#57 見透かす。
「38.2℃」
『すんません・・・』
保健室のベッドで横になっていた優弥は奏太の言葉を聞いて驚いた。
体温を測ってみると熱があったのだ。
職員室へ行っていた保健の先生が戻ってきた。
「今、如月さんの家誰もいないんだけど・・・1人じゃ帰れないよね?」
困った顔で奏太をみつめた。
「藤波君・・・悪いんだけど如月さんの家まで連れて行ってあげてくれない?」
奏太が優弥を睨んだ。
「めんどくせぇ・・・」
『・・・すんません』
「寝てたらそのうち直るだろ。俺は学校戻るから」
優弥の家に着くなり、適当な言葉を残して奏太は学校へ戻っていった。
奏太に言われた通り、優弥はとりあえず寝ることにした。
奏太が優弥の家を出ると、千秋が居た。
「優弥が心配になって。授業サボってきた」
そう言った千秋はにやりと笑って話を続ける。
「お前さ、朝わざと優弥起こさなかっただろ」
「喧嘩の盗み聞きかよ。嫌な趣味」
「お前等がうるさいから聞こえてくるんだよ!・・・お前等喧嘩ばかりするし心配になってたけど大丈夫みたいだな」
「は?なんでだよ」
「駅反対方向。どうせ薬局でも行くんだろ?」
何もかもを見透かしたような目で、千秋が笑った。
優弥っが目が覚めるといつの間にか夜の7時を過ぎていた。
『・・・もう夜か』
と、枕元にビニール袋が置かれていた。
『・・・?』
何かと思って空けてみると色々と薬が入っていた。
と、ケータイが鳴る。千秋からだ。
『もしもし・・・?』
「おー。優弥?大丈夫かー?何かお前の旦那が色々と薬買ってたぞ。感謝するんだな」
『奏太が・・・?』
「うん。もういいから寝とけ。じゃあね。」
と、電話が切れた。
部屋の外から、誰かが階段を上がって来る音が聞こえる。
『お母さんかな・・・?』
戸が開いて優弥の部屋に入ってきたのは奏太だった。
「あ、起きてた。お前の母さん帰って来てたぞ」
『うん。あ!コレ、薬ありがとう』
「別に。俺もう帰るから」
と、ベランダから自分の部屋へ戻っていった。