#54 雨と指輪と草むらと。
時計の針の音だけが静かに響く優弥の部屋。
ベッドの上には倒れこんだ優弥と、その上には奏太。
「いってぇー・・・何やってん・・・」
奏太が顔を上げた。優弥は思わず焦る。どうすればいいのか、この状況。
その時、外が光って雷が鳴り響いた。
『ぎゃぁ!!!!!!!!!』
当然のように優弥は怖がった。奏太は呆れた顔で優弥を見ている。
『あ』
「・・・」
『・・・すいません』
奏太が立ち上がる。
「一晩中一緒にいるわけにもいかねぇし、雷怖いならさっさと寝てろ。」
いつの間にか時計の針は9時をさしていた。
寝るのには少々早い気もするが雷が怖いのではやく寝ることにしよう。
『・・・そうします』
優弥がそう言うと奏太はベランダから自分の家に戻っていった。
奏太は自分の部屋の窓とカーテンを閉めた。
どれだけ雨が降ってるのか確認しようと優弥はベランダに出て外を覗きこんだ。
刹那、運悪くネックレスのチェーンが切れた。
『えっ?!』
奏太に貰った指輪は呆気なく庭の草むらへ落ちていく。
『嘘でしょぉ?!!!!』
急いで庭まで駆けていった。急いで指輪を探す。
真っ暗で雨が降っていて、しかも草むらに落ちてしまったのでなかなか見つけることが出来なかった。
『もぅ~!!!何処行ったの!!!』
優弥は傘もささずに大雨の中探し続けていた。
『・・・?』
急に雨が降らなくなった。と思って空を見上げると傘をさした奏太がいた。
「・・・何やってんの」
呆れた顔で優弥を見た。
『奏太から貰った指輪落とした・・・』
「んなの探すの明日でもいいじゃん。こんな雨のなか探したら風邪ひくぞ。」
『犬か何か持ってっちゃうかもしれないじゃん・・・』
「んなのいつでも買うし」
『あれじゃないと嫌なの!』
小さい頃から2人は喧嘩ばかりしてたので誕生日を祝うことなど無かった。
『はじめての、プレゼント・・・』
「・・・あ、あれじゃないの?」
『え?』
しばらく呆れた顔をしていたが奏太が急に木を見て言った。
木には指輪がかかっていた。