#56 マラソン。
2限目は体育でマラソン。
こんな寒い時にマラソンをすると言い出した先生を恨みながら優弥はグラウンドに居た。
『さっむ!!!』
体育の先生は無駄に熱血なので必ず半袖半ズボンにしろといわれている。こんなに寒い日でも。
優弥は朝、頭がくらくらしていたのがまだ続いている。
『はぁ・・・』
チラリと奏太を横目で見る。
男子はもう走り終えたのでこの寒いのに汗をかいて水を飲んでいる。
奏太は1と書かれた紙を手に持っていた。・・・1着か。
「女子ー!走るぞー!並べー!」
先生の掛け声とともに女子がスタートの準備をしだした。
「奏太にまけたぁぁ!」
竜が2着の紙を持って奏太の肩に手を回した。
「重い」
丁度中間の順位でゴールした叶もよりそってくる。
「みんなはやくていいなぁ」
「いやいや、カナは遅いままでいいし。」
しばらくして、だんだんと数人の女子がグラウンドに戻ってきた。
なかなか優弥の姿が見えない。
「あれれー?ゆーやん珍しくおそいねぇー」
竜の言葉にはっとする。
「アイツ・・・」
奏太は急に立ち上げってどこかへ駆けていった。
「奏ちゃん?」
「そーたぁ?何処行くのー?!」
優弥は中間地点くらいで立ち止まっていた。
『はぁー・・・どうしたんだろ私・・・』
頭がくらくらする。立っているのがやっとだった。
「優弥!」
急に奏太の声がした。
びっくりして振り返る。
『奏太?!』
「はぁ・・・だから起こさなかったんだよ」
『え・・・?』
安心した優弥は思わず奏太のところへ倒れ込む。
奏太は倒れてきた優弥を支えた。
「あんな雨のなかわざわざ指輪なんか探してるからだよ」
と、呆れた顔で優弥に言った。
『・・・?』
頭が朦朧としていた優弥はいつの間にか奏太の腕の中で眠っていた。