#53 指輪。
優弥は夕食を食べている途中、ふと手を止める。
『そういえば奏太の家の人は?』
「知らね。どっか出かけたんじゃない?」
『ふーん・・・てか奏太頭ふきなよ』
「いい。そのうち乾く。」
『だめだよ!!風邪ひくよ!!』
優弥は肩にかけてあった奏太に借りたタオルを奏太に渡した。
だが奏太は拭かずに頭にかけただけだった。
「ごちそーさん」
『速っ!』
と言って奏太は食器を片付けて再び席についた。
・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
「お前食うのおせーよ!!!」
急に奏太が怒鳴りだす。
『うるひゃい!!!!アンタが速いの!!!』
「もっと速く食えよ!」
『うるさい!』
2人きりになっても2人の態度は相変わらずだった。
『ほら!食べた!ごちそーさま!!』
「遅い」
再び優弥の部屋へと戻る。
入るなり奏太が優弥の首についているネックレスを見つける。
「ん?これ・・・」
ネックレスのチェーンには奏太が優弥の誕生日にあげた指輪が付いていた。
『あぁ。これ?手洗った時とか濡れるの嫌じゃん?だから指より首にしようと・・・』
「ふーん」
奏太が喰らいつくように優弥の指輪を見つめた。
『え・・・あの・・・』
あまりにもじぃーっと見るので少しづつ、後ずさる。
奏太は指輪を手にとって見ている。優弥はだんだん後ろへ下がる。
『わっ!』
「?!」
途中、何かでつまづいてバランスを崩した。
指輪を手に取っていた奏太も巻き込まれて2人で、倒れ込んだ。




