#170 やっぱり寂しい。
「何か用?」
奏太に聞かれ、優弥は一瞬戸惑った。
寂しいと思ったのはいいが、何と言うのかは全く考えてなかった。
『えっと・・・・・・卒業おめでとう!』
「それはお前もだろ」
『ああ!そっか。えっと・・・大学はちょっと遠いんだよね?』
「・・・そんな遠くねぇよ。電車ですぐだし。家は出て行くけど」
『そうなんだ!頑張ってね!!』
優弥は、無理矢理笑顔を作った。
ちゃんと、話せているだろうか不安になる。
『えっと・・・えっと』
必死に次の話題を探していると、奏太はポンポンと優弥の頭を軽く叩いた。
「・・・・・・何かいいたいことあるなら言えよ」
『あ・・・』
涙を堪え、奏太を見上げる。
だが、堪え切れなかった。
涙を隠すように優弥は奏太の胸に飛び込んだ。
『・・・寂しいよぉ・・・』
優弥は、奏太の制服を強く握り締める。
『・・・浮気とかしないよね?』
「・・・そうなんじゃない?」
『奏太モテるからっ・・・浮気なんてし放題じゃんかぁっ・・・』
「・・・し放題・・・」
『そうだよっ!』
「・・・ていうかさ、いい加減離れてくれない?目立つんだけど」
『へ?』
周りを見渡してみると、にやにやとしながら見守る生徒達がたくさんいた。
『あっ・・・ごめん』
生徒達からは、「ちゅーしろー!」と言う声も聞こえてくる。
だが、奏太がそんなことをするわけがなく、優弥の手を引っ張って歩き始めた。