#41 姉と兄、そして女装少年?
奏太からの初めてのプレゼントは指輪だった。
優弥は今日も指につけて学校にいる。
「あー・・・めんどくせぇー・・・」
今日は文化祭なのだ。優弥たちのクラスはお化け屋敷。奏太と優弥で教室の前に机を出して受付を担当していた。
奏太のおかげで客は(殆どが女子)たくさんくるが、働いているのはほとんど優弥だった。
『ちょっと!奏太も働いてよ!!!』
「やだ」
奏太はめんどくさそうにしていた。一方、優弥ははりきっている。
体育大会は面倒だが文化祭は大好きなのだ。
机の上に置いてあった携帯電話の音がした。奏太のケータイだ。面倒そうに奏太は電話に出た。
「もしもし・・・は?誰だよお前・・・はぁ?ちょ・・・」
電話が切れたらしい。奏太は電話をポケットにしまった。
『?・・・誰?』
優弥が聞くと奏太は小さな声で呟いた。
「奏」
"カナデ"とは奏太の姉。優弥にも"祐人"という兄が1人いて2人共大学2年生なのだ。
小さい頃、両親が共働きだった優弥にとって兄が親代わりだったが今、兄は1人暮らし中で時々家に帰ってくる。
「祐人と一緒に今学校来てるってさ」
『・・・お兄ちゃんと?!』
奏太は急に頭を抱えた。
「あー、めんどくせぇ・・・」
『え。なんでよ。奏に会いたいよ!』
「お前と俺でいたら絶対ウザイから。アイツ」
・・・妄・・・いや、想像してみた。奏はおそらく、優弥と奏太が2人でいると両思いだとはしゃぎ出すだろう。
『・・・・・・んまぁ確かに』
「おーい!そこのお二人さん!お前ら交代だってよ!自由にデートしてこい」
お化けの格好をした千秋がお化け屋敷から顔を出した。
・・・と、同時に1人の女子高生、いや、女子高生の格好の叶が出てきた
「ねぇちーちゃん?なんで女の子の格好なの?」
「安心しろカナ。女の子にしか見えない」
叶が教室から出てきて数秒にも関わらず、多くの女子がお化け屋敷に入ってくる。
奏太と受付をやってる時にお化け屋敷にやってきた女子まで何人もいる。何回入れば気が済むのか。
客集めに必死の千秋にあきれつつも、優弥は奏太の方を見てみた。
動く様子はない。と、思うと急に立ち上がった。
「奏たちいる。逃げるぞ!」
と、優弥の手を引っ張られた。
『わっ!ちょっ・・・』
優弥は、奏太に握られた手を、強く握りしめた。