にか机に顔を伏せてぐっすりと眠っていた。
『こんな時に寝るなぁーーー!!!』
優弥はかなり必死に千秋の体を揺らすが起きる様子が全く無かった。
「好きじゃない・・・・好きじゃない・・・」
魂のぬけたような顔で静香はどこかへ歩き出した。
『しーずかー!!何処行くの?!』
「わかんないぃぃぃ・・・」
そう言いながら教室を出て行った。
『大丈夫かなぁ・・・てか千秋ー!!起きろー!!!!!!!』
「ち・あ・きぃ~♪」
そのとたん、アホみたいな顔で竜がやってきた。
机に顔を伏せて寝ている千秋の真横にしゃがみこんでそのままぐんぐん近寄っていく。
「眠り姫はチューすると起きるんだよぉ♪ちゅぅー・・・」
「人が寝てるときに何しようとしてんだよっ!」
千秋が飛び起き、見事に殴り飛ばした。
『この2人も大丈夫なのかなぁー・・・』