#171 スキ。
「いえーい♪」
「歌いまーす♪」
卒業式の後は、いつもの6人でカラオケ。
皆が盛り上がる中、優弥は、1人で歌本を見ている奏太の元へ近寄った。
「・・・これ入れといて」
そう言って奏太は優弥に歌本を渡した。
奏太に言われた曲を入れると、優弥はじっと奏太を見つめた。
「・・・何」
『あっ、いや・・・ほんとに、浮気なんかしちゃ嫌だからね?』
そう呟くと、奏太は小さくため息をついてポケットの中を探り始めた。
「・・・はい」
奏太は手をグーにしたまま優弥の方へ向けた。
優弥が首を傾げると、奏太は手をそっと開いた。
『・・・あ』
そこにあったのは、鍵だった。
おそらく、奏太が一人暮らしする部屋の合鍵だろう
「・・・そんなに心配なら、いつでも来ればいいじゃん」
その鍵を見つめながら、優弥はまた泣いた。
『・・・うんっ・・・』
「何回泣くの」
奏太は制服の袖で優弥の涙を拭った。
『・・・だってぇ』
「・・・ばーか」
少し照れた様子の奏太は、そっと優弥の頬に手を添え、唇を重ねる。
「さっすが静香♪美声だねぇ~」
千秋は歌い終えた静香に拍手をした
「そんなことないよっ!えっと、次カナちゃん?」
静香はおどおどしながら叶にマイクを手渡す。
「うん、ありがと!・・・あ!ほら、奏ちゃんも・・・」
叶が奏太の方を振り向こうとすると、竜に止められた。
「お子様にはまだ早いからあのままラブラブにしておきんしゃい」
「おっ、お子様?!」
ただのキスシーンだが、4人は何も見なかったということにした。
『ねぇ、奏太?』
「・・・ん?」
『ありがとね』
「・・・?」
奏太を大好きになってから、泣きたいこともたくさんあったけど。
それでも幸せだったと思える。
奏太と出会えたことに、側に居てくれたことに感謝してる。
一言なんかでは伝わりきらないかもしれないけど、
『・・・大好きだからね』
「・・・知ってるし」
優弥は、奏太に思い切り抱きついた。