#29 めろんぱん、そして・・・
「・・・おい、買ってきたぞ」
どこかの店から奏太が戻ってきた。
奏太の手にあったのはめろんぱんだった。
『えー!何でメロンパンー?!どうせならここの遊園地にしかないものとかさぁぁ!!!』
「お前絶対忘れてるだろ。」
奏太はなにやら呆れた顔でベンチに座る。
『は?何を?』
「賭け」
『かけ・・・?何の・・・』
「は?!・・・お前本当にムカツク奴だな」
『はぁ?!だから何!!!!』
「お前言ったろ。夏休み明け。保健室で。」
夏休み明けの保健室でのことを思い出してみた。
確かあの時は奏太の投げたボールが私に当たって保健室にいた。
そしたら奏太が・・・
「俺のこと好きなの?」
『え・・・』
「さっきからそういってるようにしか聞こえないんだけど」
『・・・・・』
あの日に奏太に私の気持ちがばれた。
そして・・・確か私が・・・
『ぜぜぜ絶対私のこと好きにさせてやる!!!』
「ま、せーぜー頑張れば。」
『もし奏太が私に惚れたらメロンパン!』
「お前そーいうのすきだなー」
奏太が優弥に惚れたらメロンパンって賭けをした。
『って・・・え?メロンパン?』
「鈍っ・・・」
『え?!は?!はい?!え、奏太って・・・私のこと好きになっちゃった感じ?』
優弥の言葉に、奏太は大きくため息をついた。
「けんけんとお前が一緒にいると無性に腹立つ」
さっきから奏太が俯いてケータイを閉じたり開いたりしている。
「あの賭け、俺の負け」
『あ・・・え・・・じゃぁ・・・』
優弥はすでに涙目になっていた。
奏太は優弥の頭をぽんぽんと2回叩いて肩に優弥を引き寄せる。
「ばーか」
この2人、ついに今日、両思い。
・・・ベンチの後ろで千秋たち4人がこっそり見ていたとも知らずに。